■ 米政府がイスラエルの措置を歓迎、ハマースはイスラエル軍がガザ地区内にいる限り「抵抗を続ける」と表明
■ イスラエル、シャルム・シェイフ首脳「協議」会合に先んじて一方的停戦を宣言
■ ムバーラク大統領はエジプト提案への無視を黙認、「演説やスローガンの輩」を非難
2009年01月18日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面
【ラーマッラー:ムハンマド・ハウワーシュ】
ガザ地区に対するイスラエルの戦争が22日間にわたって続き、パレスチナ人1,203人が死亡(うち410人は子供、108人は女性)、5,300人が負傷した後に、イスラエルのエフード・オルメルト首相は現地時間で18日午前2時に一方的停戦を開始すると発表した。ただし、イスラエル軍はガザ地区内および周辺に残留し、イスラーム抵抗運動「ハマース」の側から発砲があれば反撃するとしている。オルメルト氏は、イスラエルはCast Lead作戦の全目的ないし「それ以上」の成果を実現し「エジプトのホスニー・ムバーラク大統領の要請に応えるべく、イスラエル政府の政治・安全保障問題縮小閣議において停戦に合意した」と述べた。
アメリカ政府はただちにイスラエルの決定を歓迎し、今なお恒久的停戦の実現が目的であるとの立場をあらためて表明した。一方、ハマースは、「イスラエル側の措置は不十分であり、イスラエル軍部隊がガザ地区に残留する限り抵抗を続ける」と約束した。
昨日、イスラエルの停戦発表の数時間前にエジプト政府は、イスラエル政府の決定を黙認する意向を固めていた模様だ。イスラエル国防省のアモス・ギラード補佐官は金曜日には、イスラエル軍を残留させたままガザ地区での一方的停戦を宣言する方針をエジプト政府高官らに伝えている。しかしこの宣言は、ガザ地区でのイスラエルの軍事作戦停止を呼びかける国連安保理決議第1860号を「履行するためのメカニズム」としてムバーラク大統領が今月6日に示した提案に対する破壊的な打撃となり、エジプト情報総局のウマル・スレイマーン長官がギラード補佐官およびハマース代表との間で、戦闘停止の手続きや撤退、休戦の条件と期間、通行所の開放をめぐって10日間にわたって進めてきた困難な交渉の成果を台無しにするものである。
■ イスラエル政府の発表
閣僚12人によるイスラエル政府縮小閣議の直後、オルメルト首相はエフード・バラク国防相とともに記者会見を開き、「日曜日[19日]早朝2時(0:00GMT)、我々は戦闘を停止する。ただしガザ地区およびその周辺地域に部隊の展開を続ける」「もしも敵側が我々に対する攻撃を決定した場合、イスラエル軍は実力をもって攻撃者に報復する完全な自由を有する」と述べ、「ハマースが攻撃を完全に停止すれば、我々はいつガザ地区を退去するべきか検討する」と説明した。
また、「我々の目的は、作戦を開始した当初定められたとおり完全に実現した。むしろそれ以上の成果だ…ハマースは痛烈な打撃を受けた」「ハマースの幹部たちは逃げ隠れている。多くのメンバーは殺害された。トンネル数十ヶ所が砲爆撃を受けた。イスラエルに対するロケット弾の発射も減少した。ロケット弾の大半が発射された拠点はイスラエル軍部隊の制圧下にある」と述べた。
オルメルト氏はまた「ハマースはテロ行為において、一般市民の苦痛を考慮することなく、彼らを人質に取った」「イスラエル軍は他のいかなる国家にも例のないほど、一般市民の被害を回避するために多くの努力をした」と述べ、イスラエル軍が定期的にガザ地区への人道支援物資の搬入を許可したことに想起を促した。
またオルメルト氏は、今回の攻撃で「イスラエルを脅かす者たちを抑え込む能力が強化された」と述べ、「ハマースの軍事能力は大幅に弱体化した」との見方を示すとともに、「欧州諸国の首脳たちは我々に、ガザ地区への武器流入を阻止するべく努力すると約束した」と述べた。
イスラエルが戦争の終わりに一方的な停戦を発表するのは、歴史上これが最初である。
また、バラク国防相は記者会見において、「必要があれば再度作戦を実行し強化する。…我々は戦闘を停止するが、ハマースが同様の行動をとる保証はどこにもない。必要である限りイスラエル軍はガザ地区に残留する」と述べた。
■ アメリカの歓迎
