スペインの判事、ベール着用を理由にモロッコ系女性弁護士を法廷から追い出す
2009年11月12日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ スペインで判事がモロッコ系の女性弁護士を法廷から追い出す
■ 理由は彼女がベールをつけていたから
2009年11月12日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面
【マドリード:本紙フセイン・マジュドゥービー】
最近、ヒジャーブ〔イスラーム教徒の女性が被るベール〕の話題がスペインのマスコミを賑わしている。騒ぎはある判事がモロッコ系のスペイン人女性弁護士を、ヒジャーブをつけていたことを理由に法廷から追い出したことから始まった。また同じ頃、複数のモロッコ系男性があるモロッコ系女性に、ヒジャーブをつけていなかったことを理由に暴行を加えたというニュースがスペインの世論を沸きたたせていたが、最近になってそのニュースの信憑性が疑われている。
昨日になってマスコミと政界を巻き込む騒ぎになったこの事件の発端は、先月末にさかのぼる。女性弁護士のズバイダ・バリーク・イディーディーさんは、テロ事件担当国家裁判所で、宗教テロに関する事案の弁護を担当することになっていた。ところが彼女を目にした裁判長のハビエル・ベルモデス判事は、ヒジャーブを着けていることを口実に、彼女を追い出したのである。彼女が納得のいく説明を要求すると、判事は彼女に向かって「私はこの議場をコントロールしており、自分で好きな決定を下す」と怒鳴ったという。
ズバイダ弁護士は、この決定は判事による権力の濫用だとして、最高司法評議会に不服を申し立てた上で、こう問いかけた。ヒジャーブは議場の尊重とは相容れないのか? ヒジャーブをつけていることが彼女の職業の遂行の妨げになるのか? 昨日水曜日のエル・パイース紙への声明でズバイダ氏は、弁護士の服装規定ではヒジャーブは禁じられておらず、判事の決定は根本的に、個人の判断であることは明らかだと主張した。彼女は他の裁判所でいくつもの公判に臨んできたが、どの判事も彼女の業務を禁じなかったという。
このニュースはマスコミに旋風を巻き起こし、エル・パイース紙に昨日の昼までに寄せられたコメントは450通を超えた。女性弁護士の側につく意見もあれば、「イスラームの侵入」について語るものもあった。「判事は女性弁護士がイスラーム教徒だとわかったからそんな判断をしたのだ。次にイスラーム教徒の男性弁護士があごひげを生やして現れたら、あごひげは法廷の価値観に反するとの口実で彼の出廷を禁じるだろう」という気の利いたコメントもあれば、アラブ系と思われる人物のこんなコメントもあった。「スペインの法務省はこの判事をイギリスに派遣して、ヒジャーブをつけた女性の弁護士や職員がどれだけいるか見せるべきだ」。
ヒジャーブに関連して、スペインのメディアが報じ、本紙も今月7日号で報じた、モロッコ系女性がスペイン中部、シウダ・レアル県のソクリャモス村で複数のモロッコ系男性に暴行を受け、流産したとのニュースは、信憑性が疑われることが明らかになった。この女性の夫の話では、彼女と別の女性との間の不和がこうじて掴み合いになったのであって、ヒジャーブの問題とは関係ないという。(中断)
それでもモロッコ移民の活動家たちの多くが口にする疑問は残る。移民に対する悪い印象を持たせるこの手のニュースがリークされる背後には、いったい誰がいるのか? 今のところ当局、中でもこのニュースをリークした市民防衛隊は、だんまりを決め込んでいる。
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( 翻訳者:中島希 )
( 記事ID:17860 )