ガザ地区では封鎖と貧困のために婚礼も節約
2008年07月18日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ 続く封鎖によりガザの人々の婚礼やパーティーの慣習に変化
■ ガザの結婚式:宴会では子牛の替わりに鶏肉で節約、新郎新婦の車1台だけのパレード、招待客へのお土産もなし
2008年07月18日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面
【ガザ:アシュラフ・アル=ハウル本紙記者】
昨年来続いているイスラエルによる厳しいガザ封鎖と、憎むべき貧困状態によって、結婚シーズンである夏に行われる結婚の伝統に新しい慣習が持ちこまれるようになった。ガザ地区の諸都市や難民キャンプでは新たな慣習が広まり、ほとんどの階層で適用されるスタイルとなっている。
かつては花婿の父が主催する食事会と若者のためのパーティーがお祝いの2本柱であり、この2つを催すことができないと「物足りない婚礼」だと言われたものだ。今頃の時期は子牛や雌牛を屠っての宴会で市街が賑わい、宴会には大人も子供も参加して、元々が裕福であろうと貧乏であろうと、花婿の父の一家は、料理を食べ終え花婿の父にお祝いを述べに向かう「客人たち」を見て、幸福を感じるのだ。
今はといえば、50代の男性アブー・アスアドは長男を数日前に結婚させたのだが、「ご馳走(つまり婚礼の祝宴)を振舞う時代は終わったよ」と言う。彼は経済状況だけでなく驚異的な物価高で肉の値段が高騰しているせいもあって、子牛の替わりに鶏20羽を屠るだけの小規模な宴会を息子のために開いた、と説明してくれた。[イスラエルによる]封鎖の前は子牛の肉は1キロあたり25シェケル(5ドルをわずかに上回る額)ほどで売られていたが、今日では1キロが50シェケル(約15ドル)以上で売られているという。「ご馳走に子牛の肉を出すと、もう一回結婚できるくらいの金がかかるから、そんなことが出来る人はいなくなった」と彼は言い、ガザの住民すべてがそうしており、それを恥だと責める人は誰もいない、と説明した。
同じく封鎖により、「客人たち」は花婿の家族から贈られるお土産やプレゼントを貰うことができなくなった。あるギフトショップの店主は、「店にある商品は9ヶ月以上も前に品切れになった。市場に残っているのは、誰も買おうとしない品だけさ」と言い、そうした品物が『とんでもない』高値で売られていると説明した。
御馳走を出す宴会に限った話ではなく、花嫁・花婿の家族の多くが招待客に直接、式場に向かうよう求めるようにもなっている。花嫁や花婿の実家を訪問するのはごく近しい者たちだけに限ることで、燃料不足のために大変厳しくなったバスやタクシーなどの交通費を節約しようというのだ。そのため主催側は、祝宴の招待状の結びに追記して、花婿行列には参加せず、披露宴に直接向かうよう「客人」に要望している。花婿行列は、花婿の乗った車と、他にせいぜい4台、あとは荷台に幌のないトラックだけに限定され、その後ろに行列を盛り立てる楽隊が配置される。
ある婦人は、披露宴に出席した際に招待客を運ぶバスがないことを知らなかったために、「11番バス」で会場に向かわざるを得なかったと話す。「11番バス」とは自分の両足のことだ。彼女が言うには、送迎が提供されなくなり、出席者は自宅まで運んでくれる交通手段を見つけるため早々に退出しなければならなくなり、祝宴が以前に比べて大変短い時間で終わるようになった。以前は花婿・花嫁の実家から結婚式場まで往復の交通手段が提供されていた。
ここガザ市では、海辺に設けられることの多い結婚式場に「客人たち」が徒歩で列を成して到着する風景を、繰り返し見ることができる。また、自腹で家まで帰るためにグループでタクシーを捕まえようと夜間に右往左往する姿も見うけられる。しかし、ガザ地区の花嫁・花婿の父の一人であるアブー・ムハンマドさんは言う。「『11番バス』で歩き、列に並んで待つ苦労を味わった今となっては、客人を運ぶための大型バスを何台も借り上げようと思うよ。たとえ妻のアクセサリーを売らなきゃならなくなってもね」。
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( 翻訳者:森本詩子 )
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