コラム:ガザ攻撃とアラブ諸国の立場
2009年01月02日付 al-Quds al-Arabi 紙
■パレスチナ抵抗勢力とイランの目論見
■クドゥスの見方
2009年01月02日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面
ガザでイスラーム抵抗勢力がイスラエルの攻撃にさらされている現在、「アラブ穏健派枢軸」諸国でのテレビ新聞報道を追っていると、アラブ・イスラームの人々にとっての第一の敵はイスラエルではないという手堅い印象を得る。
ニュースやテレビ番組は、イスラエルによる占領、この60年間彼らが犯してきた殺戮行為についてはまともに取り上げることもせず、常に「カッサーム・ロケット弾」が諸悪の根源であり、イスラエルの攻撃を招いたものとして伝える。
イスラエルの殺戮は、抵抗勢力が、ナショナリズム、民族主義、あるいはマルクス主義を標榜していた時から発生しており、その当時これらの勢力中にイスラーム主義は存在しなかった。
そのようなメディアは、宗派を根拠としてヒズブッラーの目的や意図に疑念を投げかける大規模キャンペーンを行うことにより自己欺瞞に陥っている。彼らは、宗派の違いを用いてスンニー派アラブをひとまとめにしようとし、身内争いの種をまきたがる「専門家」を雇い、適当なタイミングでいにしえの宗派間の諍いをよみがえらせては煽る。
ガザのイスラーム抵抗勢力は完全に「スンニー」であり、「ムスリム同胞団」、特に「ハマース」に起源を有する。「ヒズブッラー」を敵とするスンニー勢力からは祝福されてよいはずが、実際は全く逆で、「穏健派メディア」は、これらスンニー派の抵抗勢力に対する悪意ある論説を集めている。その著者たちは、ヒズブッラーの目的に疑念を投げかけ、ヒズブッラーがイスラエルと共謀してその企てを実行しているとまで言っていた人々である。
イスラエルのロケット弾が降り注いでハマース幹部を暗殺し、多くの子供達を殺し、家屋や省庁舎を破壊しているこの時に、「ハマース」と抵抗諸勢力を攻撃する執筆者たちは、この抵抗勢力というのが「イランの目論見」を実行しているのだ、という言い方を目くらましにする。
エジプト高官たちが特に、あらゆるテレビ会見でこのように言って、抵抗勢力に嫌疑をかけることに専念しようとする。世界各国のメディアがこれを支持し、慎重に計算されたプランによって、それらの発言が衛星放送にのせられる。
ガザのイスラーム抵抗勢力は、150マイル四方に閉じ込められている150万人の上に課された封鎖の解除を求めている。その彼らがどうやって「イランの目論見」を実行しているのか、我々にはわからない。ガザの人々に食糧と薬を届けるためラファハ通行所を再開せよと政府に求めるエジプト人民は、それだけでイランに偏向しており、イラン側に立っているとでもいうのだろうか。
このパレスチナの抵抗運動が「イランの目論見」を実行しているとすれば、それに対する「アラブの目論見」があってしかるべきだが、ひどく残念なことに、アラブの、あるいはエジプトの目論見は、イコール米イスラエルのそれである。その目論見とは、「無駄な」交渉を支持することで、その交渉においては、歴史的パレスチナの80%までを譲歩するアラブ和平構想を受入れてくれとイスラエルに懇願するのである。その多大な譲歩、寛大さはまったく報われないというのに。
もし、アラブの目論見が、抵抗を支持するものであったなら、イスラエル入植地に分離壁に反対し、封鎖措置停止、チェックポイント撤廃の要請で団結して、石油や経済力を行使し欧米とイスラエルに正当な国際決議を受入れさせようというものであったら、パレスチナ抵抗運動は、イランの目論見などとは全く無関係となる。抵抗運動の目標はこのアラブの目論見と一致し、彼らはイスラーム世界を互いに結びつける力となるだろう。
この記事の原文はこちら
( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:15465 )