■ このイスラエル政府との和平は不可能
2009年07月27日付アル・ハヤート紙(イギリス)HPコラム面
【ジハード・アル=ハーゼン】
オバマ大統領は、カイロ訪問とそこでのムスリムに対する演説の埋め合わせとしてイスラエルを訪問するらしい。歴代米政権は、500万のイスラエル人と12億のムスリムを決して平等に扱わないばかりか、アラブとの闘争の度にイスラエルを支持し、安保理で拒否権を行使して世界のその他大勢から同国を庇護してきた。
今月13日月曜日の二つの事例は、そのことをよく説明している。その日、米並びにイスラエル高官らは、ガザ戦争で自国製兵器がどのように使用されたかを調査した英国が、イスラエルへの兵器輸出許可5件を取り消したと発表した。翌日の「ワシントンポスト」紙はこの件詳細を報じており、同紙電子サイトでそれは閲覧できる。
同じく13日、「マアリヴ」は、2010年、米政権がイスラエルへの軍事援助を27億7千5百万ドルに増やすと報じた。10年間で300億ドルに達する軍事援助の一部である。米経済が破綻しかかっているというのに、合衆国はイスラエルの軍事援助を今年の25億5千万ドルから来年は2億ばかり増額するという。
イスラエルの国内的脆弱さ、昨日露呈されたような連立政府崩壊危機による混乱、内輪もめ、恐怖感といった状況によっても、いつかパット・ブキャナンが言ったように、米議会が「イスラエル占領地」であるという事実はぬぐい去れない。
はっきり言うならば、このイスラエル政府との和平は不可能である。その説明は以下の通り。
―アブー・マーゼンは弱い、とイスラエルがいう時、その意味するところは、彼らがパレスチナ内戦を欲しており、その間にパレスチナの街の名をヘブライ語に変えたいという事だ。
―ネタニヤフは、入植を停止しない、入植地を撤廃しないと公言している。さらに彼はイスラエルがゴランから撤退することはないとも発言している。
―ネタニヤフがアッバース大統領に向けた言葉「さあ会合を持とう……」をイスラエル各紙は大きく報じたが、正確な言葉は、「パレスチナ指導者たちに告ぐ。会合を持って、ともに地域復興のための投資家たちを呼び込もうではないか……」であった。このように、経済利益でパレスチナ人を買収し国家設立の事を忘れさせられると、ネタニヤフはまだ信じている。己の人格の卑しさで、他の人々を計ろうとしている。
―しかしながら、ネタニヤフは信頼醸成措置を欲している。あるいは清算をすませたがっている。アメリカは、ネタニヤフの後押しをするためとして、エルアル航空のアラブ領空通行権を、アラブ各国におけるイスラエルの経済利益代表部事務所開設を、そしてイスラエル旅券保持者に対するアラブ諸国への入国査証を要請している。これらの後では、いったい何が残るというのか。私たちの娘を彼らに嫁がせよとでも言うのだろうか。
―ミッチェル米中東特使がイスラエル・シリア和平立案のためのグループを結成し、その団長ファリード・ホープ博士は、解決へ向けた幾つかのステップを提案した。そこには2段階ある。まず、イスラエルがゴランにつくった公園と自然保護区をイスラエルとシリアで共有する。その後、イスラエルは合意ラインまで撤退する。プラン詳細によれば、ゴラン高原はイスラエル人が自由に出入りできる状態のままとなる。ネタニヤフの公式発言、イスラエルはゴランから撤退しない、とぴったり歩調を合わせられる。
そして、和平プロセスを開始前に粉砕するにこれほどうってつけのものはないとでもいうかのように、イスラエル政府は、入植停止とイランの核プログラム問題解決を執拗にリンクさせようとしている。もし、入植を停止してもほんの数カ月、いや数週間だろう。そして西岸からは撤退しない。それどころか先週ネタニヤフ政府は、誓約されていた入植拠点撤廃を夏以降にまで延期すると発表した。和平プロセスもまた延期される。
アブー・マーゼンはイスラエルの提案を受け入れないだろう。入植停止以前に彼は、ネタニヤフとの会合を拒否する。アサド大統領は、ゴランのイスラエルが1967年6月4日ラインまで完全撤退する以外の案を受け入れないだろう。
ここではっきりするのは、ファシスト的イスラエル政府との和平など不可能だという事だ。シリアもパレスチナも提案を拒絶する。すると、米の圧力を背後に付けたイスラエルが無償でアラブの譲歩を引き出すのでは、という懸念が即座に湧き上がる。さらに長期的にみれば、核兵器までもが介在するようになるかもしれない。その時は我々全員が代償を払うのだ。
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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:17048 )