コラム:イスラエルから見た米イラン関係と対イラン攻撃の可能性
2009年08月18日付 Al-Nahar 紙

■ 疑問が疑問を呼ぶ

2009年08月18日付アル=ナハール紙(レバノン)HPコラム面

【アミーン・カンムーリーヤ】

 新しく就任したマイケル・オーレン駐米イスラエル大使は、CNNで人気のあるファリード・ザカリヤ氏の番組で「イスラエルはイラン攻撃を検討する段階にはまだ到っていない。イランに対しては先ず外交ルートを試してみるべきだというオバマ大統領のやり方にイスラエル政府は賛成だ」と語り、同氏を安心させようと試みた。

 もちろん、アメリカ・イスラエル間の険悪な雰囲気を冷まそうとするこの外交的な回答では、ニューズウィーク誌の編集長であり米国で最も評判の高い論客であるザカリヤ氏を納得させることはできなかったし、誰も安心させることはできなかった。ザカリヤ氏も知っており、イスラエル自身もそう言っているように、イスラエルはオバマ氏が選んだ道を嫌々ながら受け入れた。しかし同時に、この政策は失敗するとイスラエルは踏んでいる。そして今のうちから、もしイランが交渉を拒否した場合、米国はどう反応するだろうかと考えているのだ。

 イスラエルは、そのような場合、米国には3つの選択肢があると考えている。
 1.イランに厳しい制裁を課し、包囲網を狭めるというもの。イスラエルはこの選択肢に関しては、成功することはないだろうと見ている。この選択肢にはロシアと中国の支援が不可欠だからだ。その支援がなければ代償は大きく、請求書は高く、誰も成功を保証してはくれない。
 2.冷戦時代の例にならって、核保有国イランを認め、その行動の抑制に努めようという考えが、米政府内で台頭すること。これはイスラエルにとっては苦々しい選択肢である。
 3.軍事的な選択肢。これはイスラエルの願望に最も近く、米国の願望に最も遠いものだ。米政府は今なお、イランを叩くことは必ずしも望ましい結果に繋がらず、イラン体制はより強固となり、崩壊する可能性は減り、核爆弾の製造決定が早まり、中東全体が炎に包まれるかも知れないと考えている。イスラエル政府は、米国とは逆のことを想定している。つまり、イラン国民は今日、サッダーム・フセインにイラン領を侵され、ホメイニー師を中心に団結した頃と同じ状況にはなく、「外科的」で正確かつ決定的な空爆を行うことで少なくとも、数年間は核開発計画を遅らせることができる筈だと、イスラエルは確信しているのだ。またイスラエルは、湾岸諸国の油田を攻撃すればイランの油田も攻撃され、ホルムズ海峡を閉鎖すれば、イラン自身の石油も輸出できなくなることをイランは認識している、と考えている。

 イスラエルのイラン攻撃への情熱は、これに勝るものなき強力さである。しかしまたイスラエルは、「イランの脅威は、どこにあると言えるのか?核兵器か、それとも体制自体か?原子炉を叩くべきか、体制を打倒すべきか?」と自問している。

 さらに疑問は疑問を呼ぶ。「大統領選挙後のイラン国内の混乱は、体制の脆弱性を露呈した。体制の正統性は危機に晒されている。イランの統治者たちが核爆弾の保有に到るのと、体制の崩壊と、どちらが先になるだろうか?」と。

 イスラエルにとって、イランは核兵器保有に向けた企てにおいて相当の段階にまで到達し、ゴールラインまであと一歩のところで足踏みをしている。核兵器を保有した場合に国際社会に対して支払うことになる代償をかわすためだ。しかしイランには今や、知識と技術と、ゴールラインを超えるのに必要なミサイルがある。イラン体制の状況が核兵器保有と結びつくに到った今、体制は権力の保持を確かなものとするために、核兵器保有を急ぐことになるだろうか。イスラエルは一体誰を攻撃すべきなのか?真のゴールに近づく核兵器か、それとも危機が噴出した道半ばの体制か?

 イスラエルは、寝ても覚めてもイランの核を恐れている。ネタニヤフ首相以外の誰が、この鬱陶しい悪夢からイスラエルを解放してくれるのか。しかし、ネタニヤフ氏がそのような決定を敢えてするだろうか。それによって、重大な決定を下したことのない「まっさらな」政治的経歴とは相異なる行動に出るつもりなのだろうか?

 おそらく、ネタニヤフ氏と彼に影のように付き添うイラン専門の補佐官らは、先の疑問に対する答えを否定する新しい疑問を探すことに無駄な時間を費やすことだろう!

Tweet
シェア


原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る

( 記事ID:17254 )