ヨルダンで女子差別撤廃条約をめぐりイスラーム法学者と人権活動家が対立
2009年04月24日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ヨルダン:男女平等をめぐってイスラーム法学者と人権活動家が論争
2009年04年24日付クドゥス・アラビー紙(ロンドン)HP1面
【アンマン:本紙:ターレク・アル=ファーイド】
ヨルダンでCEDAW〔=女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約。略称:女子差別撤廃条約。1979年の第34回国連総会で採択された多国間条約〕をめぐる論争が最高潮に達している。
始まりはヨルダンの諸大学のイスラーム法学者62人が署名した3通の覚書を、世界中道派フォーラム〔=穏健・中道なイスラーム思想の啓蒙を目的とする団体。ヨルダン政府の後援の下、世界中道派会議を毎年開催するなどの活動を行っている〕が首相と上院議長と下院議長宛に提出したことだった。覚書は、条約のいくつかの条項に対する留保を撤回するよう政府にかけられている圧力に応じないことを求める内容だった。
世界中道派フォーラムのマルワーン・アル=ファーウーリー事務局長が提出したこれらの覚書には、「イスラーム法の原則に相反し、家族の崩壊を助長し、ムスリム女性の地位を侵害する」CEDAWのいくつかの条項に対する留保を解除しないよう、イスラームの法学者、思想家、宗教者たちは求めていると書かれていた。
女性に対するあらゆる形の差別や迫害の廃止を求めるこの条約を、反対者たちは「奇妙で危険な干渉であり、公私にわたる不安の源」とみなしており、特に条約が長い歳月の間に立法機関が制定してきたイスラーム法および世俗法の数々を、明確に廃止することを署名国に義務付ける性格を持つ点を問題視している。
世界中道派フォーラムはこの覚書が関心を呼ぶことを期待し、その目的は「国家の価値観と、憲法および世俗法とも調和のとれたイスラームの権威を大事にするため」だと強調した。
イスラーム法学者とヨルダンの大学教授たちが署名したこの覚書は、「イスラーム法や現行法、またヨルダン国民が信じている価値観や伝統、慣習にも相反する」条文を含む女子差別撤廃条約への政府の留保を解除するよう求める圧力に応じないよう呼びかけ、「私たちはイスラーム法学者として女性の権利を信じている。そして、女性が社会で正しい地位を得て、仕事や〔社会の〕建設、改革において役割を担い、政治や社会、経済分野での活動において権利を行使し、健康と教育面で男性と平等な権利を得るための働きかけ〔の重要性〕を信じている。イスラームは男性と女性の闘争という原理を信じない。『あなた方のうちアッラーの御許で最も貴い人は、最もアッラーを畏れる人である』というアッラーの御言葉の通り、どちらかが優位に立つことなく、協力し、補い合う存在であると信じている」とも述べている。そして、「アッラーのお許しによって、この国はアッラーの宗教、イスラーム共同体(ウンマ)の原則と価値観から外れることなくそれらと共にあり続けることだろう」と強調し、ウンマの特異性と相容れないこの条約への留保を撤回させようとする、いかなる圧力にも応じないよう政府に求めた。
このような動きの背景には、ヨルダンの市民団体、特に人権団体が条約の条項への留保を撤回するように要求していることと、同様の要求を掲げた女性たちの動きがある。だが、今のところ目ぼしい変化は起きていない。
条約に反対するこれらの人たちは、ヨルダン政府が条約への留保を撤回することで、ヨルダン国内の同性愛者たちに専用団体の設立が認められることを懸念しており、条約反対の運動が活発化したのも、3人の同性愛者たちが団体設立の認可を社会開発省に申請したというニュースが広がった後のことだった。
ヨルダン政府は1992年に女性差別撤廃条約に調印し、その15年後の2007年7月に官報に条文を掲載することで、最終的に批准した。これによってこの国際条約は、ヨルダンの国内法において発効したのである。条約は差別の定義・立法措置・基本的自由・暫定措置・性別役割・人身売買・政治参加・代表権・国籍・教育・就業・健康・権利配分・農村部の女性・法的平等・婚姻と家族関係を記した本文16カ条のほか、国がいくつかの条項に留保を示す権利を含む、運用にかかわる条項から成る。ヨルダンは国籍法にかかわる9条2項と、婚姻および家族関係にかかわる16条c・d・hを保留している。
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( 翻訳者:青山沙枝 )
( 記事ID:16329 )