レバノン民主党幹部暗殺、ドルーズ派両指導者は団結を強調
2008年09月12日付 Al-Nahar 紙

■ スレイマーン大統領、国民対話会議へ各勢力を招聘
■ アムル・ムーサー事務局長が月曜日にベイルート訪問、セニョーラ首相は「平和と戦争に関する決定」に焦点
■ レバノン山地[のドルーズ派両勢力]が団結を強調、ビッリー国会議長が和解強化のため同地を訪問
■ 潘基文事務総長:「国際法廷の開始時期についてレバノン側と協議する」

2008年09月12日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

 バイスールでのレバノン民主党幹部サーリフ・ファルハーン・アル=アリーディー氏殺害事件を受けて、内閣筋は「レバノン情勢は集中治療室に入れられた状態であり、国内の平和に向けた動きを脅かすような事態を軽視するわけにはいかない」との見解を示した。

 同筋は本紙に対して、「今回の犯罪には様々な狙いがあったが、それとは逆の反応をもたらし、レバノン山地のドルーズ派地域の2大指導者であるワリード・ジュンブラート議員とタラール・アルスラーン青年スポーツ相の間での事態の鎮静化と、政治的立場の一体性への確固たる意思が示された」と述べた。これについては昨日、両氏の側も言明している。しかし同筋は、「非難がなされないという国内の快適な空気の中で、再び暗殺事件が相次ぐことへの懸念」を示した。

■ 国内対話への招聘

 今回の事件による圧力に屈しない姿勢を顕著に示したのは、ミシェル・スレイマーン大統領が昨日、国民対話会議を来週火曜日[16日]の午前11時にバアブダ宮殿[※大統領府]で開催するための準備に動き出したことである。本紙の得た情報によると、対話会議への招聘を先ず最初に受けたのはナビーフ・ビッリー国会議長とフアード・アル=セニョーラ首相であった。同会議には、ビッリー議長の呼びかけによって2006年に国会議事堂で開かれた対話会議のメンバー14人が参加することになる。

 対話会議への各勢力の招聘にともなって、各方面からの反応が相次いだ。アラブ連盟のアムル・ムーサー事務局長は昨日本紙に対して、月曜日にベイルートに到着してスレイマーン大統領と対話会議の議事進行について協議すると述べ、「これは対話の始まりだ。レバノンの全ての指導者が一堂に会し、全ての政治的問題が提起され、その見定めが行われるというだけでも、非常に健全なことだ」と語った。

 対話会議への参加資格の拡大要請に関する質問に対してムーサー事務局長は、「スレイマーン大統領と協議しに行く」と述べるにとどめた。またバイスールでの爆破事件については、「我々はかかる犯罪を糾弾する。標的にされる人々を犯人から保護する措置が必要だ。犠牲者の遺族に哀悼の意を表する」と語った。

■ ビッリー議長とジュンブラート議員

 ビッリー国会議長は昨日、バイスールの事件の反響について状況把握に努め、「さらなる和解の空気を醸成するため、レバノン山地への訪問はラマダーン月の後にも行う」と述べた。

 また昨日、アマル運動の幹部代表団がクレマンソー地区のジュンブラート議員邸を訪問した。ジュンブラート議員はその際、進歩社会主義党とアマル運動の関係は確固たるものであると強調した。対話会議への参加の拡大について質問されるとジュンブラート氏は、「その必要があるのかどうか分からない」と述べた。バイスールの事件に関しては、「我々とタラール[・アルスラーン]氏は、関係が改善されて以来、また古きに遡ると同時に新たなこの関係が確立されて以来、ともに友好関係と政治的同盟関係を築いてゆくことを決意している。同時に、我々は平静と共存を守ってゆく」と述べた。

■ セニョーラ首相

 セニョーラ首相は、「アル=アラビーヤ」TVが昨夜放映した談話の中でサーリフ・アル=アリーディー氏暗殺について、「トリポリで起きている事への反動であり、レバノン国民が和解し、見解の相違がありながらも相集い、再び対話をしようとしている空気から、この国を再び遠ざけようとする企てである」と述べ、「我々はこの事件を公正評議会に送致し、トリポリおよび北部を手始めに我々が講じている措置を通して、和解の方向性を強化してゆかねばならない」と述べた。

 またセニョーラ氏は、国軍の北部への移動はレバノンの決定によるものであり、「シリア大統領の要請とは全く関係ない」とあらためて強調した。火曜日に開催予定の対話会議については、「抵抗運動が長年にわたって担ってきた積極的な役割は認識している。(...)またレバノン国民には、いわゆる戦争と平和の決定に関与する権利がある。レバノン国民のうちの一つのグループだけが独占してはならないことだ」と述べた。

 サウジアラビアのアブドゥルアズィーズ・ハウジャ大使はバイスールの事件について非難し、安定を揺るがしレバノン人の対話と合意を失敗に終わらせようとする企てだとの見解を示すとともに、「サウジアラビア王国はテロ行為を非難し、レバノンの各指導者に対して、困難な状況に苦しんできたこの国の状況を安定・強化するよう呼びかける。また王国は、兄弟国レバノンとその全国民の味方であるということを明言する」と述べた。

 ハウジャ大使はアルスラーン青年スポーツ相に連絡して哀悼の意を表し、ジュンブラート議員、ガーズィー・アル=アリーディー公共事業・運輸相およびファルハーン・アル=アリーディー氏にも連絡をとった。

■ バイスール

 バイスールでは昨日、各政治勢力や各地域からの弔問客が多数訪れた。アルスラーン青年スポーツ相は外遊からの帰国後ただちに現地に向かい、故人に対する弔辞を述べた。ガーズィー・アル=アリーディー公共事業・運輸相も同席する中でアルスラーン氏は、「[犯人の]メッセージは届いた。サーリフ氏ではなく、私がこの爆発で狙われていればよかった」と述べ、今日埋葬される予定の故人に向かって、「我々と貴兄が5月7日、ワリード・ジュンブラート氏とともに始めたレバノン山地の団結は、これからも続ける。レバノン山地では、平手打ち一つでさえ起こることは認めない」と語りかけた。

 本紙が捜査当局筋から得た情報によると、暗殺に使用された爆発物はTNT火薬約700グラムで、車体外部の運転席の下に取り付けられ、おそらく近距離から無線装置によって爆破されたものだという。

 アリーディー氏の運転手は捜査官らに対して、被害者の暗殺前2日間の行動について陳述した。最後にとった行動は、ベイルート空港行き道路の途中にある「サーハ・レストラン」である政党が催した断食明けの食事会への招待を受けたことだったという。

 情報によると、暗殺に使用された爆発物は、ジョルジュ・ハーウィー元共産党書記長とサミール・カスィール本紙論説委員の暗殺や、TVキャスターのマイ・シドヤーク氏暗殺未遂に用いられたものと類似しているという。

(後略)

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( 翻訳者:森晋太郎 )
( 記事ID:14689 )