コラム:イスラエルによるガザ攻撃の帰結
2008年12月31日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ イスラエルは失敗を認める
2008年12月31日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面
【アブドゥルバーリー・アトワーン(本紙編集長)】
イスラエル政府がEU諸国と24時間ばかりの停戦を協議し、仮に受入れたとすれば、それはつまり、イスラエルには現在のガザ攻撃の目的を果たす能力がなかったという事だ。バラク国防相もリブニ外相も言うように、その目的の最たるものは抵抗勢力を撲滅しガザ情勢を決定的に変えることであった。(2006年の)レバノンに対する7月戦争と同様に。
EUは、パレスチナを救済しようとしたのではない。長期的にも短期的にも、この攻撃が壊滅的結果をもたらすと分かったので、EU首脳たちは、まず自分達を、自国の安全と利益を、次いでイスラエルをイスラエル自身から救済しようとしている。イラクとアフガニスタンでの負けつつある戦争、経済の完全な低迷、暴力とテロの波が襲ってくる予兆に欧米世界が直面しているこのご時世だ。
市民犠牲者は膨大な数にのぼり、殺された子供たちの写真が世界中の新聞の一面とテレビ画面により配信される野蛮な空爆の四日間を過ぎて、この不均衡な対立の敗者は、イスラエルとそちらに組したアラブ首脳らだという事は目にも明らかになった。アラブ諸国政府は、ガザのハマースと手を切り、このところ急いでいるイスラエルとの関係正常化を妨げるものを取り除きたいという望みを託し、この攻撃を後押しした。
しかしイスラエルの空爆は抵抗勢力をひるませず、彼らを降伏させ得なかった。それどころか抵抗側は力を増し断固としてロケット弾を発射し続けた。それらは、ベエルシェバやエスドゥードに達しイスラエル側に死傷者が出るに至り、抵抗勢力の脅威が増したことを裏付けた。
イスラエルの政治指導層は二者択一の前に居ることに気づいた。攻撃目標がパレスチナ人の遺体の山しかなくなるまで空爆を続けるか、地上作戦に移行するかである。ガザ国境にはイスラエルの戦車が集結し侵攻作戦の開始を待っている。
しかし、イスラエル将校らは地上戦突入を望んではいない。それは長期のゲリラ戦を意味するからである。多くの人的犠牲を覚悟しなくてはならない。そして2年前の南レバノンに続いての敗北を。その敗北は、イスラエル軍組織に残された意義と尊厳を打ち砕くだろう。
昨日(30日)朝、バラクは言っていた。「ここまでがこの戦争の第一段階で、次に数段階ある。ハマースとその他の抵抗勢力を潰し根こそぎにするまでこの戦争は続くだろう」
その2時間後、イスラエル政府報道官たちは、停戦交渉の検討に入ったと言い出した。その数分後、長い沈黙を破ってホワイトハウス報道官が停戦の必要性を述べ始めた。
欧州、米国、アラブのどの方面も「テロ」組織とみなされるハマースと連絡をとろうとはしない。彼らは停戦交渉のための仲介者を求めているところだ。これは、土地にしがみつき抵抗する人々故に、政治バランスが変えられたという事を示しているのではないだろうか。
休戦とは、ラファハ通行所を含めた国境を再開し人道支援物資を入れること、抑圧的な封鎖を解除し、死者を葬り負傷者の手当てをする事を意味する。一息ついて、よリ良い条件で新たな停戦協定交渉に臨むために。「仲介者」により共謀の果てにパレスチナ側を欺きイスラエルに有利な諸条件を整えさせるという意味ではない。
過去四日間をざっと振り返ると、要約して以下の点が見て取れる。
1:ハマース政府とその他の抵抗勢力がガザで生き残っている。これは、抵抗に終止符を打とうとしたイスラエルとアラブ謀議の敗北である。
2:あらゆる観点からラーマッラー(PA)政権が最大の敗者である。彼らは攻撃に連座し、ガザの同胞との連帯を示すデモを禁じ、西岸住民に対して専制君主のような振る舞いをした。いずれにせよラーマッラー政府はアラブ的にも国際的にも辺縁として扱われている。戦時であれ休戦中であれ実際には役割を持たない彼らとコンタクトを取ろうという方面はない。
3:エジプト政府が史上最大のプレッシャーを受けている。一つにはガザの人々に同情し、大いなる怒りをもってデモを行った気高い人々、つまり自国民の側から。もう一つは、エジプトが公的にイスラエル攻撃に関ったと噂するアラブの人々により。彼らは各国でエジプト大使館前の抗議に出向いた。
4:ガザ情勢検討の緊急サミット開催をためらう事により、「穏健派」アラブ諸国は残された最後の信頼を失った。イスラエルが南レバノンを襲った時と同様、その間にも抵抗勢力「潰し」というイスラエル軍の任務は着々と果たされていくというのに。
停戦のための仲介努力が成功するにせよ躓くにせよ、過去四日間でアラブ地域が変わり、かつてない「覚醒」が起きたと言える。人々が自分達の看守に抵抗し、彼らの敗北主義的プラン、速やかにイスラエルを同盟国にし、新たな敵イランとの対決において、警察もしくは救いの騎士的な役割を任せようという計画に逆らって声を上げたことである。
昨日ムバーラク大統領は、政府軍とEU監視団が来るまではラファハ通行所の再開を許可しないと告知しつつ、過去四日間そして今後のガザ情勢から利益を得ることはないと断言した。
大統領のこの発言は、彼が引続き謀議に加わり、エジプト国民を裏切りエジプトの役割を矮小化していることを示す。大統領の政策がこのような状態に留まるならば、それは末期のサダト政権の頑迷さを思い起こさせる。
中東地域におけるゲームのルールは確かに変わった。しかしそれはイスラエルにも欧米にも利益とはならない。欧米は偽善的にイスラエルによる攻撃に共謀している。その中では攻撃者と犠牲者がごっちゃにされ、イスラエルの野蛮な言い分のみが採用される。ガザの病院でナチス・イスラエルの犠牲となった子供達の映像に対しては目も耳も塞ぐのだ。
イスラエルによるこの殺戮は、抵抗勢力の価値を高め、欺瞞的和平工作を終わらせた。そして、イスラエルのミサイルで手足をもがれた父や兄弟の復讐に燃える殉教者たちの新たな世代を台頭させるだろう。
攻撃反対の力強いデモンストレーションの中で、公式アラブ政権に挑戦的なスローガンを叫んだこのアラブ・イスラームの人々が、起こりつつある変化に参与し米イスラエルが押し付けたバランスを転覆させることになるだろう。
この記事の原文はこちら
( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:15455 )