イラク情勢、モースルの大司教拉致事件
2008年03月04日付 al-Sabah al-Jadid 紙

■ マーリキー:キリスト教徒に対する攻撃は全イラク国民への攻撃を意味する

2008年03月04日付サバーフ・ジャディード紙(イラク)HP1面

【バグダード:本紙】

火曜(4日)、マーリキー首相は、金曜(2月29日)夕に起きたモースルのカルディア派大司教拉致事件に関する初のコメントで、キリスト教コミュニティに属する人びとへの攻撃はイラク国民全体への攻撃を意味すると述べた。

「イラクの声」通信が得た首相府声明文によれば、インマニュエル3世デッリー枢機卿(カルディア・カトリック教会総大司教、バグダードに拠点を置く)に宛てた書簡でマーリキー首相は、「イラクのキリスト教共同体は、基本的な社会構成要素の一つとしてイラク国民とその文化から分かち難い、故にそこに属する人々への攻撃は全イラク国民への攻撃とみなされる」と述べている。

また、声明によればマーリキーは、「モースルのカルディア派指導者であるブールス・ファラジュ・ラッホ大司教の拉致と、それに伴い随員3名の命が失われた事に深い悲しみを覚えており」、「事件の推移を追いつつ、可及的速やかに大司教を解放すべく全力を挙げるよう、内相とニネヴェ県治安機関の責任者らに要請した」。

金曜夕、モースル東のアンヌール地区で発生した事件では、身元不明の武装集団がファラジュ・ラッホ大司教の随員3名を殺害し、大司教を拉致した。

(中略)

モースルのシリア・カトリック大司教ジルジス・カス・ムーサーは、土曜、カトリックの通信社であるMISNA(Missionary Service News Agency)に対し、「犯人から電話で接触があり、我々はファラジュ・ラッホ大司教解放のための交渉を開始した」と明らかにした。

カルディア派はメソポタミア最古の教会の一つであり、イラクでは最大のカトリックに属すキリスト教コミュニティである。法王ベネディクト16世は、「教会を甚だしく侵害した」として事件を激しく非難した。

1月中、モースルの教会は、一連の爆破事件にさらされ4名が負傷している。その後も意図的な攻撃は続いていた。同市では聖職者の多くが拉致被害に遭っており、2007年6月には市内の教会で司祭1名助祭3名が殺害された。

(米軍主導による)イラク侵攻以前、キリスト教徒人口は80万と数えられ、イスラム教徒全体からすると3%の割合であった。2003年以降、彼らの多くが数々の過激グループの標的とされ、国外もしくはクルド自治区への逃亡を余儀なくされている。

Tweet
シェア


現地の新聞はこちら

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:13293 )