イラク:モースルからのキリスト教徒避難民の現状
2008年10月25日付 al-Sabah al-Jadid 紙
■ 暴力と生活苦に苛まれるモースルからのキリスト教徒避難民
2008年10月25日付サバーフ・ジャディード紙(イラク)HPレポート・インタビュー面
【カラ・カウシュ(ニネヴェ):イラクの声通信】
モースル市でキリスト教徒に対する脅迫行為が増加した結果、数十の家族が住居を捨て、困難な生活環境のカラ・カウシュ地区の親戚を頼らざるをえなくなっている。住まいを出るにあたって、ほとんどの人々が最低限の身の回り品のみを携行する事しかできない。
70近い高齢の婦人、ウンム・アムジドは、「イラクの声」に対し次のように述べた。
「大急ぎで家を出てきました。モースルのキリスト教徒殺害というニュースが私達を恐怖に陥れていたのです。誰がこんなことをするのか全く分かりませんでした」
「衣類を入れた小さな鞄だけを持ってカラ・カウシュに来ました。他の日用品を運んでくることは出来ませんでした」
彼女の近くにはウンム・ファーディーがおり、40才で公共機関に勤めていたが、この地区へ家族と共に移って以来仕事を続けられなくなったという。
ウンム・ファーディは「イラクの声」に以下を述べた。
「標的にされるという恐怖から私達はモースルを逃れてきました。今ではモースル出身の二家族にやっかいになっています。2年前からここへ移り住んでいる兄弟がいます」
約3週間前マーリキー首相は、キリスト教徒問題に歯止めをかけるべくニネヴェ県に政府スポークスパーソンと6閣僚を派遣し、また、同県の避難家族が帰還するにあたり便宜を図る権限を避難民問題相に与えると決定した。
その際、アブドゥルカーディル・アル=ウバイディ防衛相は、1894年に起きたモースル市のキリスト教一族避難の背景を参考に、調査委員会を設け今回の脅迫行為の手がかりをつかむと公言した。
カラ・カウシュで人道支援等を行うキリスト教徒委員会の責任者、バッシャール・ジルジースは、「イラクの声」に対し、ニネヴェ平野の市町村を中心に活動する同委員会が、主要都市からの避難家族への支援を行っていると述べた。
同委員会メンバー、アブー・リーファーンは次のように言う。
「現在私達は多くの家族を受入れており、各団体や市民の寄付により、その人々への経済、食糧援助を行っています」
「カラ・カウシュへの避難が始まった当初から私達は、状況改善のためのオペレーション・ルームを設置し、避難家族が地域の家庭へ無償で住まえるようにしてきました」
避難家族の数については、カラ・カウシュ義援委員会の委員長サーリム・ヤウヌーが、「モースル市(バグダード北方405キロ、ニネヴェ県中心)からの避難家族に援助金を分配するためのリストによって計算した総数は、727家族に登る」と述べている。
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( 翻訳者:十倉桐子 )
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