コラム:レバノン議会選挙、劇的な情勢変化の見込み薄く
2009年04月14日付 al-Hayat 紙
■ 次期レバノン総選挙における変化は見込み薄...「3月8日」勢力単独での組閣を可能にすべきか
2009年04月14日付アル=ハヤート紙(イギリス)HP特集面
【ベイルート:ハーズィム・アル=アミーン(本紙)】
レバノン国会選挙は今年6月の実施を前に、最低限の調和と合意に基づき統治できる協調的な政権を樹立させる政治情勢の創出という役割を失っている。この選挙には象徴的な価値はある。しかし象徴には、レバノンにおいて異なった現実を創り出すほどの影響力と意義はない。実施される選挙の結果が与野党勢力の構図に本質的変化をもたらすことはないだろうと誰もが気付いている。変化は最善の場合でも10議席を超えない少数の議席に留まるであろうと誰もが認めているのである。つまり、我々は僅差による多数派と大規模な少数派を前にすることになる。それはレバノンがこれまでの選挙においても直面してきた現実なのである。取るに足らない多数派勢力は単独で統治することができず、大きな少数派勢力はライバルに対して単独での統治を許さないであろう。選挙の結果、惨めな実効性のない協力関係が生まれるだろう。そのことはベイルートでは誰一人として否定しないだろう。
それでも今回の選挙には、象徴的な影響はある。勝者は、ライバルが疑念を示してきた自らの優越を誇示することができるようになるだろう。今回の選挙では激しい争いの結果、些細な効果が生まれるということになろう。例えば、南部のサイダ市における選挙戦を想像するとしよう。同市における最大の競争は「反対派」勢力全体と「与党派」勢力全体の間で行われるであろう。同市の[スンナ派]2議席のうち1つに立候補するフアード・アル=セニョーラ首相を落選させることが、ヒズブッラーにとって大きな課題となるであろう。セニョーラ首相は過去2年間、対ヒズブッラーの急先鋒であった。一方、セニョーラ首相の当選は、「3月14日勢力」にとって大きな価値をもつであろう。しかし結果はどうであったにせよ、たった1議席のことである。1つの議席をめぐる激しい争いで、莫大なエネルギーが費やされるであろう。このような構図は、今年6月のレバノン国会選挙全体に共通したものになるであろう。
あらゆる世論調査によると、それぞれに違いはあるにせよ、レバノンを分ける2大勢力のどちらも、7議席を上回る差をつけて勝利するすることはないと見られる。したがって、選挙の結果によって政界の構図に本質的な変化が生まれることは期待できない。問題は各政治勢力の影響力や各選挙リストの勝機といったレベルを超えており、選挙プロセスをめぐる政治的な現実が、特定の政治勢力が目に見える勝利を実現するような展開を妨げているのだ。その勝利こそが、統治能力を証明するものなのだが!
例えば、「3月8日勢力」の大敗というような状況を想像してみよう。そのことが意味するのは、レバノンの現実あるいは周辺地域の情勢からみて実現しそうにない問題の決着をつけるということである。それは例えば、ヒズブッラーの武装問題やレバノン情勢からのシリアの完全な撤退、あるいはイランの影響力を最低限度に弱体化させるといった事柄に関して、真剣に検討するということだ。それはレバノン議会選挙の役割ではなさそうだ。ある勢力がこの選挙で勝利したとしても、これらの目的を達成できそうにはない。
一方、「3月14日勢力」の大敗と、その結果を受けて樹立される政府の経済および外交政策について想像してみよう。経済に関しては、この政府の仕事は、失敗の責任はこれまでの政府にあると主張することに限られ、この20年間にわたってレバノン経済の安定を保証する唯一の要因であった外国の「保護」を得ることはできないだろう。一方、外交政策においては、ヒズブッラー率いる政府の外相は、多くのアラブ諸国および世界各国の首都を訪問することすら出来ないだろう。「抵抗運動」に体現されるヒズブッラーの役割がそのダイナミズムを大幅に失うことになるのは言うまでもない。この役割を支えてきた「外交部門」の機能に支障が生ずるからである。
(後略)
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( 翻訳者:平川大地 )
( 記事ID:16344 )