ガザの燃料危機でパトカーが市民を輸送、食料油をガソリン代わりにする車も
2008年05月02日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 燃料・食用油が枯渇、乗客輸送のためにパトカーが通りへ出動

2008年05月02日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【ガザ:アシュラフ・アル=ハウル本紙記者】

 かつて青い色をしたパトカーに乗るガザ市民は、法律に違反したか、あるいは警察の一員だと相場が決まっていた。ところがイスラエルによる封鎖で自動車燃料の搬入が妨げられた結果、タクシーのほとんどが営業を停止した今では、パトカーが市民を運ぶための乗り物にもなっている。

 ガザを支配している旧ハマース政府が所有するパトカーが、タクシーとしての営業を開始し、ガザ市の通りを行き来して市民を目的地まで運んでいる。ハマースの警察は、移動量の多いガザ市の主要道路での運行ルートまで設定した。燃料危機によってほとんどのタクシーが営業を停止しているため、住民の多くは仕事場へたどり着くために自分の足で歩くか、ロバが牽く荷車に乗るかしての移動をここ2週間以上も余儀なくされていた。この燃料危機は、ガザ地区へ搬入される燃料を70%以下の量にまで削減するとイスラエル当局が決定したことに伴って発生したもので、この決定によってガザ地区の石油各社は需要に応じきれないために納入を断らざるを得なくなったのだ。そのため昨日は、男女を問わず多くの市民が青いパトカーに乗車することになった。

 昨日、警察車両に乗ったという婦人の一人は、親類を訪ねていくために半時間以上も立ってタクシーを待っていたところ、パトカーを見つけて目的地までたどり着けたと語った。彼女はこの措置が良いことだとは認めながらも、「もし車が青以外の色で塗装されていればもっとよいのに。市民は慣れていないから」と述べた。しかしパトカーを運転するハマース警察官の一人は、「何事も始めは慣れが必要だ。住民の大部分は今では我々が乗客を運んでいることを知るようになった」と述べた。

 旧ハマース政府内務省のイーハーブ・アル=グサイン報道官は本紙に対し、彼自身も外回りのパトカーで市民の輸送を助けるよう提案した一人だと話しつつ、「この措置は燃料危機が終わるか、あるいはパトカーの燃料が尽きるまで続けられる」と説明した。ハマース警察は昨日出した声明で、市民の負担を軽減するために警察は多数の車両を乗客の無料輸送に割り当てた、と発表した。

 燃料不足は経済の崩壊に苦しむガザ地区に甚大な損失をもたらしており、タクシー所有者の多くは車のエンジンを家庭用ガソリンや食用油で動さざるを得なくなっている。イスラエルが家庭用ガソリンの搬入を禁じた後は、大多数のタクシーが動けなくなった。営業しているタクシーはわずかで、所有者は闇市場で高額なガソリンを購入している。このほか、食用油に少量の軽油や白灯油を加えて動かしている自動車もある。

 この危機によって交通運賃が上昇しただけでなく、食用油の価格が大きく上昇したために、パレスチナ人の苦悩は増すばかりだ。だが、こうした自動車[※食料油で走る自動車]が住民にもたらした最大の危機は、その排気ガスの臭いである。ポテトフライやファラーフェル[※ヒヨコ豆のコロッケ。中東の庶民料理]の臭いに似たその臭気はガザ地区全域に広がり、市民は否応無くその匂いを嗅がされているのである。

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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:13749 )