■ 選挙制度における公平性の度合い...レバノンの例
2009年05月06日付アル=ハヤート紙(イギリス)HP論説面
【イブラヒーム・アル=アラブ(レバノン人弁護士)】
レバノンのこれまでの選挙法制を概観するとしよう。1943年および1950年の選挙法は県を選挙区とし、2回投票による多数決選挙を定めていた。この制度においては、第1回投票で票数の過半数を獲得し、なおかつ第2回投票において単純多数制でより多くの票を得た候補者が勝者とされる。[第1回投票で]有権者全体の12.5%の票数を得られなかった者は、第2回投票に立候補することは禁じられる。
第1回投票において本当の政治的勢力バランスが明らかになり、第2回投票における候補者相互の連携や譲歩が行われることになる。
この制度は政党の多元性を生み出し、小政党の統治への参加を促進し選挙プロセスにおける役割を与えることを目指すものである。1952年と1957年に適用された選挙制度は単純多数制であり、選挙区はレバノンを26区に分ける小選挙区(単記投票区)である。
小選挙区制あるいは単記投票制に依拠すると、議員との直接的関係の構築や圧力団体の影響力の制限といった良い面ももたらされるが、個人的ないし集団的利害や意向が公益よりも優先され、候補者の関心が地域的な問題に限定され、政党や政党間連携の役割が弱まることにもつながる。2000年に適用された選挙法ではそれまでの諸制度と異なり、客観的基準に基づかない選挙区が設定された。南部県やベカーア県では2県、ビシャリー・アッカールやミンヤでは2郡、シューフやマトンでは1郡を1選挙区とし[ママ]、首都ベイルートは3選挙区に分けられた。
この選挙法の欠陥は、国民の代表性を歪めるということだ。選挙区が平等に設定されないからである。2つ選挙区があり、それぞれに1議席が割り当てられているとしよう。1つ目の選挙区の有権者数は10万人、2つ目の有権者数は50万人だとすると、第1の選挙区の有権者1人は5票を持ち、第2の選挙区の有権者1人は1票を持つことになる。もし選挙が県を選挙区として実施されたなら、思想、政策や支持政党をめぐる競争がより活発になり、公共の利益や国家的なプロジェクトが狭小な集団の利害よりも優先されただろうに。
(後略)
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( 翻訳者:平川大地 )
( 記事ID:16511 )