イルケル・バシュブー参謀総長の「クルド人アイデンティティー」に関する定義は公正発展党(AKP)党によって、歓迎された。AKPは、参謀総長が「トルコの国民(Türkiye halkı)」を強調したことは、エルドアン首相の「上位のアイデンティティー、下位のアイデンティティー」論を批判した野党にも返答したものだと考えている。参謀総長は、一昨日、士官学校で行った演説で、クルド問題に関し、「第2の文化的アイデンティティーを個人レベルで保持・発展させることはかまわないが、、新たな上位アイデンティティーを創設することを認められない。」と語った。この発言は、AKP党員に、2005年にエルドアン首相が行い野党から反感を買った「上位アイデンティティー、下位アイデンティティー」という定義を想起させた。
AKPのベキル・ボズダー副党首は、バシュブー参謀総長の発言に関し、以下のように述べた。「トルコの国民という表現及び強調が初めてされたことは、前向きであり、意味があり、重要なことである。参謀総長は、下位アイデンティティーは、一種の「豊かさ」(の表れ)だが、それらは上位アイデンティティにおいて一体化されなければならないといっている。これは、参謀本部が初めて発言したという点でも重要であり、対応の変化を示している。この定義は、以前にエルドアン首相や私たちが党として表明してきた考え方である。テロリストたちを山岳地帯から投降させることを含む提案も行った。クルド及びザザという表現を、明確・明白に使用した。反動irticaという言葉を使用せず、宗教的mütedeyyinという言葉を使用したのも新しい動きである。野党の方向性と比べると、参謀総長がより民主主義的なアプローチをしていることがはっきりと分かるであろう。」
■チチェキ副首相「バシュブー参謀総長と話す必要がある。」
メフメト・アリ・シャーヒン法務大臣は、「参謀総長は、『PKKの山岳部隊を組織から切り離すために現行法をよりうまく適応できるような改正』を望んでいるが、それは新たな法律を望んでいるという意味にはならない」と話した。ジェミル・チチェキ副首相は、バシュブーの定義につき、本人と話す必要があると答えた。
■バイカル 「我々は20年前に言っていた。」
共和人民党(CHP)のデニズ・バイカル党首は、イルケル・バシュブー参謀総長の「トルコの国民(Türkiye halkı)」への強調が、新しいことではないと話した。「演説で新しいことはない。ここで新しいのは、初めて参謀総長がこれらのことを口にしたことだ。」と述べた。民族主義者行動党(MHP)にとっても、参謀総長の演説には、新展開とよべるような新しいことはない。
バイカルは、昨日行われたCHPの中央運営委員会(MYK)で、バシュブー参謀総長が一昨日士官学校で行った演説に言及し、以下のように述べた。
「長々と話した学術的な話のほかは、トルコ軍(TSK)のよく知られている考え方を述べたにすぎない。世俗主義を強調する際に、トルコ軍が宗教に反対していないと述べた。演説の中で新たなことは、「トルコの国民」の定義の下位にあるアイデンティティーが、初めて参謀総長により明らかにされたことだ。トルコの国民の下位アイデンティティーはもちろんあるだろう。我々はこのことを20年前から言っている。トルコにはいくつかの民族集団がある。この民族集団は、それぞれ自らの起源に誇りを持つだろう。しかし、これらすべてはトルコ民族(Türk milleti)の一部である。参謀総長もこの枠組み内で考えを述べた。我々は参謀総長の演説で新しいことはないと思う。ここで新しいことは、初めて参謀総長がこれを口にしたことである。トルコでいくつもの民族集団がいるが、重要なのはその上にある上位のアイデンティティーと我々が呼ぶ、「トルコ民族」の一部であることである。」
■民族主義者行動党(MHP) 「学術的な話」
MHPイズミル選出議員のキャーミル・エルダル・シパーヒ氏は、イルケル・バシュブー参謀総長の話が学術的だったと述べ、以下のように話した。
「新展開と思われる点もない。周知の事実の繰り返しだった。何が新しいか全くわからなかった。ただ分かっていることに新たな説明を加えただけだ。しかし、アイデンティティーの政治化は、正しくないという我々MHPとしての立場は変わらない。だれがどんな見解を発表しようがかまわない。下位アイデンティティーだ、上位アイデンティティーだというような議論は、トルコに害を与え、トルコにおける国民の団結及び一致に否定的な影響を与えるという我々の見解は変わらない。」
■民主市民党(DTP) 「新進展はない。」
DTPは、イルケル・バシュブー参謀総長の「トルコ」の新定義を本気にしなかった。DTP党員たちは、「口だけの変革だ。これまでの考え方が続いている。」と話す一方で、クルド人知識人の中にはバシュブー参謀総長が重要な新展開を示したと評価する人もいる。士官学校で一昨日行われた会議で国民vatandaşlıkの定義づけをする際に、アタテュルクの「トルコ共和国を建国したトルコの人々Türkiye halkıをトルコ国民Türk milletiと言う」という言葉に言及し、「トルコTürkiyeの代わりにトルコ人Türkといったら、この文の意味が変わる」と述べたバシュブー参謀総長に対する反応は以下の通り。
DTPファトマ・クルトゥラン副党首:彼は我々の要求に返答し、「その考え方を放棄しろ」と言っている。クルド人の要求は、憲法上の身分保障である。これを否定した。山岳地帯の人々を人間として受け入れることが進歩だというのか。世論に対して柔軟なメッセージでありえるが、新展開ではない。
DTPスィイルト選出議員オスマン・オズチェリキ:言葉遣いに変化は見られるが、本質は変わらない。同化政策、単一民族主義、民族差別主義は根本的な部分で残っている。
DTPハッキャーリ選出ハミト・ゲイラニ議員:軍部がこのようなメッセージを発することはいい傾向であるが、この問題は軍部が解決するべきものではなく、政治の問題だ。現在の状況が、軍にこういしたことを言わせている。トルコに国民がいれば、国民の権利もあるはずだ。
小説家オルハン・ミロール氏:何年も山岳部で闘ってきたある組織の長が、肯定的なことを述べると政治家からは批判的な反応が返ってくる。参謀総長の口から初めてクルドという言葉が発され、アイデンティティーの定義をしたことで、議会の政党は不快に思っただろう。
ディヤルバクル選出ハシム・ハシミ元議員:「トルコ共和国の人Türkiyelilik」という概念とその法的規定に言及したことは、とても重要である。山岳地帯に何千人もの兵士がいる中で、彼の定義は効力をもたない。この点からいうと、バシュブー参謀総長の山岳地帯からの投降者への法的措置要求は、この意味で衝撃的だ。解決に向けて最も重要なのはこの措置になるだろう。
小説家アルタン・タン氏:発表で新しいことはなかった。今日まで行われた共和国政府の公的措置に知的な覆いをかぶせたにすぎない。
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( 翻訳者:田辺朋子 )
( 記事ID:16228 )