イスタンブル、世界遺産から抹消の可能性も―ユネスコ・レポート
2009年06月24日付 Milliyet 紙
ユネスコ世界遺産委員会の手元に、イスタンブルの都市開発を徹底的に批判する報告書があり、特にスルクレ地区、フォーシーズンズホテルの増築、金角湾での地下鉄建設が批判に晒されている。
スペインのセビリアで開催されているユネスコ世界遺産委員会の定期会合で取り上げられている世界遺産に関する報告書の草案には、スルクレ地区やオスマン時代から残る木造建築の保護の仕方、スルタン・アフメト地区のフォーシーズンズホテルの増築、金角湾での地下鉄のための橋梁建設、イスタンブルの交通網マスタープランなどの事案が、イスタンブルの文化遺産を危険にさらしているという評価が盛り込まれ、政府に対する強い非難が向けられている。2009年4月に視察のためイスタンブルを訪れたユネスコの委員団の報告書が今月30日まで続く定期会合の中で承認されれば、イスタンブルはユネスコの世界文化遺産から除外される危険が表面化する。「スルクレ・プラットフォーム」組織のスポークスマン、ヴィキ・チプルト氏によれば、最も楽観的なシナリオは、委員団が適切な整備のために政府に1年の猶予を与えることだという。
とりわけスルクレ地区について「登録されている建物は取り壊され、行政による風紀改善計画の結果として地元住民が分散し、地域の有形・無形遺産がおびただしく破壊された」と非難するユネスコ委員団は、過去にユネスコが提出した調査報告に対する政府の対応が全く見られないと述べた。
また委員団の報告書では、歴史的地区の整備について規定する第5366号法が、該当地区の保護ではなく破壊につながり、歴史的価値の喪失を生み出したと明言している。そして過去の報告書の内容どおり、この法律の改定を推奨している。
ユネスコは今回の報告書の草案で、イスタンブルの文化遺産をおびやかす開発について項目別に指摘している。報告書は、以下の項目をとりあげている。
■交通網マスタープランはイスタンブル歴史地区に悪影響
委員団は、イスタンブル交通網マスタープランが実施された場合の、イスタンブル歴史地区への悪影響について懸念を示している。とりわけボスフォラスを通過し(アジア側の)ハレムと(ヨーロッパ側の)クムカプをつなぐ地下トンネルがスルタン・アフメト地区のすぐ西を通るようになることから、歴史的半島の中心およびボスフォラスの東側で交通渋滞が起こることは必須だと指摘する。これにより委員団は、この計画が実行に移される前に独自の環境調査報告書を作成するよう政府に求めている。
■フォーシーズンズホテルの増築
「イスタンブル地方裁判所はスルタン・アフメト地区の遺跡の上に建てられたフォーシーズンズホテルの増築を却下した。しかしこの判決によって遺跡で行われていた全ての考古学調査および保護活動も停止した。そのためこの重要な遺跡は長期にわたり悪天候下にさらされる可能性があるという点で、いまだ危機的状況にある。」
■「金角湾での地下鉄用橋梁は断念を」
委員団は、金角湾で計画中で外観はすでに決定済みの新地下鉄用橋梁の建設について、高い塔と吊り橋式の構造やその上につくられる土台が付近の建物、とくにスレイマニエ・モスクの景観に甚大な悪影響を与えると危惧している。委員団は政府に対し、この計画の中止か、代案を検討するよう通達している。
■古い木造建築が危機に
委員団は、イスタンブルにあるオスマン時代からの古い木造建築が危機にあることにも注目している。これらの家屋の大部分が空家となっていることに着目し「しかしながら家屋を保護するための包括的な対策は一切なく、再生のためのプログラムもない。我々は政府に警告を発している」と述べた。
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( 翻訳者:湯澤芙美 )
( 記事ID:16785 )