65歳の男、銃を乱射、17人が死傷:動機は「家族の名誉を守るため」
2009年08月25日付 Iran 紙


【事件部:モハンマド・ガムハール】テヘラン州キャラジ県「ガルエ・ハサン・ハーン」地区の男が、怒りに駆られて17人に銃を乱射、現場を血の海にする事件が起きた。容疑者の男は、家族の名誉に関わる問題が事件の動機となったと語った。

 本紙記者の報告によると、事件はシャフリーヴァル月1日〔8月23日〕日曜日19時に起きた。数発の銃声を耳にしたガルエ・ハサン・ハーン地区シャヒード・シャーフバダーギー通りの住民が、慌てて通りに飛び出した。

 銃声は、6階建ての集合住宅の中からのものであることが分かった。地域の住民がこの建物の中に入ると、2階の廊下にザフラーさん(48歳)とその娘サディーゲさん(20歳)の二人が血まみれになって倒れているのを発見した。さらにそこから2メートルほど先で、女性2名と男性1名が瀕死の状態になって倒れていた。

 そしてそこには、このビルの所有者モハンマド(65歳)がカラシニコフ銃を手にして立っていた。男は入ってきた人々に、これ以上中に入るなと要求、すぐさま出て行けと怒りに満ちた様子で叫んだ。

 しかし、24歳の若者パヤームさんがけが人を救助しようと足を中に踏み入れると、男は逆上してパヤームさんを銃殺、これを見た人々はすぐに建物の外に出て、警察に通報した。

 数分後、モハンマドは24戸が入ったこの建物の屋上に上り、外にいた人々に向けて銃を乱射、これにより5歳の子供を含む通行人数名が銃弾を受け負傷した。

警察が出動

 重大事件発生に伴い、治安維持軍の捜査官、情報員、及びレスキュー隊員らは現場に急行、建物を包囲した。出動した部隊の一部はビル屋上に向かい、銃を乱射している男にそれと気づかれぬよう接近、容疑者を取り押さえることに成功した。逮捕された容疑者からは、コルト製拳銃2丁、カラシニコフ銃1丁、薬きょう2千発が発見された。

負傷者を病院に搬送

 流血の惨劇が幕を下ろすのと同時に、付近の住人は救急隊員らと協力して、負傷した通行人13名をシャヒード・ファイヤーズバフシュ第2病院に搬送した。しかしこのうちプーリヤー君(12歳)、及びアミールホセイン君(10歳)の二人は負傷の程度がひどく、命を落とした。

4名の遺体を回収

 他方、警察の捜査により、ザフラーさん(殺害犯の第一婦人)やサディーゲさん(殺害犯の娘)をはじめとする4名が遺体として発見された。テヘラン州治安維持軍のアクバルシャーヒー総司令官によると、今回の惨劇で死亡したのは、アミールホセイン君、プーリヤー君、パヤームさん、ファーテメさん(15歳)、ザフラーさん、サディーゲさんの6名で、ファルシャードさん(15歳)、サーデグさん(24歳)、モハンマドさん(20歳)、アリーさん(16歳)、エスマーイールさん(30歳)、パルヴィーズさん(33歳)、サーデグさん(14歳)、ヴァリーさん(33歳)、サイードさん(13歳)、アッバースさん(27歳)、サキーネさん(25歳)の11名が負傷した。

目撃者の証言

 事件を目撃した一人は、今回の事件に関し本紙記者に次のように語っている。
午後7時頃、ちょうど断食明けの食事であるエフタールの支度をしていたとき、銃声と数名の女性の叫び声が地域の静寂を破るように聞こえてきました。すぐに外に出ました。すると、この建物に住むファーテメが恐怖に満ちた様子で助けを求めているのを目にしました。家族の父親モハンマドが怒りに駆られて、カラシニコフで銃弾を乱射していました。銃弾の一つがその建物に住んでいたファーテメという若い娘さんとその父親に当たり、倒れました。襲撃犯の男はそれから、第一婦人のザフラーとその娘サキーネとサディーゲに銃を発射して、ケガを負わせました。

 また別の証言者は、本紙記者に次のように語っている。
事件現場の近くにレンタルビデオ屋があり、そこで子供たちがコンピューターゲームに興じていました。銃声を聞いたモハンマドという名の子供が、いかなる運命が待ち受けているのか何も知らずに店の外に出ると、怒りに駆られた男の発した銃弾に当たってしまいました。

私の息子はまだ12歳でした

 男の凶弾によって命を落としたプーリヤー君(12歳)の母親は、本紙記者に次のように語った。
息子はまだ、12回しか春を経験したことがなかったんです。犯罪者の男が、どんな罪があって息子を殺害したのか、理解できません。プーリヤーは事件当日、友達と遊びに行くと言って家を出ました。遅くなっても帰ってこないので、息子を探しに行きました。方々を探した挙げ句、困り果てた私は交番に行きました。すると警察官が、負傷者の中に息子がいるかも知れないと言うんです。すぐにファイヤーズバフシュ病院に駆けつけました。朝3時、〔病院関係者から〕プーリヤーの脇腹に銃弾が当たった、ケガの度合いがひどく、命を落としたと言われました。

