アフガン大統領がターリバーンとの和解を模索、サウジが仲介
2008年10月04日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 英紙報道:「サウジアラビアがターリバーンの脅威を終わらせることができる」
■ カルザイ大統領がオマル師にアフガニスタンへの帰還を呼びかけ、アメリカはアル=カーイダ、パキスタン・ターリバーンへの攻撃を拡大

2008年10月04日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【ロンドン、イスラマバード:本紙】

 アフガニスタンのハミード・カルザイ大統領は金曜日、アフガニスタンのターリバーンの元指導者オマル師に対してアフガニスタンへ帰還するよう提言し、大統領として同師の身の安全を保障すると述べた。

 パキスタンのネット局Geo TVによれば、同局の独占インタビューにおいてカルザイ大統領は、「Geo TVを通じてオマル師に、アフガニスタンへの帰還を勧める。彼の身の安全については私自身が責任を持つ。また全世界に対しても、彼に代わって私が責任を持つ」と述べた。

 カルザイ大統領は、オマル師がアフガニスタンに帰還すれば国の利益と繁栄と安寧に寄与するとの認識を示し、オマル師に対しては、アフガニスタンの政治プロセスに参加し、次期アフガニスタン大統領選挙に立候補するよう呼びかけた。

 一方、アメリカ軍はターリバーンに対する作戦を拡大し、標的とするアル=カーイダに打撃を与えるためパキスタン領内へ特殊部隊を送り込み始めた。アメリカは、パキスタンがターリバーンやアル=カーイダの危険に対抗するための必要な行動を行っていないとして公式にも非公式にも非難しており、パキスタン内務省の諜報機関ISIにターリバーンのシンパがいると語っている。

 関係者によれば、金曜日にパキスタンの部族地域でアメリカのものと思われるミサイルが着弾した際、アル=カーイダとの関係が疑われる者が少なくとも20人死亡し、その大半が外国人であったという。

 匿名希望のパキスタン治安機関関係者は、「我々の情報では、北ワジーリスターン州ムハンマドケール村にミサイルが着弾したことにより、過激派と思しきおよそ20人が死亡し、死者の大半は外国人である」と述べた。

 地元の関係者は、ミサイルにより外国人16人を含む21人が死亡したと説明し、死亡した外国人のほとんどはアラブ人であると明言した。

 パキスタン当局はアル=カーイダと関係している人々を指して、「外国人の」あるいは「アラブ人の」戦闘員という表現を用いている。最近パキスタンの部族地域は、数回にわたってアメリカ軍によるとされる空爆を受けた。アメリカ政府は、この地域がアル=カーイダ組織やターリバーン運動と関係を持つ過激派の隠れ家になっている、と述べている。

 パキスタン領内におけるアメリカ軍の空爆は、アメリカ政府の対「テロ」世界戦争において2001年以来の同盟国であるパキスタンとの間に激しい緊張を引き起こした。

 パキスタンのアースィフ・アリー・ザルダーリー大統領は、自国の主権に対する侵害を今後は一切許さないと公言した。

 国境地域を飛行していたアメリカのヘリコプター2機に対してパキスタン軍が先週発砲し、この衝突では負傷者は出ずに済んだが、その後パキスタン軍とアメリカ軍はアフガニスタン・パキスタン国境で銃撃を交えてきた。

 ターリバーンに対する攻撃が激化するとともに、ターリバーンは各拠点の塹壕深くに立てこもりながら、大胆な自爆攻撃を実行している。最も最近の攻撃が、イスラマバードのマリオット・ホテルでの大規模な爆破であった。パキスタンのザルダーリー大統領は、自分が標的であったと述べている。この事件により、パキスタンが分裂の危機の淵に立っているとの懸念が高まることになった。

 アフガニスタンのターリバーンの脅威は大きくなっている。報告によれば、ターリバーンの戦闘員は首都カブールから数kmしか離れていないところまで迫っており、彼らの影響力はアフガニスタンのほぼ全地域へと広がっている。アフガニスタン駐留NATO軍のディヴィッド・マキャナン司令官は、NATO軍が予想以上の抵抗に遭っているとして、更なる部隊増強を要請した。マキャナン司令官は、NATO軍が激しい反撃に遭い、暴力のレベルは昨年以上であると述べている。

 マキャナン司令官の発言は、ターリバーン問題対策とされる一連の動きの中でなされたものである。汚職が横行し無能だとの非難に晒されてきたカルザイ政権は、ターリバーンによって脅かされ始めている。また一方では、ターリバーンとアル=カーイダを切り離すためにサウジアラビアがカルザイ政権とターリバーンの仲介を行っていることが明らかにされた。

 英『デイリー・テレグラフ』紙は、サウジアラビアにはこの問題を解決することができると分析している。カルザイ大統領は、ターリバーンとの接触があることや、サウジアラビア政府にこの件で仲介努力を行うよう要請したことを認めている。

 同紙はアフガニスタン危機の解決がサウジアラビアによって始まると見ており、ターリバーン問題の解決に介入して積極的役割を果たしてもらうべくイギリス政府からトゥルキー・アル=ファイサル王子に要請するよう呼びかけた。トゥルキー王子は元サウジアラビア情報局長であり、短期間ながらロンドン駐在大使を務め、アル=カーイダの指導者ウサーマ・ビン・ラーディンをよく知る人物である。

 某外交筋は、トゥルキー王子が二国間の安全保障関係を協議するために今月ロンドンを公式訪問する際、ターリバーンとアフガニスタンの問題が作業日程の筆頭に位置付けられることになるとの観測を示した。

 しかし同外交筋は本紙に対し、サウジアラビアがターリバーンに影響を与えることができるかは疑問であると述べ、オマル師にはアル=カーイダとの同盟を終わらせることは受け入れられないであろう、と指摘した。

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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:14961 )