加盟交渉に値引き交渉の余地無し―EUの具体的要求事項リスト
2009年06月12日付 Radikal 紙
レーン欧州委員会拡大担当委員を始めとするEUの担当官らは、年末に加盟交渉が停止することがないよう、トルコが改革を、速やか、かつ完全に実行する必要があり、条件を変更させる値引き交渉の余地はないとのべた。
トルコとの交渉プロセスを2009年末に再検討するとしているEUは、トルコには、改革プロセスやその中身に関してブリュッセルと値引き交渉する余地はなく、要求された改革を速やか、かつ完全に実行する必要があるとしている。欧州委員会のオッリ・レーン拡大担当委員は、「EU加盟プロセスのスピードと程度は、改革プロセスのスピードによる」という考えを述べている。これに基づき、トルコには、一方では「キプロスに関する行き詰まりの打開への協力」、また一方では「キプロス問題を脇におき、改革プロセスに集中すること」が求められている。
メディアと言論の自由といった、交渉開始以前(2004年)からあった問題が、交渉の中で、再び進捗報告書に取り上げらようとしていることは、EUで特に問題視されている。あるEU外交官によれば、トルコのエゲメン・バウシュEU加盟交渉担当官は、EUの担当官らに約束するのではなく、最早、この暗記された宿題(=以前からの課題)の解決のため、タイイプ・エルドアン首相と話さなければならない。EU議会選挙にあわせ、欧州委員会の招待でブリュッセルとドイツを訪れたトルコ人記者団が入手した情報によれば、交渉プロセスの中で直面する問題を解決するために、トルコが踏み出すべき具体的ステップは、以下のものである。
メディアの自由の拡大:EUとトルコの交渉開始条件となる政治的条件の観点で、2004年以前に議論された「出版の自由」問題が、2009年半ばには「メディアの自由」という名称で再び議論項目に上がっている。2004年以前には、新聞記者に対する訴訟に関連して「国家と新聞記者の間に」起きる問題だったが、今回は「政府とメディア組織の間」の問題、そしてインターネット利用の制限という問題に広げて、一緒に取り上げられている。新聞記者のナーディム・シェネル氏に対する刑事裁判で、フラント・ディンク氏殺害事件よりも重い刑が要求されたことは、委員会が検討する最も最近の事件である。委員会は、トルコ刑法(TCK)第301条に基づき、法務大臣の許可により訴訟が起こされる「トルコ性への侮辱」による裁判も、欧州人権裁判所(AİHM)の意見にもとづき評価する。「第301条で進展が得られたが、メディアの自由については未だ不安が残る」と語ったレーン氏は、委員会が10月または11月に発表する進捗報告書で、「メディアの自由」に関して最も多くのページを割くだろうとしている。
宗教の自由:トルコ政府がどちらかと言うと「スカーフ着用の自由」の問題と考えているこの問題に、EU側は、「非ムスリムの自由」の問題を含めている。レーン氏のバチカン訪問の際もこのことが議論となったことは、トルコが、ただEUとの関係ではなく、キリスト教世界との「文明の出会い」という意味でも重要であることを示している。EUの期待する具体的要求は以下の通りである:
*イスタンブルのフェネル・ギリシャ正教会のバルトロメオス(Bartalemos)総主教の地位についての問題。(レーン氏は「全世界教会(ekumenik)」と言い、教会もこのように呼ばれることを望んでいる。)
*マルマラ海の「ヘイベリ島聖職者学校」の開校問題。
*反ユダヤ主義、反キリスト主義的言及の休止問題。(EUはトルコでの非ムスリムらに対する攻撃を「伝道反対」プロパガンダと結び付けている。)
*宗教財産(ワクフ)法の改正。(非ムスリムの宗教財団は、法律の改正にも関わらず、不動産に関し期待した答えを得られなかった。)
憲法改正と政党:EUは、リベラルな憲法を要求している。特に、政党の閉鎖に関して、政府が「暴力の使用、不寛容」の理由以外で政党を閉鎖することを禁じたヴェニス委員会の提案に沿った方向で改正されることを要求している。民主市民党(DTP)についての裁判の経過は、注視されている。政党法においても、大きな変化が望まれている。政党資金の透明化、(国政選挙における)国レベルでの得票率制限の引き下げが要求されている。
労働組合改革:社会保障政策と雇用の条項での交渉は、条件となる労働組合の改革をトルコが実行できなかったため、チェコが議長国である間にはじめられなかった。レーン氏は、3年前に約束した改革が実現していないこと、交渉の遅延はトルコの責任であること、その理由はトルコが意欲的でないこと(の3点)を、その理由としてあげた。
オンブズマン:市民の判定という概念に実効性をもたせ、社会的にも受容させるという要求が強い。EUは倫理的な規範の形成と、公務員がこの規範にそって行動することを要求している。
拷問との闘い:国連拷問禁止条約を批准することが要求されている。最近、治安警察の用いる暴力が増加していることが注目されており、エンギン・チェベル氏が警察署と拘置所で拷問により殺された事件は、進捗報告書で取り上げられる見通しである。
司法の独立:裁判官・検察官高等委員会から政治的要素が一掃されることが、第一の要求である。政府が対策を打つと発表したことは、EUに歓迎された。
クルド問題:EUの担当官らは、トルコにおける「クルド人問題」の存在をはっきりを述べている。レーン氏は、TRT6チャンネルのような肯定的な試みがなされ、クルド人が彼ら自身の言語を話すことについては、より自由な環境ができてきたとはいえ、「クルド人は、文化的自治を求めている」としている。
ギリシャ側に港の利用を認めること:トルコが、関税同盟追加議定書に基づく義務を遂行することを要求している。2006年に、これが2009年までに実行されなければ、加盟交渉について見直しが行われることが明らかにされていた。委員会は、見直しプロセスを開始させ、評議会への意見書を用意する。ただ、EU、トルコ双方の外交官は、「見直しと、(交渉の)打ち切りは違うものだ」と言っている。キプロス問題の議論に関し交渉の席についたトルコが、政治的改革を速やかかに広い範囲で続ければ、委員会の仕事も楽になるだろう、とレーン氏は述べている。
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( 翻訳者:林奈緒子 )
( 記事ID:16679 )