世界アッシリア人協会本部、アメリカからイランへ
2008年10月15日付 Jam-e Jam 紙


【ジャーメ・ジャムオンライン】世界アッシリア人協会本部が本日水曜日、式典を行い、アメリカ・シカゴにある本部をテヘランに移すことを発表した。

 同本部移転は、9月4日から7日〔イラン暦1387年シャフリールヴァル月14日-17日〕にスウェーデンで開かれた世界アッシリア人協会の会合にて決定された。

 ミシェル・アウン元レバノン[臨時]大統領やイランの国会議員ら、および、多数のアッシリア人が出席したこの協会本部の開会式がテヘランで開催され、イラン国会の[マイノリティ枠の]アッシリア人議員である【注1】ヨナタン・ベトコルヤー氏が世界アッシリア人協会の第十期事務局長として選出された。

 ベトコルヤー氏は事務局長選出のための公開選挙のあとで、人類史におけるアッシリア人の宗教マイノリティーの栄光と苦難に言及して、次のように述べた。
「イランのアッシリア人に確保されている安全が、協会本部のアメリカからイランへの移転を決定する要因となった。なぜなら、マイノリティーであるアッシリア人が尊重されているのは、イランの体制においてのみだからである。」

 同事務局長はさらにこう述べた。
「アッシリア人の文学や文化が残されていること、アッシリア人学校で母語教育が行われていること、アッシリア四教会で聖餐式などの宗教儀式が妨げられることなく厳かに執り行われていること、歴史的アッシリア教会が保護されていること、そして、これらの教会がイラン政府によって国民的遺産と世界遺産に登録されていること【注2】、そして、その他の多くの点がアッシリア人にとって安心して暮らせる環境を作り出す要因となっている。」

 また、同局長は、イランへの協会本部移転に加えて、協会のアジア支部もまたテヘランにあることを指摘した。

 同事務局長の言によれば、現在イランのアッシリア人コミュニティの人口は2万人であり、[憲法の規定に従い]イラン国会に議席をひとつ確保している。 ベトコルヤー氏は、「アッシリア人はこの人口で議会に一名の代表を送ることができるが、国民の大多数を構成するイランのイスラーム教徒の人々は30万人あたりに一名の代表しか議会に送ることができない状況にある」と発言し、このことはイランが宗教的マイノリティーを尊重している重要な証しであると指摘した。

 また、ベトコルヤー事務局長は、以下のように話した。
「世界のアッシリア人の人口はおよそ350万人から400万人で、四十の国々に暮らしている。アッシリア人は人種的にはセム族の一民族と見なされ、のちにキリスト教を信仰するようになった。そのためアッシリア人の信仰するキリスト教は、他のキリスト教の宗派とは異なるのである。」


渡り鳥のごとく

 ミシェル・アウン元レバノン大統領は、次のように語った。「イランのアッシリア人のみなさんを目の前にして、私の子供時代の記憶が蘇ってきた。私が十三才の時にアッシリア人は渡り鳥のようにレバノンに流れつき、一部は私たちの国に住みついた。当時、私はベイルート周辺で彼らのキャンプを目にした。また、これと同時期にパレスチナからの難民もレバノンに逃れてきた。」

ミシェル・アウン氏はアッシリア人が常に直面してきた多くの苦難に言及して、以下のように述べた。
「我々はみな倫理や知識、叡智を求めているにもかかわらず、こうした迫害が様々なコミュニティーに対して日々繰り返されている。そしてイラクで起きたこともまた、ただ力にまかせに事を成そうとする論理に基づいて行われたことなのだ。このような状況で、我々は何をなすべきなのだろうか?」

 ミシェル・アウン氏は、さらに、以下のように発言した。
「私はイランを、団結と自由主義を広めるための拠点であり、世界の虐げられている人々すべての自由を実現するために歩み、自由の旗を世界中で高々と掲げようとする国であると考える。」

(後略)

【注1】イラン・イスラーム共和国憲法第64条に基づき、イラン国会では、イスラーム教徒以外の各宗教マイノリティーから選出される議員5名の枠を予め設けている。アッシリア人からも議員一名が選出される。なお、イランの「アッシリア人(Assyrians and Caldeans)」とは、宗教的に、主として古代東方教会(ネストリウス派)およびカルディア=カトリック教会等に属する人々を指す。
【注2】「アッシリア教会の世界遺産への登録」の正確な意図は不明。なお、2008年にはイラン北西部のアルメニア正教の教会などが新たに世界遺産に登録された。

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( 翻訳者:古賀夏樹 )
( 記事ID:15046 )