コラム:アッバース大統領の立場とパレスチナ武装抵抗運動
2009年01月12日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 抵抗運動がパレスチナ人を破滅させるわけではない

2009年01月12日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【アブドゥルバーリー・アトワーン(本紙編集長)】

 ラーマッラーPAの長、マフムード・アッバース氏が、ムバーラク大統領との会見後の記者会見でいくつかの挑戦的な表現を用いたのは残念なことであった。特に、パレスチナ各派、中でも「ハマース」を指して、「国民を滅ぼすような抵抗運動を我々は欲しない」と述べた点については。

 アッバース氏がこのような言い方をするのは初めてではない。彼は自殺攻撃を「卑劣」と評し、強い言葉で非難した。また、ガザから発射されるロケット弾を「的外れ」とし、ガザ封鎖を解除すべく派遣された欧米の船舶とそれらに乗った欧米並びにアラブ人の活動家たちを嘲って「子供の遊び」であると述べた。「ファタハ」がイスラエル占領に対し最初の一発を放って以来44周年を記念する式典で、アッバース氏は、崇高な抵抗運動の理解を貶めるような言い方をし、ガザの同胞たちに敵対した。その中には、情け容赦なく女子供を殺戮する事を目的としたイスラエルの野蛮な攻撃に対抗するため「ファタハ」運動が設置したアクサー殉教者部隊も含まれる。パレスチナの人々を滅ぼすのはパレスチナ抵抗運動ではない。ジェニーンでヘブロンで、そしてベイルート並びにその南部、パレスチナ難民キャンプで起きたのと同様に、ガザ各地で数千の死傷者を出しているのは、血なまぐさいイスラエルのテロリズムである。

 ロケット弾や自殺攻撃によって抵抗運動がパレスチナ国民を破滅させようとしているというのは、イスラエルによる現在の攻撃を正当化する口実に過ぎない。しかし、多くのイスラエル、欧米メディアや関係者たちは、息せき切ってこの考えに飛びつきクローズアップし、抵抗運動を非難して全ての死者や負傷者の責任を負わせようとする。このように示唆するのが、パレスチナ国民の長として選ばれ、如何なる時も彼らを守るべき立場にいる人物だというのは問題である。

 この抵抗運動なくしては、自分がラーマッラーに落ち着くことも適わず、今この瞬間も占領パレスチナ近隣のアラブ諸国亡命地に留まっていただろう事を、アッバース大統領は思い出したほうがよい。抵抗運動こそがパレスチナのアイデンティティを蘇らせ、イスラエルと世界にその認知を迫ったのである。


 過去百年にわたるイスラエルとの敵対関係において戦場に散った幾千もの気高いパレスチナ殉教者たち、特に「ファタハ」の彼らに、アッバース氏はなんと言うつもりか?あるいは、イスラエルの収容所に捕われ、人生の盛りを鉄格子の向こうで過ごすことになった数万の人々とその家族に、どのように相対するつもりだろうか?彼らは尊厳と誇りを呼びかける声に応え抵抗運動に参加したために、特に、正当な自分達の人権を取り戻そうと「ファタハ」に参与したがために、そのような目に遭ったのだが。この人々は間違っていたか?殉教は間違いだったのか?あるいは、占領に対して蜂起し150万の殉教者を出したアルジェリアは誤っていたか?ドゴールは、ナチスの擁立したヴィシー政権に組する必要はなかった。ブルギバ、ムハンマド5世、ネルソン・マンデラ、ユースフ・アル=ウズマ、ウマル・アル=ムフタール、この人々は、銃を捨て占領に白旗を揚げただろうか?

 アッバース氏が「ハマース」運動のガザにおける「正当性」に疑念を呈するならば、議論の余地はあるものの、それはまだ理解できる。しかし、だからといって抵抗運動の意義を疑う、特に、ガザの同胞たちが先例のない「ホロコースト」にさらされている現在、そのような嫌疑をかけるというのは、受入れ難い、もしくは許し難いことである。

 アッバース氏の見方によれば抵抗運動やロケット弾の代替物であるところの、「的外れな」一連の交渉は、現在までパレスチナ国民に何ももたらしていない。西岸における更なる入植、エルサレムのユダヤ化、分離壁、西岸人口300万の生活を耐え難い地獄と化す630にのぼるチェックポイントの他には。

 アッバース大統領は政治プランに基づきパレスチナの人々に選出された。そのプランによれば、彼はロードマップとアナポリス会議に基づき独立国家を樹立するはずであった。ブッシュ大統領は、昨年の任期終了以前に二ヶ国共存案を適用するはずであった。アッバース大統領は3日前に任期を終了し、ブッシュ大統領は8日後に、ライス国務長官と共にホワイトハウスを去る。アッバース大統領としては、ラーマッラー官邸で記者会見を開き「引退」を表明し、改めて国民投票による自由で清潔な大統領選挙が行えるようになるまで、大統領職を代行する人物を政権内で募るのが理に適ったやり方だろう。

 しかし、アッバース大統領に近い人々が言うところによれば、パレスチナ国家樹立を果たさぬままブッシュ大統領が任期を終了するに伴い、アッバース大統領は別の選択肢を考えているらしい。ちなみに、これらのアッバース大統領に近い人々には第一政治顧問のニムル・ハンマード氏も含まれる。

 それはどのような選択肢であるか?何故それがはっきりしないのか?今このような時には、アッバース氏も、抵抗運動に対して侮蔑的な声明など出さずに沈黙してくれたらと思う。あるいは、エルドガン・トルコ首相、チャベス・ベネズエラ大統領、または、ガザで現在起きている虐殺の責任はイスラエルのみにあると述べたサパテロ・スペイン首相のようなことを言ってくれたらと祈る。彼は抵抗運動やロケット弾には言及しなかった。しかし我々のこの祈りは空しかった。

 ガザの「ファタハ」アクサー殉教者部隊スポークスパーソン「アブー・アル=ワリード」氏は、「アル=ジャジーラ」に出演し、「ファタハ」は、「ハマース」、イスラーム聖戦、サラーフッディーン支援部隊、PFLP、DFLP、アブーッリーシュ殉教者部隊、PFLP-GCの兄弟達と手に手を取って抵抗すると述べ、完全な協調路線を取っている事、合同作戦本部などについて話した。

これが我々の知る「ファタハ」である。我々、そしてアラブ・イスラームの人々皆が愛した「ファタハ」、40年以上もパレスチナ闘争を担い、その殉教者達の犠牲のうえに相応しい指導力を実現した、故ヤーセル・アラファトの、ハリール・アル=ワジール(アブー・ジハード)の、サラーフ・ハラフ(アブー・イヤード)その他の面々による「ファタハ」である。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:15555 )