コラム:エジプト文化相、ユネスコ事務局長に立候補
2009年09月04日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ ユネスコ事務局長選とエジプト候補の勝機
■ クドゥスの見方
2009年09月04日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面
来る月曜に開始されるユネスコ新事務局長選挙で、多くのアラブならびにアフリカ諸国から支援を得たエジプト文化相ファールーク・ホスニー氏の当選が期待されている。
エジプト政府は自国候補の支援に全力を挙げており、ムバーラク大統領自らネタニヤフ首相に働きかけ、複数のユダヤ団体が行う反エジプト候補キャンペーン停止に介入してほしい、イスラエルは反対派の後押しをしないように等、要請した。ネタニヤフがこの要請に応じたかどうかは明らかではない。
何故エジプト政府がホスニー氏の立候補にそこまでこだわり、上述のような手段で自国の尊厳を貶めるのか、理解しがたい。エジプトは、こんなポストより偉大な国ではないか。もしその国民がそのポストに就いたとしても、エジプトに大きく貢献するわけでもないだろう。当該候補は20年近く現職に就いているが、国内文化面での業績は限られている、もしくは平均的である。
ホスニー氏最大の業績と数えられるのは、イスラエルとの文化的国交正常化に反対し、この点では過激な立場をとっていることだ。彼は、エジプト文化省の催し物、映画祭、演劇祭、ブックフェアなどにイスラエルの参加を許可したことはない。そして重要なことに、彼自身はイスラエル訪問を拒否している。
このため、彼はユダヤ系による猛烈なイメージ歪曲キャンペーンにさらされ、選挙を前にして困難な状況に置かれている。これが、対抗馬のオーストリアEU外交代表である女性候補を有利にしている。
ノーベル平和賞受賞者エリー・フイジルを筆頭に、イスラエルに近いフランス知識人たちは、未だホスニー氏への反対キャンペーンを繰り出していおり、彼が「うわべを飾った」発言で反ユダヤ的姿勢を示していると主張する。また、ナチス追跡を任とするサイモン・ウィーゼンタール・センターは、ホスニー氏がホロコースト否定者の一人をカイロへ招へいした嫌疑をかけている。
ホスニー氏は、エジプトの図書館にイスラエルの書籍は存在せず、もしあったとしたら自らの手で燃やすだろうと述べた事につき、公式に謝罪した。仏『ル・モンド』紙は、この謝罪を広く報じ、もし彼が当選しユネスコ事務局長となったらイスラエルを訪問するだろうと書いている。しかし、このような謝罪も恥知らずなおべんちゃらも、ユダヤ系その他からの強い反対を覆すことはできなかった。反エジプト候補キャンペーンはまだ続いており、このところは一層し烈を極めている。
しかし、ホスニー氏の勝機は未だある。その敗北は、彼一人のみならず祖国エジプトの敗北となるからである。ムバーラク大統領はこの件を優先するとの意向を表明し、アラブ首脳に加え、ネタニヤフ、そしてサルコジ仏大統領はじめ欧州首脳らが介入しているのだ。
国際的ポストにアラブ候補が就いた場合のこれまでの我々の経験は、決して誇れるものではない。ガーリー事務総長時代、国連はイラクに対し封鎖を強化するという最悪の決議を行った。エルバラダイIAEA局長も、その初期に、イラクについてひどい決議を発した。イスラエルの核兵器や国際査察の必要性を問題としたのは、彼の任期における最後の2年間のみであった。
ホスニー氏がもし当選すればこのようなイメージを変えてくれることが望まれる。また、アラブイ・イスラーム文化を広め、それを正しく評価することにより、彼自身の過去の発言を修正してくれるように。何よりも重要なのは、アラブ・アフリカの候補と言うならば、エジプト主義の枠から一歩外へ出ることだ。
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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:17366 )