ワシントンでは、コンドリーザ・ライス米国務長官が声明を発表してイスラエル政府の措置を歓迎し、「今なお目的は、全面的に尊重され、ガザにおける安定と正常な状態の回復をもたらす恒久的停戦の実現である」「合衆国はエジプトの努力を賞賛するとともに、無辜のパレスチナ人たちの苦難について今なお深い懸念を覚えている。…我々は支援物資の搬入拡大に向けた国際社会の即時かつ組織的な行動の呼びかけを歓迎するとともに、かかる努力に貢献してゆく意向だ」と述べた。
■ ハマースの反応
イスラエル側の一方的停戦に関して、ガザ地区のハマース広報担当であるファウズィー・バルフームは、一方的停戦はイスラエルの「侵略行為」が終結したということではなく、封鎖が終結するわけでもないと述べ、それらは戦争行為であり、つまり抵抗運動が終結するわけでもないと述べた。
(中略)
ハマース代表団が昨日ドーハからカイロに到着し、先週から滞在しているパレスチナ自治区内指導部の代表団と合流してスレイマーン情報局長官と協議を行うなか、ムバーラク大統領は予告なしにテレビ演説を行い、イスラエル政府の決定を実質的に承認する立場を示した。ムバーラク大統領はガザ地区での「即時かつ無条件の停戦」を呼びかけ、イスラエル首脳部に「ガザ地区の外への部隊撤退」を求めるとともに、「イスラエルとパレスチナ抵抗諸組織に対して、理性と良心の呼びかけに応じてガザの民衆の苦難に終止符を打つよう」呼びかけた。
ムバーラク大統領は「戦闘停止の後ただちにエジプトは、停戦の回復と封鎖の解除に向けての努力を続ける」と述べ、イスラエルが一方的に、エジプト提案への配慮もなく停戦を決定したことをエジプト政府が認めたともとれる発言をした。
ムバーラク大統領は、ガザ地区への武器密輸を阻止するためアメリカ合衆国が北大西洋条約機構(NATO)の参加を得て保証する軍事的措置に関して、イスラエルのツィピ・リブニ外相とアメリカのコンドリーザ・ライス国務長官がワシントンで一昨日署名した相互理解覚書について明確にコメントすることは避けつつ、「エジプトはイスラエルとガザ地区の境界の安全確保に努める。私は我が国の領内に外国の監視団が駐在することは決して受け入れない。…それは危険であり、その一線を越えることは許さない」と述べた。
アフマド・アブルゲイト外相はこれに先立ち、厳しい口調で「アメリカとイスラエルのいかなる二国間合意も、エジプト領に関しては不要のものだ。…海上で、あるいはアフリカのどこかの地域で好きなことをすればよい。しかしエジプト領については、エジプトの義務はエジプト国家の安全保障と、エジプト自身の国境警備能力の維持だけである」と述べている。
また、アブルゲイト外相は、イスラエルに対してガザ地区攻撃開始以来最も激しい非難を展開し、「イスラエルは武力と暴力の酒に酔い痴れている」と述べ、イスラエルの「頑迷な」姿勢のせいでエジプト提案が停滞していると主張した。
ムバーラク大統領は演説の中でイスラエル首脳部に向けて「ガザ地区に対する攻撃が抵抗を終わらせることはなく、憎悪が高まるばかりで、イスラエルと国民の安全を実現することはない。和平への道を断ち、パレスチナ人民の不屈の姿勢を強めるばかりだろう」とのメッセージを発した。
またムバーラク氏は、ドーハ首脳会議に出席した勢力を暗に非難し、彼らが「アラブ諸国を穏健諸国と拒否諸国に分裂させている」と述べ、「拒否勢力がパレスチナ人民とパレスチナ問題のために何をしただろうか?占領の下に置かれたアラブの土地を解放するために何をしただろうか?」と問いかけ、シリア領ゴラン高原の問題に暗に言及した。また、カタールに対しては、名指しにはせずに、同国の呼びかけで同国において金曜日[16日]に開催された首脳会議で行われたのは「大袈裟な糾弾の声明、空虚なスローガン、競い合いと非難合戦」だけだと非難した。
またムバーラク氏は、ドーハ首脳会議にアフマディーネジャード大統領が参加したイランについて、「役割や影響力を拡大し、アラブ諸国の対立を深め、アラブ諸国の団結に亀裂を生じさせようと試みている」と暗に非難した。
(後略)
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( 翻訳者:森晋太郎 )
( 記事ID:15609 )