コラム:サウジ・シリア関係改善の動きについて
2009年02月16日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ サウジ・シリア関係、突然の蜜月
■ クドゥスの見方 

2009年02月16日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面

サウジ情報局長ムクリン・ブン・アブドゥルアジーズ王子が、アブドッラー国王からの書簡を携えバッシャール・アル=アサド・シリア大統領を訪問した。これは、国際的孤立を打破しようとしたシリア外交の成果の最たるものだ。シリアの外交政策は、同胞のアラブ方面に対する第一の突破口を開けることに成功した。

首都ダマスカスは、少し前には米上院訪問団、その前にはサルコジ仏大統領、ミルバンド英外相、エルドガン・トルコ首相並びにEU訪問団を迎えている。ブリュッセルではEUとシリアの通商協定の署名が行われた。

しかし、ハリーリ元レバノン首相暗殺以来のリヤド・ダマスカス間の緊張状態を鑑みれば、サウジ情報局長の訪問は特筆すべき重要性をもつ。このレベルで行われるこの種の訪問はほぼ一年ぶりである。周知のように、サウジ政府は対シリア関係を治安・情報責任者に一任しているが、国王に特に近く、最近の外遊のほとんどに同行しているムクリン王子のダマスカス派遣は意味深い。

つい昨日まで、不倶戴天の敵、近寄るなどもってのほかとみなしていた国に向かっていく、このサウジ外交は何を意味するのか。強硬な右派が政権を握りそうなイスラエルの選挙結果、つまり、ガザ攻撃でイスラーム抵抗勢力「ハマース」を片付けることに失敗したイスラエルの現状と、これはどのように関りあっているのか。

サウジ国王は、閣僚ポストから司法、教育、宗教関係機関、最高国家会議まで広範な分野にわたる国内改革キャンペーンを行っている。これは、勢いづくイラン、トルコに対し、長らく凍結してきたアラブ国家としての役割を回復しようとする同国の動きと呼応している。アメリカの対中東政策、特にシリア並びにパレスチナ、レバノンの特定勢力に背を向けるという方針に配慮したため、現在のサウジが失っている役割である。

サウジの対応の変化は、クウェイト経済サミットでサウジ国王が、アラブ諸国共同歩調の必要性を説き、アラブ和解を実現すべしと述べた際に示されていた。国王は前例のない激しさでイスラエルを攻撃し、そのガザに対する侵略を非難した。サミット晩餐への途上、サウジ国王がアサド大統領を抱擁し、肩を並べて歩き握手を交わしたのに多くの識者が驚いた。

シリア側は、サウジ国王と大統領との握手を写真撮影用の形だけのものと見るコメントを訝しがり、非公式の席で、あの握手は本物でありクウェイト・サミットでは和解の端緒が開けたのだと述べていた。彼らは、サウジ側の意図を承知していた節がある。

サウジの方は、新米政権がその前とは異なるものになり、シリアをイランから遠ざけようという意図でダマスカスとの対話を希望するとみなしていた。このため、シリアへの態度を軟化し、新たな世界情勢に乗り遅れないようにと関係改善を図ったのだろう。

来月ドーハで開かれるアラブ・サミットは和解サミットになるだろうと言われているが、断言するにはまだ時期尚早である。特に、イスラエルの選挙結果による混乱、アラブ側の和平への情熱、アラブ和平構想への門戸が閉ざされる事を考えれば。

今後しばらくの間は、アラブにとっても、米国、イスラエルにとっても、何が起きてもおかしくはないような状況となる。今後半年間が、危険度は下がるにしても、より決定的な時期となるだろう。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:15808 )