メダルが欲しい!:ロンドン五輪の女子ボクシング参加をめぐり論争
2009年10月11日付 Jam-e Jam 紙


【運動部】2012年ロンドン五輪で初めて、女子ボクサーがリングの上に上がることになっている。この競技から生まれるメダル数が相当数にのぼることから、イラン・ボクシング連盟の会長は、我が国に女子ボクシング競技を立ち上げる意向であることを明らかにしている。

 エジプトやアフガニスタンといった一部のイスラーム諸国でも、すでに女子ボクシングの立ち上げが予定されている。ナショナル・オリンピック委員会実行部会の委員で、ボクシング連盟会長のアフマド・ナーテグヌーリー氏は、「適当なウェアが見つかり次第、女子ボクシング・チームの結成を始めたい。これまで女子ボクシング・ナショナルチームが結成されてこなかったのは、適当なデザインのウェアがなかったからにすぎないからだ」と語る。

 しかし文化的・法的観点から、女子ボクシング・チームの結成はイランで可能なのであろうか?この疑問に対し、ボクシング連盟書記のファリーボルズ・シャムス氏は次のように答えている。

 「残念なことに、ボクシングは乱暴なスポーツだという理解が存在する。しかし、ボクシングよりずっと乱暴なスポーツもある。丈夫なヘッドギア、安全で基準を満たしたグローブなどがあるおかげで、上半身ならどこをヒットしてもよいという規定も相まって、〔アマチュアの〕ボクサーたちはあまり顔面をヒットしようとしない。そのため、ボクシングはボクサーへの危険性があまりない競技なのだ。また法的観点からも、イランではボクシングは決して違法なスポーツではない。ボクシング連盟という機関が存在しているのは、その何よりの証拠だ。だから、もし〔国の〕スポーツ当局者がこの件について何らかの結論に達すれば、私たちはイスラームの規定を守りながら、〔女子ボクシング・チーム結成に向けた〕作業を始める用意がある」。

「ボクシングは女性の健康を損なう」

 他方、元体育庁女性スポーツ担当次官のターヘレ・ターヘリヤーン女史は、このことについて次のように指摘する。「女子スポーツについて議論する場合は、まず女性に関係するすべての条件を考慮に入れるべきだろう。肉体的・精神的条件に始まり、社会の文化的条件まで、様々な条件を考慮して、その上で『このようなことは果たして適切なことなのか』を議論すべきだ」。

 女子スポーツの専門家である同氏は、ボクシングはハードなスポーツであり、女性の精神とも調和しないという。「女子スポーツについて強調されるべき重要な点は、そのスポーツが社会の半分を占める人々の肉体的健康に、どのような影響があるのかということだ。実際、ボクシングは危険なスポーツであると考えられている。このスポーツは、女性の健康を危険に晒すものだ。他方、このスポーツはムスリム女性の精神を変えてしまうことにもなりかねない。イスラームでは、〔女性に対して〕愛情が強調され、暴力は否定的に捉えられている」。

目的をはっきりさせるべき

 他方、女子スポーツの専門家であるファリーデ・ネイスィヤーン女史は、女子ボクシング立ち上げに対する現在の文化的状況について、次のように述べている。「一見したところ、ボクシングは危険なスポーツとの認識が広まっているが、研究が示すところでは、ボクシングよりももっと危険であるにも拘わらず、イランでも行われているスポーツはたくさんある。女子ボクシングをめぐる文化的状況を考える前に、まずはその〔女子ボクシング・チーム立ち上げの〕目的と動機をはっきりさせることが必要だろう。単に量的な観点から、女性が行うスポーツの種類を増やしたいだけなのか、それとも〔女子ボクシングの〕王者が欲しいとか一般に普及させたいといった狙いがあるのか、ということだ」。

〔中略〕

 ファリーデ・ネイスィヤーン女史は、かつて女子サッカーチームや女子レスリングチームの立ち上げの際にも、同じような議論が起きたことについて指摘した上で、次のように述べている。「すでに女子サッカーチームが立ち上げられ、発展を続けている。このような状況を見るにつけ、〔サッカーは女性に不向きだといった〕反対派の意見に根拠がなかったことが、すでに明らかとなっている。15年前にも、技術的な理由から〔女子〕レスリングに反対した人も一部にはいたが、今やこうした論理は間違っていたことが証明されている。ボクシングについても、同じような状況が起きている。何をするにせよ、まずは専門家による問題の多面的で正確な検討が、〔体育〕庁やオリンピック委員会、ボクシング連盟を通じて行われる必要がある。この問題について摩擦をなるべく避けるためにも、それが重要だ」。

 ところで、女性自身はボクサーになることにどれだけ関心を持つものなのだろうか?この疑問について、連盟のシャムス書記は次のように答えている。「国全体からいえば、ポテンシャルはあるし、興味を持つ人もいる。ただまずは、準備作業から始めなければならない」。

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:17650 )