米テレビ、フセイン元大統領を尋問したFBI元捜査官にインタビュー
2008年01月29日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ サッダームの取調官:「サッダームはクウェート首長が『イラク人女性を売春婦にする』と誓ったためクウェートに侵攻した」
■ 「ビン・ラーディンを狂信者だとみなしていた」
■ 「世界を恐れさせるために大量破壊兵器保有を装った」
2008年01月29日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面
【ワシントン:UPI】
故サッダーム・フセイン元イラク大統領が米軍に拘束されている間に尋問した米連邦捜査局(FBI)のジョージ・ピロー捜査官は、「フセイン(元大統領)は、ジョージ・ブッシュ米大統領のイラク侵攻の意志について観測を誤ったことを認めた」と述べた。
またフセイン氏は、世界を恐れさせるために大量破壊兵器を保有していると世界に思い込ませたと述べ、「クウェートに侵攻したのは、今は亡き同国の首長のイラク国民に対する個人的な侮辱のためである」と語ったという。
レバノン出身のピロー氏は、FBIと中央情報局(CIA)分析官から成るチームを率いて、サッダーム・フセイン氏がアメリカ軍に拘束されていた期間中、イラク当局に引き渡される前に同氏の尋問を行った人物である。ピロー氏はCBSニュースネットワークのインタビューで、「フセイン氏を騙して、自分が本当の職務より重要な職務を遂行しておりブッシュ大統領とも直接連絡をとっていると思い込ませようとした」と語った。
また、「サッダームは私に、『私は観測を誤り、ブッシュ大統領の意図を過小評価した』と言った。彼は、合衆国が1998年の『砂漠の狐』作戦で4日間空爆を行ったのと同じようなやり方をもってイラクに反応するだろうと思っていた」と述べた。
さらにピロー氏は、「サッダームはあれと同じような空爆を切り抜けることができるだろうと予想していた。かつて一度切り抜けたということで、その類の攻撃や損害なら受け入れる用意があった。彼はそもそも、合衆国がイラクに侵攻するとは思っていなかった。米軍が実際に侵攻を開始した時、彼は軍司令官らに2週間持ちこたえて、その後は『密かな戦争』に移行するよう要求した」と付け加えた。
ピロー氏は、「サッダームが『密かな戦争』という言葉で何を意味していたかというと、それは伝統的な戦争から非伝統的な戦争、つまり抵抗活動への移行である。サッダームはアメリカに対する武装抵抗運動を開始させたのは自分であると言及されることを望んでいた」と語った。
また、「サッダームに大量破壊兵器をめぐる秘密を明かさせるのに5ヶ月間にわたる連日の尋問を要した。またイラクの元独裁者が私をファースト・ネームで呼び、私も同じく彼をファースト・ネームで呼ぶようになるまで信頼を築くことが必要だった」という。
ピロー氏は、「サッダームは私に『イラクが保有していたほとんどの大量破壊兵器は国連の査察団の手で破壊された。残りの大量破壊兵器はイラク人自らが破壊した』と述べた」と語った。
サッダームがこの秘密を守り通して自らの生命と体制を危険に晒した理由についてピロー氏は、「彼にとって、未だに大量破壊兵器を保有していると思わせることが非常に重要であった。それによって彼は権力を維持し、イランに脅威を与え、イランが再びイラクに侵攻することを阻止したのだから」と述べた。
サッダームはアメリカに対する2度の戦争の前に、8年間に及ぶイラン・イスラーム共和国との破壊的な戦争を行っている。イラン体制は、彼が政権の座に就いていた末期まで恐れ続けた体制である。
ピロー氏は、「サッダームは、イランに対して大量破壊兵器を保有していると思い込ませなければ生き残ることはできないと思っていた」と語った。
またピロー氏は、「重要な証言を引き出すため、何度もサッダームの怒りを誘おうと試みた。そのような瞬間のなかでも最も重要だったのは、1990年のクウェート侵攻について言及した際に、彼の目から怒りの火花が飛び散るのを観た時であった」と述べた。
ピロー氏によると、「サッダームはクウェートが石油を盗み、イラクに対する借款の返済を迫ることでイラクの経済を破壊したと非難していた」という。またピロー氏は初めて、1990年のクウェート侵攻の決定が、個人的に侮辱を受けたという感情に基づくものであったことを知るに到ったという。
ピロー氏によると、「サッダームを心底激怒させたのは、諸問題の解決を試みるためターリク・アズィーズ外相を(故ジャービル・アル=アフマド・アル=サバーフ)クウェート首長に会わせようと派遣したときのことだった。ジャービル首長はアズィーズ外相に対して、『全てのイラク人女性を10ドルと引き替えに売春婦にしなければ妥協はしない』と言った。これでサッダームの堪忍袋の緒が切れて、彼はクウェートに侵攻して首長の発言に対して制裁を加えた」という
その後、アメリカ軍がサッダームをクウェートから追い出し、そのため今は亡きこの独裁者はブッシュ一族を憎むようになったのであった。
ピロー氏は、「サッダームはジョージ・ブッシュ(父)元米大統領を好んではいなかったが、故ロナルド・レーガン元大統領のことは偉大な指導者と信じ、彼に会うことを好んでいた。またビル・クリントン前大統領のことは好きだったが、ブッシュ(父)元大統領とその後のブッシュ(子)大統領は全く好きではなかった」と語った。
CBSテレビによると、「レバノン出身のピロー氏は12歳の頃、家族とともにレバノン内戦の戦火を逃れて合衆国へ渡り、米空軍に入隊した後、カリフォルニア州で警官になった。その後、夜間学校に入学して大学の学位を取得し、FBI所属の資格を取得した」とのことである。
(後略)
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( 翻訳者:平川大地 )
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