市民生活に新たな区分:治安維持軍、「独居用住宅」の「整理」に乗り出す
2009年05月03日付 E'temad-e Melli 紙
【ダーヴード・パナーヒー】首都テヘラン治安維持軍長官はメフル通信とのインタビューのなかで、ある計画について話している。同長官によると、この計画の実施によって、テヘラン第12区から「犯罪発生の温床」が一掃される予定だとのことである。
この計画は「独居用住宅」の「整理」を狙ったものだとするラジャブザーデ司令官は、さらに次のように説明している。「社会的規律計画で実施が予定されているものとして、独居用住宅の整理がある。というのも、独居用住宅は地区で発生する犯罪の温床であり、破壊分子が集まりやすい場所の一つだからである。そのため、治安警察はこのような場所の特定作業を行っているところであり、今後数日間のうちに彼らを一掃するための捜査を始める予定だ」。
このインタビューの続きを読んでも、この計画についてさらに詳しい情報を得ることは、あまり期待できない。この計画がどのように実施されるのか、なぜ実施するのか、そして治安維持軍がいう「独居用住宅」の定義とは何かを知ることは困難だ。
国会社会委員会副委員長のマジード・ナスィールプール議員が、テヘラン治安維持軍による「独居用住宅整理計画」に関して、イラン学生通信に「治安維持軍長官は《独居用住宅》についてきちんと定義すべきだ」と注文を付けたのも、恐らく同じ理由からだ。
「もしテヘランに〔‥‥〕社会の安全を脅かすような組織的な行為の発生する場所があるというのであれば、権力はこれを適切に取り締まらねばならない。しかしもし、地方からテヘランに出てきた人とか、その他の理由で一人暮らしをしているような人の住んでいる場所〔を取り締まりの対象として意図しているの〕であれば、一人暮らしをするかどうかは個人の権利であって、権力が市民の個人的生活に立ち入ることは、憲法でもイスラーム聖法でも、許されていない」。
〔‥‥〕ナスィールプール議員はこのように述べ、さらに次のように強調している。「犯罪の取り締まりを口実に、個人の聖域に立ち入る権利など、治安維持軍にはない。治安維持軍は何か事を起こす前に、問題を正しく詳細に分析すべきだ。なぜなら、治安機関の行動は体制〔の正統性〕ともつながっており、肯定的なものであれ、否定的なものであれ、その代償は体制に帰ってくるからだ」。
〔中略〕
説明の不備
今回の計画〔=独居用住宅整理計画〕は昨日からテヘランの一部で開始されたが、治安維持軍はこれまでのところ、この計画をどのように実施するのか、きちんとした説明を行っていない。しかし計画の実施方法について詳細を知らないのは、どうやら一般市民だけではないようだ。イラン学生通信の次の報道に注目されたい。
「首都テヘラン治安維持軍長官は、社会的規律計画の一環としてテヘラン第12区での《独居用住宅》の整理を土曜日から行うと発表したが、その一方で計画実施の一翼を担うはずの首都テヘラン警察作戦担当副長官は、同地区で独居用住宅の整理を行うことについては何も聞いていないと述べた」。
イラン学生通信の報道によると、社会的規律計画の新たな段階がテヘラン第12区で開始されたのは木曜日(オルディーベヘシュト月10日〔=西暦4月30日〕)からだが、それからたった一日後、独居用住宅の整理が〔突然〕警察から発表されたという。
首都テヘラン警察作戦担当副長官のハーンチャルリー大佐は、「そのような計画は知らない」と述べ、次のように語っている。「独居用住宅を整理するなどという話を聞いたことは、全くない。私自身、そのような事実は知らない」。
〔‥‥〕他方、首都テヘラン警察広報センター所長のアフマディー大佐は、イラン学生通信の取材に対し、独居用住宅の整理はテヘラン第12区で犯罪の温床となっている場所に限られていると釈明した上で、「社会的規律計画では、警察は犯罪行為の起きている独居用住宅の整理を予定している」と述べる。
同所長によると、「独居用住宅」とは「犯罪の温床となっている場所」のことであり、その取り締まりは警察による社会的規律計画の中に組み込まれている、そしてそのような場所は専門の警察によって特定されているという。
このような限定的な説明では、しかしこの計画がどのように実施され、何を取り締まりの対象に含めるのか、明確になったとは言えないだろう。〔‥‥〕
独身は罪か?
この計画の実施をめぐる曖昧さは、それに関わる様々な疑問を喚起する。果たしてこの計画では、一人暮らしをしている人全員に職務質問をしたり、生活ぶりを詮索したりすることが意図されているのであろうか。もしそうではなく、犯罪発生の温床となっている場所の取り締まりだけを視野に入れているというのであれば、犯罪発生の温床という点で一人暮らしの人とそうでない人との間にどのような違いがあるというのだろうか。
一人暮らしを営んでいる人は、様々な理由からそのような生活を自ら選んでいる。地方からテヘランにやってきて、暫くの間家族と別れて生活することを余儀なくされている人もいるだろう。それ以外に方法がなかった、といった方がよいかも知れない。また家族とのトラブルから、あるいは一人暮らしの方が性に合っているという理由から、家族と一緒に暮らすよりも一人で生活をすることを選んだ人もいるだろう。
一人暮らしをしている人には、彼ら自身よく知っているように、それに付随する困難に直面することが多い。一度そのことに注目しておいてもいいだろう。
例えば、不動産屋は賃貸物件を探している人にまず、独身か既婚者かを訊くことが多い。独身者の多くが不動産屋から次に聞くのは、次のようなことばだ。「独身用には、部屋はないよ」。
大家の多くも、いかなる理由があるにせよ、既婚者に部屋を貸したがる。一人暮らしというものに対して、何らかの恐れを抱いていたり、神経質になっていたりしているようだ。そのために、独身者は何らかの問題を抱えた人だ、独身者がアパートにいられると良くないことが起きる、と考える人も一部にはいる。
にもかかわらず、この種の「神経質さ」には恐らく現実的な根拠はあまりない。ある人間が良い人間か悪い人間かは、既婚者か独身者かとは関係がないのだ。何か事が起きる前から、社会生活に壁を作り、独身者か既婚者かで人間を区分し、結果として市民としての権利を蔑ろにしてしまうような考え方は、正しい考え方とは言えない。そのような考え方は、努力して矯正されるべきものなのだ。
さて、治安維持軍はテヘラン市の一部地区で、独居用住宅への取り締まりを行うと発表しているが、たとえそれが犯罪発生の温床であるような場所に対する取り締まりを意図するものであるとしても、この計画に「独居用住宅」ということばを用いるのは、あまり適切とは言えないだろう。そこには犯罪者であることの基準として、独居用住宅に住んでいるかどうかが考慮されている、ないしは少なくとも意識されているのだから。
〔後略〕
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( 翻訳者:斎藤正道 )
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