イランで臓器移植:非業の死を遂げた新婦の心臓、他人の胸の中で脈打つ
2008年08月07日付 Jam-e Jam 紙
【ガズヴィーン:ジャーメ・ジャム記者】もはやこの世にいない愛しい人の心臓が他人の胸の中で鼓動しているというのは、きっと気持ちの良いことだろう。
モルダード月3日〔7月24日〕、結婚式を終えたマルヤムさんが夫とともにクーラーネ街道(ガズヴィーン市の支道の一つ)を横断しようとしていたときのことだった。道が暗かったことに加えて、プジョー車のスピードの出し過ぎが原因で、痛ましい事故が起き、マルヤム・コハンカールさんはこの世を去った。
この事故でマルヤムさんは脳死状態となり、彼女の夫は足に重傷を負った。二人は病院に運ばれたが、医師らは重度の損傷によるマルヤムさんの脳死を確認した。脳死が確認されると、この若い女性の家族は現実を受け入れるのが難しい状況の中で、完全な同意のもと娘の臓器提供書に署名した。マルヤムさんの心臓がそれを必要とする同胞の胸の中で脈打つことで、愛しい人はまだ生きているとの感覚が得られるのではないかと考えてのことだった。
臓器提供後の家族の心の安らぎ
このガズヴィーン市の家族による神意にかなう行いの後、マルヤム・コハンカールさんの母親ハディージェ・ハージ・モハンマディーさんは、ジャーメ・ジャム紙記者とのインタビューで次のように述べた。「モルダード月3日〔7月24日〕の夜、結婚式を終えた娘とその夫がクーラーネ街道を横断しようとしていたときのことでした。スピードを出して走行していたプジョーの運転手は彼女たちが横断しているのに気づかず、車をコントロールできずに彼女たち二人に激しく衝突し、その後事故現場から逃走しました。当然ながら、彼は事件の翌日、良心の呵責に苛まれて自ら名乗り出ました」。
一人娘をこの事故で失ったマルヤムさんの母親は、臓器移植が必要な患者に29歳の娘の臓器を提供することに同意したことについて、次のように述べた。「娘の友人によると、マルヤムはいつも友人同士の集まりで、事故に遭ったら臓器を必要とする人に提供すると言っていたそうです。娘はこのことを家族にも何度か言っておりました。だから娘が脳死になったとき、多くの人々が脳死問題についての知識があまりないために反対しましたが、私とマルヤムの父親、それにマルヤムの夫は〔‥‥〕娘の臓器提供同意書にサインしました。娘の健康な臓器が土の中で腐るよりも、他の人々の命に寄与するならば、との思いからでした」。
〔中略〕
ハージ・モハンマディーさんは、娘の臓器提供後の心境について、次のように語っている。「この問題を受け入れることは、親心としては、はじめ私たちにとって辛いことでした。しかしこの決心をした後の心の安らぎを考えたとき、完全な同意と心の安らぎ、良心をもって、私達は決心しました。目に見える形では、マルヤムの肉体はもはや私たちのもとにはありません。しかし、娘の心臓が他の人の体の中で脈打ち、臓器提供を受けた人の祈りが娘や私たち家族にとって貴重な財産になると、私は信じています」。
マルヤム・コハンカールさんの家族はこのような悲惨な事故が再び起き、犠牲者や遺族を生むようなことがあってはならないと願いつつ、愛しい人の脳死に直面している家族に向けて次のようにアドバイスしている。「どの専門医も、脳死者が脳死後に再び普通の生命活動に復帰する可能性は非常に低く、たとえ生き返ったとしても、様々な障害に苦しめられると言います。そうであるならば、愛しい人の肉体を深い土の下で腐らせるのではなく、臓器を提供することで、愛しい人に魂の安らぎを用意し、臓器提供を待っている人たちに新たな人生を提供するべきではないかと、ご家族の方々には申し上げたいと思います」。
コハンカールさんのご家族のこの美しい行いの後、この家族の親類や知り合いの多くは「死後臓器提供カード」を入手するための登録を済ませたとのことだ。
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( 翻訳者:佐藤成実 )
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