■ オバマが無視しようとも人種差別は存在する
2009年09月28日付アル・ハヤート紙(イギリス)HPコラム面
【ジハード・アル=ハーゼン】
メディアの集中度は、ニュースの重要性を必ずしも反映するわけではない。マイケル・ジャクソンの死亡があらゆるメディアで報じられていた数週間の間、戦争もテロも経済危機も継続してあったのだ。一方、911やイラク侵攻は、報じられて当然その要請のあるニュースだろう。オバマ大統領の一週間は、国連演説に始まり、アッバース・ネタニヤフ会談、ピッツバーグ・サミットと盛りだくさんだった。この合間に各国元首や政府要人と会談している。しかしこの2週間ばかり、報道される量的に圧倒的なニュースは、黒人大統領に対する合衆国内の人種差別にかんするものである。
合衆国における黒人差別は、市民権運動が行われた60年代に政治家たちが意識し始めたが、今日に至るまで続いている。しかしこれは、パレスチナ・イスラエル闘争、大量破壊兵器、テロ、世界金融危機、貧困と病といった課題以上に重要であるとはみなされていない。
大統領選の期間中、ヒラリーとビル・クリントンが、オバマは黒人大統領、つまり黒人のための大統領となるだろうと主張したにもかかわらず、合衆国社会での人種差別に関する議論は限られていた。それが今月12日、連邦議会の委員会でスピーチを行ったオバマに、サウス・カロライナ州議員のジョー・ウィルソンが「嘘つき」と野次を飛ばしたのをきっかけとして、紛糾するようになった。
ウィルソンは大統領に謝罪し、それで済むはずだったところへ、彼と同じく南部出身のジミー・カーターが、この件をかき回す発言をした。ウィルソン議員は、議題であった公衆衛生プログラムについてというよりは、大統領が黒人であるが故の明確な敵意を表明したものであり、南部としてはこれを支持できない旨カーターは述べた。
齢80を超えるカーターは、恐れるものなく失うものも持たない。彼は、大勢が秘密にしておきたがったことをはっきり述べた。つまり、医療保険、これは貧困層のためのもので、オバマがそれから益することは何もないのだが、それに反対するデモが起きた時、約7万の極右がデモ隊に加わり、ヒトラー髭やゲバラ帽を加えたオバマの写真を掲げるだけでは飽き足らず、(米)南部連合国旗まで担ぎ出していたという事を。南部連合は、奴隷制を擁護するため北部と戦争を起こし、市民権運動に今日まで抵抗する一派である。
オバマは、アメリカの黒人大統領ではなく、アメリカの大統領とみなされることを欲している。先週日曜も彼は、右翼が自分を扱う人種差別的やり方を無視しようとした。テレビ、新聞で5件のインタビューを行った彼は、肌の色故に自分を好まない人々もいるが、現在の問題は、米国人が政府を信頼せず、常に日常生活における政府の役割を矮小化したがる事だと述べた。それから、自分は大統領になる前も黒人だったとおどけてみせた。
それは事実だろう。しかしながら、オバマが連日、その肌の色故の人種差別的キャンペーンにさらされ右翼に攻撃されていることを否定はできない。スクールバスで黒人の子が白人の子を殴った時、見出しは「アメリカでは白人は殴られる」だった。そして、大統領は黒人の子を擁護するだろうという悪意ある噂が流れる。
インターネットも含むメディアに存在する何千人もの差別主義者たちが、未だにオバマは合衆国生まれではないと言いふらしている。ケニア生まれだとか、ハワイで出生証明を偽造しただとか、あるいは証明書すらもたないなどと。
バラク・オバマの選出は、「人種差別以後の政治」を体現したのではなかったか。しかし、右翼による彼の扱いをみると、人種差別は根強くはびこっていると言える。黒人は、黒人以外の人々にとっては大統領としてふさわしくない、白人のアメリカ人は黒人の海に囲まれ孤立する、などという人々がいるのだ。
オバマ大統領は一日に30通の殺人脅迫状を受け取るそうだ。そのうち三分の一が人種差別的脅迫である。他方、数千の米国人の命を失う戦争に突入したブッシュ大統領は、日に7~8通の脅迫ですんでいたという。
オバマがいかに無視しようとも、このように人種差別は存在する。
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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:17548 )