湾岸通貨統合をめぐるUAE・サウジ関係
2009年06月12日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 湾岸通貨統合評議会を背景にアブダビ・リヤド関係が緊張
■ サウジ国境で足止めされるUAEトラック数千台

2009年06月12日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPニュース面

【ロンドン:本紙】

観測者の目には、サウジの覇権に抵抗し湾岸通貨統合を拒否したUAEへの罰則とも見えるだろう。サウジは、通貨統合評議会の本部となる湾岸銀行のリヤド設置を主張し、それに反対するUAEが通貨統合計画からの脱退を表明した。そして、過去数週間、サウジ・UAE国境での手続き、特にトラック運転手に対する通行許可が厳しくなり、今週は24キロもの渋滞、のろのろ運転を引き起こした。足止めされた運転手たちの話として「ガルフ・ニュース」紙は、上昇する気温の中、飲食や手洗いの設備もない場所で手続きを待つのは非常に厳しいと伝えている。

この季節、アブダビ首長国とサウジ(アル=グウェイファート)間の砂漠地帯にある国境通過地点の気温は摂氏45度を超える。しかし、UAEにとって、クウェイト、カタール、バハレーンのような湾岸諸国並びに他のアラブ諸国へ産品を到達させるには、サウジが唯一のゲートである。「ガルフ・ニュース」によれば、2キロ進むのに16時間かかったと言うトラック運転手もおり、この問題が大きくなったのはこのひと月ばかりであると証言している。

湾岸協力会議諸国間で税関統一計画があるにもかかわらずのこの事態は、先月UAEが通貨統合からの脱退を表明した結果として生じた微妙な空気を更に複雑なものにしている。

リヤド・アブダビ間には30年以上にわたる根深い問題が存在する事も、観測筋は指摘する。両国国境地帯にある、日産約50万バレルのシャイバ油田に関し、UAEがより多くのシェアを求めている件である。また、その向かいに位置する海岸地帯(アル=アディード)につき、UAEは領土権を主張している。この地域海上を渡しカタールとUAEを繋げる橋梁計画があったがサウジ政府の反対にあった。

UAE筋は、サウジが湾岸協力会議関連機構の本部のほとんどをリヤドに置こうと主張することに疑問を呈している。サウジは、湾岸中央銀行構想において、その総裁はUAEから選出するとの案で懐柔を図ったが、UAE側は総裁ポストよりも本部が置かれる場所にこだわった。信頼できる筋によれば、この問題と国境通過問題は関連性がある。

「ハリージュ・タイムズ」紙によれば、今月20日リヤドで、両国税関会合が開かれ、国境渋滞の件が話し合われる。同紙が伝えるところによれば、UAE税関局長は、ドラッグやアルコールの密輸入が行われているとのサウジ側主張があるが根拠なしとみている。また、先週国境で足止めされたトラックは数千台にのぼり、両国間の通商規模に換算すれば540億ディルハムになる。駐UAEサウジ大使の談話として同紙は、国境の渋滞はドライバーが必要書類を携行していない、車両が規格に合っていない等の問題が原因であろうと伝えている。

また、先週同紙にもたらされたニュースとして「ハリージュ・タイムズ」は、サウジが、IDカードのみで行われる両国間の移動を禁じた事が、サウジUAE関係紛糾の背景にあると報じている。これに伴い、UAE国民もメッカ巡礼や観光でサウジへ旅行する際は、パスポートの携行を義務付けられる。リヤド方面は、今のところこのニュースを否定していない。

このように問題を有する2カ国が他の湾岸協力会議4カ国と乖離する傾向を示しているが、これが、治安、国防、経済等他のGCC合意にも影響するのか、あるいは統一通貨問題に限られているのかは、まだ判断できない。しかし、2カ国の対立は、これらの他分野に影響しそうな気配である。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:16671 )