殺虫剤の搬入が禁止されているガザ地区で魚を利用した害虫駆除の試み
2008年04月30日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ハーン・ユーニスで燃料不足のため蚊の駆除にボラを利用

2008年04月30日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【ガザ:アシュラフ・アル=ハウル】

海に面し、封鎖に苦しむガザ地区を燃料危機が襲う以前には、害虫対策チームは殺虫剤や油を蚊やその他の害虫の発生源とみなされる場所に散布していた。しかし今日では散布用の車両を動かすための燃料が不足している上に、イスラエルが殺虫剤そのものの搬入を禁じているため、地方当局は魚に同じ役割を期待している。

魚の中には澱んで汚れた池でも生きられる種類がある。ガザ地区南部、ハーン・ユーニスの地方当局はそうした魚を蚊(ボウフラ)を食べさせるために利用している。ファーイズ・アブー・シャマーラ市長が述べたところでは、市の保健環境局が特殊な環境で生きられる選ばれた魚の量を増やす作戦を始めた。それらの魚を排水が集まる貯水池に放ち、ボウフラを駆除しようというのである。ガザ地区のいくつかの農村部では夏になると蚊が大量に発生する。「この措置は蚊の大量発生の結果生じるであろう望ましからぬ環境および健康被害から住民を守るために採られた」と市長は語る。

この手法はこれまでにもいくつかの国々で用いられている。例えばインドでは蚊が産卵する池や川、井戸にボウフラを好む魚を放し、卵が孵ると魚たちが幼虫を食べる。こうして虫が媒介するマラリアの撲滅を目指したのだ。これらの国々もすぐに殺虫剤DDTの使用に切り替えたのだが、最近イスラエルは虫の駆除用にDTTをガザに搬入することを禁じているのだ。

イスラエルは医療用ワクチンや家畜の注射に使用する薬剤に加え、地方当局によれば、虫への散布に使用する化学製品の搬入も妨げている。医師たちによれば、こうした虫に刺された人は様々な病気に感染し、時として治療困難な事もある。パレスチナ保健省はイスラエルによる封鎖によって多くの薬とワクチンの備蓄が尽きていると指摘する。

ガザ地区には排水を集めるために使われるいくつかの大きな貯水池がある。そのうち最大のものはガザ地区北部のベイト・ラヒヤにあり、それに継ぐ大きさのものはガザ地区中部のヌセイラート難民キャンプの入り口近くに、3番目のものがハーン・ユーニス市内にある。特に排水での生活に順応したボラなどの魚をこれらの池に放し、水面に棲息する幼虫や人を刺す蚊を食べさせることで、蚊の多い暑い夏を迎えようとする何十万人ものパレスチナ人の苦痛が取り除かれるかもしれない。

市民の1人は以前、殺虫剤を散布したにもかかわらず、家族共々1日で数十カ所も蚊に刺されるという事態に直面したことがあると言う。彼が冗談交じりに言うには「蚊はたいてい顔を刺すからね。刺されすぎて子どもの顔が判別できなくなるんじゃないかと思うと、夏が来るのが恐ろしいよ」。さらに彼は、「俺たちの国にいる蚊には殺虫剤も電気蚊取機も効かないんだ。魚でやっつけられるかね」と続け、「煙で蚊を追い払おうと、夏になると火を焚かざるをえないこともしばしばあった」と明かした。

いずれにせよ、放置しておくよりは何らかの手を打ったほうがましだろう。しかし危ないのは、子供や経験の浅い一部の者がこの魚を釣って食べてしまうことだ。そんなことをしたら、ひどい中毒をおこすことだろう。

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( 翻訳者:鈴木啓之 )
( 記事ID:13748 )