南米のレバノン人移民家族を描く大長編ドラマの制作企画
2008年10月23日付 Al-Nahar 紙
■ 全120回の連続ドラマ、数ヶ国語に吹替え
■ 『逃亡』レバノン・メキシコ共同制作、レバノン人家族の現実描く
■ 移民の問題とルーツへの郷愁をテーマに取り上げる
2008年10月23日付アル=ナハール紙(レバノン)HP市民・社会面
レバノンの各テレビ局では、アラビア語に吹き替えたメキシコ製連続テレビドラマが私たちにはお馴染みである。その後、トルコの連続テレビドラマが定番となり、ムハンナドとヌール[※トルコ製人気ドラマ『ヌール』のヒーローとヒロイン]が家庭の団欒の場に登場した。
連続ドラマ『逃亡』は、MIPCOM(国際テレビ番組見本市)のアラブ世界代表であるレバノン人バースィル・ハッジャール氏が社長を務める「アラブ首長国映画配給会社」による野心的な企画である。私たちに何の関わりもない外国の現実を題材にとり、そればかりか私たちの中に別の世界を持ち込み、私たちの思考や習慣、伝統の一部を損なうような吹き替えドラマの枠を脱することを目指している。
連続テレビドラマ『逃亡』は、レバノンとラテン・アメリカの合同制作企画である。その撮影は2009年にレバノン、ベネズエラ、パリ、メキシコで行われる予定。「アラブ首長国映画配給会社」のバースィル・ハッジャール社長は本紙に対し、「私たちの誰もが、この120回におよぶ連続ドラマの中に、自分自身を見つけ出すだろう」と述べた。このドラマは、移民先すべての国々にいるレバノン人に届くように、数か国語に翻訳される予定である。
これはテレビドラマ制作業界における画期的な出来事である。というのも、レバノンの作品が世界レベルに進出し、そこにレバノンの俳優たちが参加する予定だからである。その一人がカルメン・レッボスである。彼女は最近ハッジャールと共にフランスのカンヌ市で開催されたMIPCOMに参加し、そこで企画の発表が行われた。
ハッジャール氏は、「この話は、あるレバノン人移民家族の物語であり、その家族が一人娘の恋物語に対してどう振る舞うかを描いている。娘は過去や過去の伝統と苦闘するが、人生の皮肉は過去を再び甦らせる。彼女がそこからどんなに逃れようとしても、彼女の現在はあなたに衝撃を与えるだろう」と語った。
吹き替えに採用される外国語に加えて、レバノンで撮影される場面の台詞にはアラビア語も使われる。また、移民たちが何処に移り住もうとも共に携えて行った、レバノン伝統の音楽や歌謡が用いられる。
ハッジャール氏によると、制作会社数社が企画に参加する意思を表明したという。経営者たちは、特にラテン・アメリカにおけるレバノン移民社会の規模や、レバノン移民の購買力と宣伝力をよく承知しているのだ。またハッジャール氏は現在、提示された条件を自社で検討中であり、最終的な決定がなされれば、2009年初めにはベイルートおよびドバイ(本社の所在地)で、世界各地の共同制作者と共に記者会見を開き、制作開始が正式に発表されることになると述べている。
ドラマのストーリーはロラン・シャアニーンが大まかな輪郭を描いたもので、レバノン出身のある一家族の物語である。ベネズエラの首都近郊の農場地帯で最も裕福な家族の一つで、地域社会に馴染んではいるものの、自らのルーツとレバノンの伝統に今なお愛着を抱き、自分たちの出身地との関わりが断たれぬように娘をレバノン人の若者に嫁がせたいと願っている。
年長者の世代にとっては今なお根強くそこに在る過去と、年少者たちが生きる現実とのせめぎ合いと、郷愁の物語である。若者たちの肉親は現実への屈服を拒み、新しい社会においても意のままに生きることは叶わず、おそらくは帰還を望みながら死んでゆく。それは、移り住み、故郷を追われ、多くの苦難を味わった民の物語である。あるレバノン人家族の物語であり、またおそらくは、全てのレバノン人家族の物語なのである。
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( 翻訳者:南・西アジア地域言語論(アラビア語メディア翻訳) )
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