コラム:米政権とイスラエルの関係
2008年11月05日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ブッシュのために神の慈悲を乞うオルメルト
■クドゥスの見方
2008年11月05日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面
米大統領選の前夜、退任したイスラエル首相オルメルトは、ジョージ・W・ブッシュを賞賛し、「その名が久しくイスラエルの心に金字で刻みつけられるだろう」と述べたが、この言葉は米大統領と彼の政党の侮蔑すべき状況を要約している。まるで、現在米国が直面しているあらゆる危機の源泉にスポットライトを当てるかのように。
疑いようもなくブッシュ大統領は、ヘブライ国家と最も親しかった米大統領であり、これまでのどの大統領も提供しなかったほどの戦略的便宜をかの国に提供した。オルメルトは「イッディオット・アハロノート」紙に対し、その多大なるサービスのほんの一端が、過去10年間イスラエル政府が追加支援として防衛費の項目で受取っていた300億ドルであったと述べたが、それは正しい。
ブッシュ大統領は6ヶ月と間をおかず占領エルサレムを2回も訪問し、イスラエル国会で、イスラエル人の勇気と彼らが過去60年間に実現した驚異の成果を褒め称えた。そして彼らを守り味方につくことを約し、純粋なユダヤ国家としてのその国を認めた。
ブッシュ大統領は、全世界に対し独立パレスチナ国家の樹立を2度誓約した。一回目が最初の任期が終わる前、2005年であり、二度目が彼の二回目の任期が終わる前、つまりこの年明けに。しかし、政権内部の要所要所に根を張るイスラエル人とその支援者達を怒らせないようにと、彼はこれらの誓約を恥ずべき形で撤回した。
ブッシュ大統領がイスラエルに提供した最大のサービスは、イラクに対する大戦争とその政権の転覆、そしてその国を占領下に置いたことだろう。確固たる立場を形成していたイラク前政権は、軍事的野心をもち、戦略バランスの達成、強い軍事産業の育成、パレスチナ抵抗運動との同盟などを目指しており、ヘブライ国家にとっては大きな脅威であった。
ポール・ウォルフォヴィッツ、リチャード・パールらに代表されるブッシュ政権とペンタゴン内ネオコンのイスラエル支持派は、イスラエルのためにイラク侵略、占領が実現するよう全力で扇動し、チェイニー、ラムズフィールド、ボルトンという有力な足がかりを得た。
ブッシュ大統領の無制限のイスラエル支持により、アメリカはイラクとアフガニスタンで一連の軍事的敗北を味わう事となり、アメリカと全世界を脅かすテロの輪は広がり、合衆国の資材も国民の財力も尽き果てた。
二人の大統領候補は共にイスラエル支持を明確にし、アメリカにおけるイスラエル・ロビーの先鋒「AIPAC(アメリカ・イスラエル広報委員会)」の年次大会で競って支援提供の約束をした。しかし、この地域を支配する巨大で根本的な変化、イスラエルの戦略的価値の衰えを理解せず、最近の失敗から学ぼうとしなければ、勝者はブッシュ政権と同じ命運を辿るだろう。
そして、イスラエルの人々は、彼らにとって最も信頼しえる友とみなされたブッシュ大統領とその政権が去るのを残念には思わないだろう。米アラブ双方の譲歩の果てに彼らが得たものを裏書する和平合意に至るためには、ブッシュ政権とそのアラブに対する攻撃は、少しも役に立たなかったからである。
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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:15062 )