8件連続復讐殺人事件で新たな証言:本当に「復讐劇」だったのか?
2009年11月08日付 Iran 紙
左上から右に、ハーシェム(8人目の被害者)、ファルハード(3人目)、ダーヴード(4人目)、マーシャッラー(1人目)、ハサン(2人目)、シェハーブ(5人目)、レザー(6人目)、シャリーフ(7人目)
左上から右に、ハーシェム(8人目の被害者)、ファルハード(3人目)、ダーヴード(4人目)、マーシャッラー(1人目)、ハサン(2人目)、シェハーブ(5人目)、レザー(6人目)、シャリーフ(7人目)

【事件部】小学校教師、事件担当の特別判事、及び事件の被害者家族は本紙記者との独占インタビューの中で、カーゼルーン県で起きた今回の事件の容疑者ならびに共犯者たちの生活状況や学校での様子、家庭環境について新たな事実を証言、恐るべき凶悪事件のもう一つの側面を詳らかにした。モルタザー容疑者の小学校時代の教師は、「容疑者とその家族のことについては、何年も前からよく知っている」と語った。

私が知る限り、モルタザーとその兄弟たちは様々な犯罪行為に手を染めていました。多くのケースで、兄弟たちは犯罪で協力し合っていました。

最近でも、今回の事件で最後の犠牲者となったハーシェム・カールギャルをはじめ、地元の住民は道に外れた行為はやめるよう、彼らに諭していました。けれども、残念なことにこうした忠告は効果がありませんでした。というのも、彼ら兄弟は違法な行為を働くことでどんな願いも叶えられると考えていたからです。

彼らは人さらいや窃盗など、数々の犯罪に手を染め、大金を手に入れていました。そのお金で、彼らは家や車、ケナーレ・タフテ郡やその他の町にある地所などを大量に取得・購入していました。彼らはこうした財産を手放すまいと、登記簿などを友人名義に付け替えたりしていました。こうした行為は、最初の犯罪が犯される85年〔2006年〕まで続けられていました。

 小学校教師のこの人物はこう述べ、モルタザー容疑者とその共犯者たちによる連続殺人の動機について、次のように語った。
容疑者は父親が殺されたことを理由に、最初の被害者〔=マーシャッラー〕を殺害したようですが、被害者家族から聞いたところでは、こうした理由はまったく不当だとのことです。というのも、これまでのところモルタザーの父親の遺体は見つかっておらず、彼が本当に殺されたのか、確たることはまったく言えないからです。

 この人物は二番目の殺人の動機についても、次のように述べている。
容疑者らの母親は、二番目の犠牲者となったハサンの死の数日前、ハサンに会いに行き、夫がかつて預けていた10頭の羊と武器1丁を返すよう要求しました。ところが、ハサンはそんなものは預かっていないと突っぱね、悪態をついたそうです。モルタザーとその兄弟たちがハサンに復讐しようと考えたのは、こうした背景があったからです。その後、モルタザーは夜中にハサンの自宅に行き、彼に銃弾を浴びせることになりました。

 この人物はさらに次のように続ける。
モルタザーはシェハーブとダーヴードが自分を殺そうとしているとの情報を、情報屋からの密告で知り、彼のことばを借りれば、先手を打つ形で彼らを殺し、遺体をチャーレ・キャフタリーと呼ばれる場所に埋めました。その後、ダーヴードの兄弟であるシャリーフのもとを訪れ、彼も殺しました。

シャリーフは時に悪事を働くことがあり、最近のケースでは3年間刑務所に入れられていました。刑期を終えて釈放されると、シャリーフは複数回にわたって、兄弟のダーヴードをどこに埋めたのか教えろと、モルタザーに迫ったようです。モルタザーは犯罪の露見を恐れて、シャリーフも銃殺してしまいました。

 この人物はまた、〔6人目の被害者〕レザー・アクバリー殺害について、次のように証言する。
レザーはケナーレ・タフテ郡の周辺にある、ある村の住民でした。人々の話によれば、何年も前からモルタザーの家族はこの村に通い、同一家の息子の嫁にと、この村のとある娘さんのところに求婚に行っていたそうです。しかしこの村の名士だったレザーは、この娘の父親に、モルタザー一家とは付き合わない方がよいと忠告していました。

ところが娘さんの父親はたいそう単純な人で、モルタザーとその兄弟に、レザーの忠告を話してしまいました。こうしたことが、レザーに対する容疑者たちの深い恨みに繋がっていったのです。結局、レザーはある椰子園で、手榴弾を投げ込まれて殺されてしまいました。

ハーシェムも、地元の名士でした。いつもモルタザー一家に資金的な援助をしてきました。ところが残念なことに、モルタザーの母親はいつも「夫はハーシェムに殺されたのよ。自分の罪を覆い隠すために、私たちに資金援助なんかしているのよ」などと、大っぴらに触れ回っていました。こうしたことが、この母親の子供たちの心に復讐の種を蒔くことになったのです。

住民の話では、事件の前にも、モルタザーとその兄弟たちはハーシェムを強請ろうとしていたそうです。しかしそれがかなわなかったために、結局ハーシェムはモルタザーの手にかかって殺されてしまいました。

モルタザーは通っていた男子校で、成績はトップクラスのとても頭の良い子供でした。しかし大きくなるにつれて、怨嗟と憎しみの感情が彼の中で強くなっていきました。彼は退学すると、悪事に手を出すようになりました。彼は自分の目的を成し遂げるために、少なくとも30人もの情報屋・密告者を雇っていました。

こうしたことから、犯罪発生後、それがモルタザーとその兄弟の仕業であることを、住民だれもが分かっていました。しかし〔警察に密告すれば〕それがどんな結果を生むのか、怖くて誰も話せませんでした。司法当局の前ですら、〔真実を〕話そうとはしませんでした。

 この人物は、容疑者らによるおびただしい数の犯罪の本当の原因は、容疑者らの家庭環境の混乱にあると指摘した。

8件の殺人に対するモルタザーの供述

 カーゼルーン県ケナーレ・タフテ郡で起きた連続殺人事件の捜査特別判事は、容疑者の供述に一部曖昧な点があることを指摘した上で、本紙記者に「モルタザーは、殺人はすべて単独で行ったものだと主張しているが、しかし容疑者は人心を惑わし、共犯者たちの罪を軽くするために、このような〔虚偽の〕供述をしているように思える。こうしたことから、真実が明らかになるまで、警察による司法捜査は今後も続けられる予定だ」と述べた。

 ハミード・ケシュトカール判事はまた、〔‥‥〕「〔‥‥〕捜査の結果、モルタザー容疑者は精神的な病に罹っていないばかりか、彼は極めて高い知能を持った人物であることが判明している。それゆえ、彼に心理テストを行う必要はない。容疑者が通っていた高校の関係者からの事情聴取で、容疑者は学校では物静かでおとなしい性格の生徒であったが、時が経るにつれ、兄弟たちと悪事を働くようになり、そのために高校1年で退学を余儀なくされたことが分かっている」と語った。

〔中略〕

 同判事は続けて、「現在、〔遺体が〕発見されていない殺人事件がまだ数件あり、これらの一部についても、今後捜査が行われる予定だ。そうすることで、モルタザーによる殺人事件との関連性があるのかどうか、はっきりするだろう」と語った。

〔後略〕

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:17846 )