鳩山幸、日本のファーストレディーの型破りなプロフィール
2009年09月11日付 Al-Ahram 紙
■ 鳩山幸、日本のファーストレディーの型破りなプロフィール
2009年09月11日付アル・アハラーム紙(エジプト)HP特派員面
【イーマーン・アーリフ】
日本の新首相、鳩山由紀夫が新政権の組閣を終えようとしている中、いまだ定まらないのは彼の妻、幸夫人がこれから果たす役割である。その理由は、政治家の妻の役割に枠をはめようとする日本の政治スタイルの決まりごとではなく、これまでとは外見も中身も異なる幸夫人の特異なキャラクターにある。
ファーストレディーたちが夫を支える妻としての役割と、公人としての存在の間のバランスをとるべく努力してきたのに対し、幸夫人は誰も歩んだことのない第三の道を選択しようとしている。それは愉快であると同時に奇異な彼女の経歴についての、率直でオープンな語りである。
66歳になる幸夫人のバイタリティと際だつ存在感の背景には、彼女の特異な人生経験と職業経験があると言えよう。彼女は日本占領下の上海に移住していた日本人家族のもとで誕生し、1歳の時に家族とともに帰国した。18歳で宝塚歌劇団でのキャリアを開始したが、この劇団は、踊り・歌・女性向けのロマンチックな歌劇を提供する女性芸術家集団である。20歳になると合衆国に移住し、日本食レストランのオーナーであった最初の日本人の夫とともにカリフォルニア州に住んだ。その後現在の夫となる由起夫氏と出会う。由起夫氏は高名な政治家一族の出身で、スタンフォード大学でエンジニアリングを学んでいた。彼女は離婚の後、1975年に由起夫氏と結婚したが、この結婚は当時、彼の一族の政治的・社会的な立場から見て、破滅的な結婚と見なされた。
彼女を知る人は皆、一人の人間が兼ね備えていることは稀なほどの多彩な才能や能力を有する女性であると指摘する。かつて女優・歌手であったのみならず、ファッションデザイナー、料理本の著者、著名なテレビタレント、また空飛ぶ円盤や南米の太陽信仰者による失われた文明といったテーマを扱うことで有名な日本の雑誌『ムー』誌のコラムライターでもある。そこで彼女はいつもスピリチュアルな話題を語り、自分のことを暮らしとモードのスペシャリストであると紹介している。
より重要な点は、彼女の大胆さであろう。その際たる例は、彼女の普通でない意見を公言してはばからないところや、トーク番組でゲストと議論をたたかわせるところにあるだろう。夫の運勢が上昇し始めた今年の初め以来、彼女はトーク番組の常連ゲストになった。そうした番組で彼女はなんと、アメリカ人の有名俳優トム・クルーズと前世で出会ったと語ったのだ。前世ではトム・クルーズは日本人で、彼に会えば、彼は自分のことがわかるはずだと言い張った。二人は前世で友達だったからだというのだ。さらに彼女は彼と映画で共演するという夢を語ったばかりか、もしそれが実現すればオスカー賞をもらえると予言したのである。
またおそらく、幸が語った最も驚くべき話は、彼女が昨年出版した著書『私が出あった世にも不思議な出来事』に書かれているものだろう。この本には超常体験に関する数人の有名人との対話がおさめられているが、その中で彼女は、合衆国に住んでいた頃の個人的体験を語っており、それは、彼女が肉体を離れて精神のみで地球外生物とともに金星に行ったというものであった。彼女は、金星は緑に溢れた美しい場所であったと描写している。
一方、彼女は日々の活動に必要なエネルギーを得るため、比喩的に太陽の一部を食べているという。彼女が言うには、毎朝目を閉じて、太陽の一部をちぎって食べるとイメージすると、バイタリティにあふれた常ならぬ感覚が満ちてくるという。さらに彼女は、最近は夫もこの方法に従うようになったと述べた。この考えと行動の奇妙さとおかしさにもかかわらず、夫は彼女の行動に困惑や恥ずかしさを全く感じていないと言うことは注目に値しよう。それどころか反対に、彼は彼女とそのバイタリティを誇りに思っているのである。これは他の日本国民にも当てはまる。何はともあれ彼女はメディアの顔として発言し、勇気を与えているのである。
「金星旅行とは彼女の夫にまったくお似合いだ」と笑う者もいる。夫は丸く突き出た目をしているために、一部で「宇宙人」と呼ばれているためだ。しかし、欧米の一部のメディア で彼女のキャラクターが議論や物笑いの種になっても、そうしたことや彼女の知名度に対する日本人の反応は極めて肯定的だった。それは彼女が日本の政治家の妻についてのよく知られたルールを打ち壊し、今や国内のみならず国際的なメディア現象になったからだ。
それ以上に重要なのは、彼女の大胆さや率直さについての話題が、日本人が新しい首相に望んでいるものの指針となっている点だ。彼女自身、夫が勝利したのは日本社会が変革を望んでいる最大の証であり、自分がその一部であることを嬉しく思うと語ったことがあった。何人かのアナリストが言うには、彼女はすでに古くから日本人女性全般、中でも政治家の妻についてもたれてきた固定観念を壊すことに成功し、たとえわずかにでも束縛や制限から解放されたいと望む社会のシンボルとなった。それゆえ彼女は物笑いではなく、むしろ賞賛に値するのだ。
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( 翻訳者:勝畑冬実 )
( 記事ID:17452 )