 また、息子の死を聞いて茫然自失状態のアミールホセイン君(10歳)の母親は、本紙記者に「息子はいつも学校で1番でした。優秀児童として、息子の写真が学校の壁に飾られていました。でも息子はもういません。家の中は、そんな息子の写真で一杯です」と述べた。

殺害犯の動機

 殺害犯モハンマドは、ガルエ・ハサン・ハーン裁判所第103支部長のヴァリーアフディー判事によって捜査課に移送され、取り調べを受けた。男は犯行を認め、次のように供述した。
しばらく前から、妻が他の男たちと密通していたことに気がついていた。そこで、連中に復讐することを決意した。建物の住人の中に、独身の友人たちを家に呼んでは、〔パーティーを開いている〕者がいた。私の娘や妻も、そこにしばしば通っていた。事件当日、見知らぬ独身者どもが建物の中に出入りしているのを目撃した。私は自制心を失い、部屋に帰って銃を手にした。連中を見かけると、彼らに発砲した。ちょうどそのとき、妻娘と顔が合った。私は妻娘にも銃口を向け、銃弾を浴びせた。数分後、数名の地区住民が建物の中に入ってきた。出て行くように要求した。しかし出て行かなかった。そこで私は彼らにも発砲した。その後屋上に行って、そこから通りにいる人々にめがけて発砲した。

 容疑者の取り調べを終えると、ヴァリーアフディー判事はシャフリヤール警察の捜査官らによるさらなる取り調べのために、同容疑者の留置を命じた。同判事は、本紙記者に「殺害犯は、名誉〔を回復する〕ために今回の事件を起こしたと主張している。本件に関する捜査は今後も続けられる。この事件では11名が負傷し、医師らによるとそのうち2名は重体だとのことだ」と述べた。

 同判事はさらに、容疑者の精神状態に関して「モハンマドに精神異常はまったく見られない」と述べた。

 取り調べの中で、容疑者は以前からの動機にもとづき、計画を立てて今回の犯行に及んだと供述しているという。同容疑者はまた、もし釈放されれば、〔今回殺害することのできなかった〕別の4人も殺害すると述べているとのことだ。

 ヴァリーアフディー判事はその上で、「容疑者は取り調べの中で、今回の事件で1200発の銃弾を発射したと主張している」と明かした。

殺害犯とのインタビュー

 本紙記者の取材を受けるために別室に移されたモハンマドは、胸にケガを負ったため、その衣服には血が滲んでいた。彼は極めて沈着冷静な様子だった。イラン紙記者の質問に答えることに対して、抵抗するそぶりは全く見せなかった。

 モハンマドは今回の血の惨劇について、「私は自らの名誉を守るために、今回の殺人に及んだ。裁判所がどんな罰を科そうと、私はそれを受ける覚悟がある」と語った。

Q:妻の密通は、どうして分かったのか?
A:妻や娘の態度に不信感を抱いた。このことについて、何度か彼女たちに注意をした。しかしまったく聞き入れようとしなかった。隣人の男の息子は、いつも独身の友人たちを家に呼んでいた。私はその男にも、そのことで抗議した。事件当日も、男と最後の話をし、息子の行動をやめさせるよう求めた。しかし男は私の言うことを認めようとしなかった。私は激怒した。〔建物の〕管理室に行き、銃を手に取った‥‥。

Q:どうして警察に訴え出なかったのか?
A:私の主張を証明する証拠がなかったからだ。

Q:家族の殺害計画をいつから立てていたのか?
A:今年の初めに、〔妻娘の密通に〕確信を持った。そこで、計画を立てた。

Q:銃器はどこで手に入れたのか?
A:カラシニコフ銃は64年〔1985年〕、〔イラン・イラク戦争の〕戦地から盗み出し、家に持ち帰ったものだ。拳銃2丁は、今年の正月〔=3月21日〕、計画を立てた後、薬きょう2千発と一緒に購入した。

Q:今回の事件までの間、これらの銃を使ったか?
A:何度か近くの沙漠で、空中に向けて試し撃ちをした。ほとんどの場合、コルト銃を使った。

Q:なぜ子供まで狙ったのか?
A:屋上に上り、標的を定めることもなく、銃を撃ち始めた。付近の住人には、向こうに行くよう要求した。しかし彼らは私のことばを真剣に受け止めず、そこに突っ立ったままだった。

Q:子供は何人いるのか?
A:息子が10人、娘が4人だ。第二婦人は一時婚だ。

Q:いま後悔の念はあるか?
A:ないね!裁判所がどんな判決を出そうと、すぐに執行してくれることを期待している。

Q:どうしてケガをしたのか?
A:発砲した銃弾の一つが、跳ね返ってきて、胸に当たった。

Q:警官たちと争いになったか?
A:いいや。住人たちに向けて発砲しているとき、弾が銃の中で詰まってしまった。弾を取り出そうとしていたときに、警官に捕まった。

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:17303 )