イラク情勢:都市部からの米軍の撤退
2009年06月30日付 al-Hayat 紙

■ 米軍、郊外の基地へ撤退

2009年06月30日アル・ハヤート紙(イギリス)HP1面

【バグダード:本紙】

マーリキー首相によれば「主権の日」、6年間の占領の果てに米軍は都市部から撤退した。バグダード並びに各県で人々は祝い、政府は軍事パレードを行った。同時に、米軍が郊外の「暫定的」基地へと去った後の空白を埋めるべく、百万の国軍、警察部隊、情報関係要員が配備された。

しかし、そのお祭りムードにも関わらず、「主権の日」は、「覚醒部隊」責任者たち、そしてキルクークのアラブ並びにトルクメンが口にする懸念をぬぐい去れない。国軍への信頼を表明しているマーリキー首相自身でさえ、以前のような宗派間の紛争を復活させるであろうテロへの警戒を呼び掛けた。内相、国防相、治安担当国務相が参加した「危機管理グループ」との会合において、軍事指揮官たちに向けた演説中、首相は、「宗派主義を根絶やしにした後も、我々は目標に向け前進を続ける」、「テロリストたちはイラクの統一とその国民を標的に定めた。(……)彼らは、様々な場所で様々な宗派を狙うテロ行為により、宗派主義を新たによみがえらせようとしている。しかし我々はアッラーのご加護により宗派主義は終結し二度とよみがえらないことを確信する」と述べた。

また演説中、首相は以下を発言した。

「闘争により、国を憂う人々と、無節操に動く者たちは区別された。(……)今日、拘束者たちと彼らの権利について訴える人々がおり、その出所は分かっている。また、そのような声を我々は無視してはいない。しかし、それならなぜ、そのように訴える側は、一般イラク人の犠牲者を省みることなく、彼らをテロの標的とするのか。」

(治安関係者らに対し)「人権を口実に目的を遂げようとする者たちに配慮する必要はない。憲法と法に則して任務を遂行する限り、諸君らは人権を保護しているのである。」

「我々は、イラクの側にたっており、殺害や犯罪行為の側ではない。宗派主義終結の後も、我々は目標に向け前進し続ける。全員が無罪を主張するなら、誰がこの国土の破壊、無辜の民の殺害について責任を負うのか。合意に従い、本日、我々に主権がもたらされた。これが根を下したら、その次は治安を行き渡らせ、復興再建にとりかからなければならない。また、前政権が残した省庁の汚職、金権主義と戦わなければならない。政治汚職こそ最も危険な種類の腐敗である。」

イラク軍高官らが列席した移譲式典では、数々の部隊による軍事パレードが披露された。バグダードでは、アッブード・カンバル中将が米軍指揮官から金の鍵を受け取り、1920年代の建物の上にイラク国旗を掲揚した。

同中将の発言によれば、「首都にあった86の米軍拠点の中で、この建物が、米軍が駐屯した最後の場所」であり、「国民和解政府の勝利と主権の歴史を象徴する、旧防衛省の建物を我々は受け継いだ」。

米軍指揮官は、「本日、我々のイラク側カウンターパートがこの歴史的な場所を受け継ぎ、この先バグダード市民の安全を守っていく」、「ほとんどの米軍は郊外へ撤退するが、要請があればイラク軍を支援するという我々の任務は継続する」と述べ、少数の部隊は残留することを明らかにした。カンバル中将は、自軍への信頼を表明し、「本日に備え準備してきた。我々は治安を脅かす者には断固として対処する」と述べた。都市部からの米軍撤退の公式式典は、本日行われる予定である。

しかし、スンニー地域で治安に協力してきた覚醒部隊は、米軍の都市部撤退により事態が悪化することを懸念している。サフワは、イラク政府から(アルカーイダ側に寝返るのではないかとの)疑いをかけられながら、「カーイダ」と直接向き合う羽目になることが予想されるからである。FP通信は、「米軍がいたから安心できた。テロリストはどちらが強いかを理解しており、米軍がいる限り我々を襲撃することはなかった。しかし、撤退後事態は変わる」とのハーン・バニー・サアドのサフワ要員による発言を伝えている。

「覚醒部隊」指導者たちは、米軍との関係が変わらない見込みで、政府が要請する治安的任務を遂行すると誓約していた。

また、キルクークでは、「アラブ・リスト・ブロック」の長、ムハンマド・ハリール・アル=ジャブーリーが、「ペシュメルガ」、「アサーイシュ」といったクルドの治安部隊を示唆し、同市のアラブ住民は、「米軍撤退後、政府治安部隊が、支配的政党の利益となるよう動くのではないか」との懸念を有していると述べた。アル=ジャブーリーは、「キルクークの治安状態は比較的落ち着いているが、治安関係機関におけるバランスはとれておらず、アラブ系、トルクメン系の住民はその点を危惧している」として、「地域における(民族的)バランスをとるため、政府や米国の介入」を要請している。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:16833 )