ID写真でヴェールとあご髭を禁止する規定にアルジェリアの地方住民が猛反発
2008年04月23日付 al-Quds al-Arabi 紙

 アルジェリア人、パスポートやIDカードの写真でヴェールとあご髭を禁止する法律に激怒

2008年04月23日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【アルジェリア:マウルード・モルシェディー本紙記者】

パスポートや身分証明書の発行を希望する人に対して、ヒマール〔訳注:女性が髪と首筋を覆うベール〕やあご髭の無い状態での写真をアルジェリア政府が条件付けたことをめぐる議論に、アルジェリア・ムスリム・ウラマー協会が一石を投じた。協会は政府の決定を、一般のアルジェリア人の個人的自由を制限する違法なものだと評したのだ。

協会は首都から西へ300キロの位置にあるレリザーヌ県の町、ジディオウアとレリザーヌの住民の間に巻き起こったこの問題に関してファトワーに似た声明を出し、「イスラーム法は体の両手と顔以外の部分を露出することを女性に禁じており、あご髭もスンナ〔訳注:預言者に倣った慣行〕であって、やむを得ない場合を除いては他者に対し、あご髭を生やすことを禁じることはできない。よって政府の決定は無効である」と述べた。そして「やむを得ない場合とは認められないため、この問題に関する内務省の決定は無効である」とつけ加えた。

アブドゥッラフマーン・シャイバーン会長がこのファトワーを出す必要に迫られたのは、上記の2つの町の住民から行政の決定は合法なのかという質問や説明を求める声が殺到したためであった。

この問題がアルジェリアで話題になったのは、これが初めてのことではない。2ヶ月以上前にも国民議会(下院)のある議員がヤズィード・ゼルフーニー内務大臣に対して口頭質問し、法律の執行停止を要求したことがあった。しかしゼルフーニー内相はその提案を拒否し、「男女とも顔をはっきりと写したパスポートなどのID文書の発行は、世界的風潮が要求していることである。世界中の空港でテロの脅威のために審査がより複雑化しており、国民をトラブルから回避させるため、顔立ちがはっきり写っていないパスポートを発行することはできない」と法律を正当化した。

内務省がこの決定を出したのは90年代半ばのことで、身分証明書やパスポートを取得する者は全てあご髭を剃るか、女性の場合には頭に何もかぶっていない状態の写真を持参することを課したのだった。この決定は一般のアルジェリア人の憤りを広範囲に引き起こした。特に信仰熱心な人たちの怒りは激しく、彼らの一部は行政の要求に従うことを拒否したが、その代わりにあご髭やイスラーム法で規定された通りのヒマール姿で写っている写真を拒否されて、本当に苦境に立たされることになったのである。

そしてこの問題は最近になって再びレリザーヌ県で浮上することになった。身分証明書やパスポート、運転免許証などを取得するために行政機関に出向いた市民たちが、男性の場合はあご髭なしの、女性の場合は頭に何もかぶらないで撮影した写真を持参するようにとの条件を突きつけられて驚いたのである。彼らはアブドゥルアズィーズ・ベルハーデム首相に訴えるしか手がなく、地元当局にこの決定を取り消させるよう首相に要求した。2つの町の住民が首相宛に書いた手紙には、「この措置は、保守的で住民の信心深さで知られるレリザーヌ県の平和と安定に対する脅威である」と綴られていた。さらに市民達はこの決定を拒否する意図を示すために、2地区の住民の署名を集め始めた。「この行政の横暴な措置のために迷惑を被っている。特に今月末が締め切りのハッジ(巡礼)に行くための抽選に応募したいと思っている人たちと、ウムラ(小巡礼)に行きたいと思っている人たちの被害は大きい」と彼らは語っている。

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( 翻訳者:梶田知子 )
( 記事ID:13709 )