コラム:リヤド四者会談後のアラブ情勢
2009年03月16日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 和解サミット後の動き
■ クドゥスの見方

2009年03月16日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面

 このところのアラブ圏では多方面で動きが見られる。モッタキ・イラン外相が同国指導部からサウジ国王への書簡を携え予告なしにリヤドを訪れたかと思えば、シリア大統領はカタルの首都に数時間も留まり同国首長にリヤド四者会談の成果を披露している。

 アラブ情勢観測者たちは、これらの動きを今月末のドーハ・サミットに向けたアラブ諸国間の和解努力と見るかもしれない。しかし実際は、アラブ間の諍いに終止符を打つ真の展開は起きていないと思われる。アラブが一つとなり、対イスラエル闘争、域内の非アラブ勢力との競合など差し迫った問題に取り組める新たな頁は未だ開かれていない。

 エジプトとサウジにとり、アラブの和解とは、シリアをイランから引き離し、穏健派アラブ諸国枢軸へと戻す事、レバノン、パレスチナの抵抗勢力と縁を切らせることを意味する。しかし、経済援助を約束する以上の具体的な見返りを、シリアに対して用意しているわけではない。

 勿論シリアはこのような和解条件を歓迎はしない。しかし一方で同国には、この戦略的同盟に居続け現状を維持する取っ掛かりにしたいとの意図がある。エジプト、サウジが域内でのアメリカの政策と関りを持つことを妨げない代わりに、イランとの同盟という自分達の政治的選択に口を出されたくないというわけだ。

 サウジ・エジプト両国にとっては、シリアをイランという「悪の枢軸」から引っ張り出さない限り、シリアとの関係正常化は困難である。ここで事態は一巡りして、結局リヤド・サミット以前の状態に戻ってしまう。

 サウジ外相サウード・アル=ファイサル王子は、昨日のイラン外相との会見後、この事をはっきりと述べている。イランは、アラブの合法的経路、つまり各国政府を介してのみ域内情勢に立ち入るべきである、というのが彼の発言であった。

 ファイサル王子の意図するところによれば、イランは、「ヒズブッラー」や「ハマース」、その他のパレスチナ(武装闘争)諸派を支援することを禁じられている。なぜなら、これらのグループは、国としての正当性を認められていない、あるいは、より正確には、どのアラブ国にも屈していないからである。

 しかしサウジ外相発言は実際的でないうえに曖昧である。非論理的とさえいえる。イランが、どうやって合法的経路で、例えば「ヒズブッラー」と付き合うのか。イランが、そこを経由して、「ハマース」やその姉妹組織イスラーム聖戦に送金し得るアラブの公的機関とはどこにあるのか。エジプトやサウジ政府がこの役目を引き受けるとでもいうつもりだろうか。

 アラブの公的体制は衰退し、その振る舞いは明らかな混乱を示している。「ハマース」はイランに支援を要請した。なぜならアラブ諸国は、抵抗という選択肢からは完全に手を引いたからだ。かといって、和平を一歩でも進めたわけでもないのだが。

 問題はイランではなく公的なアラブの方だ。アラブが見捨てた側を支援し、公正な大義の側に立ったからといって、イランは何ら恥じることはない。現在イランに支援を求めている抵抗運動は、レバノンでもパレスチナでも元々はアラブ・イスラーム共同体のために発足したものだ。

 アラブ的合法性とは、この抵抗の文化から生じるものである。空しい協議を重ねたり和平を相手に乞うことに由来するのではない。ましてや、ガザを攻撃するイスラエルに調子を合わせたり、それに先立つ抑圧的な封鎖を黙視するなどもってのほかである。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:16007 )