レバノン南部を狙うイスラエルの諜報ネットワーク、レバノン軍士官がイスラエルに逃亡
2009年07月09日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ イスラエルがレバノン人と接触、数百万ドルと引き換えにイスラエル兵の情報を要求
■ 複数のレバノン人がイスラエルへ逃亡、うち一人は軍の士官

2009年07月09日クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【ベイルート:本紙サアド・イリヤース記者】

レバノン軍士官のイスラエルへの逃亡は、レバノン国内のイスラエル諜報ネットワークの存在に再び光を当てた。議会選があったために注目が薄れ、治安機関も選挙の安全対策と、その後のベイルートなどでの緊張状態に忙殺されて、諜報ネットワークについての調査は滞っていた。イスラエルとの協力関係の捜査が進んでいるレバノン軍からの逃亡者はこの士官で3人目となる。加えてもうひとり、公安当局を退職した士官も逃亡している。

この脱走した士官はここ一週間、イスラエルの諜報機関とつながりがあることに対する容疑で拘束されることを恐れ、身を隠していた。この士官の階級は少佐で、7月1日に郷里である南部のクレイヤ村を出る際、バアブダーにある自宅に行ってそこに泊まるが、翌日午後には帰るだろうと母親に告げていた。しかし約束の時間になっても戻らず、家族も電話連絡がとれなくなったため、妹がバアブダーの彼の家を訪ねたが、施錠されていた。

このことが軍情報部に伝わったのち、この士官が彼の軍支給の携帯電話を家の中に置いていったことが明らかになった。また彼のBMWは、住んでいた建物の前に駐車されたままだった。

暴力や家捜しの痕跡がまったく見られないことから捜査員は、この男性が自宅から誘拐された可能性を排除するに至った。自宅の正面玄関が普通に施錠されていたのも特に有力な証拠であった。その日以来、家族に彼の居場所についての情報を提供できる者はいなくなった。

この失踪した少佐はレバノン南部で活動するUNIFIL(国連レバノン暫定駐留軍)に参加しているスペイン軍との連絡委員会で任務についていたが、大尉時代におよそ6ヶ月の長期休暇を得て、ボリビアに旅行した。軍務を辞める意向だったが、帰国後に復職し、失踪時まで勤務を続けていたという。また彼は未婚であるにもかかわらず、2000年の解放まで祝祭日などに南部にある故郷を頻繁に訪れていた。さらに彼は1986年に軍事学校を卒業しているが、同期にはイスラエル諜報機関に協力した罪で軍事裁判にかけられたマンスール・ディヤーブ中佐とシャヒード・トゥーミーヤがいた。レバノン軍は昨日水曜日にレバノン市民1名がレバノン・イスラエル国境を越えてイスラエル側に入国したと伝えている。

(中略)

 このほかにもレバノン市民がイスラエルから連絡を受けるという現象が相次いでいる。昨日にはマルジャイーユーンの多くの市民がイスラエルから録音テープの電話連絡を受け、イギリス国内の特定の番号に電話をして、レバノンで失踪したイスラエル兵の情報を提供した人には、1000万ドルの報酬を払うと呼びかけられた。「イスラエル国」との表現で締めくくられたこの録音メッセージによれば、情報提供者の名前は完全に秘匿されるという。またこの電話連絡を受けた電話機には記号が表示され、発信元の番号がわからないようになっていた。

Tweet
シェア


原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:竹内咲貴 )
( 記事ID:16941 )