エジプトの軍事演習はイスラエルを敵国に想定しているとイスラエル軍高官が抗議
2008年10月29日付 al-Quds al-Arabi 紙

■エジプトの軍事演習でエジプト・イスラエル関係が緊張

2008年10月29日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【ナザレ:本紙ズヘイル・アンドラウス】

 エジプト軍が最近行った軍事演習を受けて、イスラエルとエジプトの関係が緊張している。テルアビブの複数の政府筋によると、イスラエルは激しい口調の抗議をカイロの政策決定者に提出し、エジプトはイスラエルが敵国であるかのような対応をしていると主張したという。

 昨日火曜日のマアリブ紙はトップの見出しで、イスラエル国防省の政策・保安局長で、拉致されたギラード・シャリット兵士解放問題担当チームのリーダーも務めるアモス・ギラード予備役大将が、エジプト軍の演習を巡ってエジプトに激しい口調の公式書簡を最近送付したと報じた。同筋によれば、「イスラエル政府はこの演習を同国に敵対的なものであると見ている」と指摘していた。アモス大将によって提出されたイスラエルの抗議は、エジプトのフセイン・タンターウィー国防相と、オマル・スレイマーン情報長官に宛てられていたという。この両者と会合した際にアモス予備役大将は、「イスラエルからの脅威に対抗するために軍を訓練するという目的でエジプト軍が演習を行ったことを大変憂慮している」「イスラエルはエジプト国民がイスラエルを敵国と見なしていることについて、深刻に憂慮している。このことはエジプトの国防責任者にも影響を与え、エジプトの軍備増強に大いに関心を持たせることにつながる」と述べたという。

 同じ情報筋によると、アモス予備役大将は「エジプト軍とイスラエル軍の間に平和の文化というものが欠けており、その帰結は双方にとって甚大極まりないものとなるだろう」と述べ、その抗議はイスラエルとエジプト両軍の関係にも及んだ。アモス大将は両軍の間に交流が存在せず、2国間の合同会合や相互訪問、双方の将校間による会合が存在しないことに対する激しい怒りを表明した。さらにイスラエルの治安担当者が次々とカイロを公式かつ公開で訪問しているにもかかわらず、エジプトのスレイマーン情報長官がイスラエルへの訪問を中止している点も指摘したという。

 加えてアモス大将はエジプト国防相にテルアビブ訪問を呼びかけ、イスラエルのエフード・バラク国防相の公式の客人として扱う旨を伝えた。会談でタンターウィー国防相は、「イスラエルとエジプト両軍の関係は、中東地域におけるイスラエルとアラブ諸国間の和平プロセスの前進とともに改善されるだろう」と述べた。そしてエジプトが軍備を増強しているとのイスラエルの訴えに関しては、「エジプトが直面している国防上の挑戦は、強固な軍の建設のための武装継続を必要とするものである」と述べた。

 イスラエルの情報筋が明らかにしたところでは、アモス予備役大将のエジプト訪問はこの面に関してはマイナスだったが、その他の点については大変に有益なものだった。拉致されているイスラエル兵士の問題についてスレイマーン情報長官は、「ハマースがエジプトが出した条件を拒否した場合には、エジプト政府はハマースを孤立させ、アラブ諸国からの圧力をさらに強める」と述べて、「アラブ連盟を通じてハマースに制裁を課すことも含め、エジプト政府はハマースを反乱組織であると宣言する方向に動く」と明言した。

 しかしイスラエル内政の観測筋が述べるところでは、イスラエル治安機関は何年も前からエジプトがこうした訓練を行っていることを関知していたが、これまでイスラエルは抗議を控えてきた。しかし限界点に達したことにより、エジプトのこの動きに正式な抗議を提出する決断を下したのだという。

 加えて同筋は「この時期にこのニュースがリークされたのは、イスラエル治安機関の意図によるもので、今年12月の末にイスラエル国会(クネセット)に提出される2009年度予算案で軍の予算を増加するよう、イスラエル財務省を説得するための試みだ」と断言した。

 また拉致されたイスラエル軍兵士の問題について同筋は「イスラエルは捕われているシャリットを解放するためにエジプトが行った努力は失敗したと納得し始めており、ヨーロッパの中立的な仲介役を必要としていることは、先週末にイスラエル民放テレビの第2チャンネルが報じたとおりだ」と述べた。しかし同筋はこの動きと、駐テルアビブの元エジプト大使が大使館勤務時代にエジプト諜報機関のために働いていたとの声明を出したこととは全く関係がないと否定した。この件は後にムハンマド・アル=バスィユーニー元大使自身によって否定されている。

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( 翻訳者:鈴木啓之 )
( 記事ID:15063 )