コラム:イエメン、ホースィー派とサウジの戦争
2009年11月16日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ ホースィー派のカチューシャとサウディの危機
■ クドゥスの見方
2009年11月16日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面
サウジ王国は、国防大臣補佐官ハーリド・ビン・スルターン皇子を通じ、ホースィー派がサウジ領土に対する敵対行為を停止しない限り、彼らに対する戦争を続行すると宣言した。サウジは、地域の村落と住民保護のためとしてイエメン領内10キロまでを無人の中立地帯としたが、そこでの出来事を通じてみると、事態は逆であるといえそうである。
昨日、ホースィー派反乱軍は、イエメン領内の市民に対する爆撃の報復として「カチューシャ」ロケット弾によりサウジ領内の基地を砲撃したことを明らかにした。これは危険な進展である。サウジ国境村落の多くで、この種のロケット弾落下による人的損害を避けるため住民を避難させなければならなくなる。
2日前のユニセフ報告によれば、サウジ政府は国境地帯の250の村落から住民を避難させ、前線から離れた地域へ移した。ロケット弾による砲撃等が双方の国境地帯で多大な人的損害を出すことが予測された故の措置であり、サウジ自身の領内をも無人地帯としたのである。
ホースィー派の手にカチューシャ・ロケットが渡ったというのはサウジにとり憂慮すべきニュースであろう。このロケット弾は、ジーザーンのようなサウジの大都市へ達する性能を有する。南レバノンからガリラヤのイスラエル入植地へ発射されるロケット弾が彼らの脳裏をよぎったかもしれない。
このタイプのロケット弾、それより飛距離の長いものあるいは別種のものであれ、ホースィー派が有する豊富な設備を、いったい誰が提供しているのかが問題である。
ホースィー派に近い筋によれば、占拠したイエメン軍の軍営地から得たものだそうだ。しかし、おそらくイランも含む国外勢力から到着したというのがより事実に近い話ではないか。
確かなことは、サウジが、おそらく今後数年を費やす宗派主義的消耗戦争に陥ってしまったということだ。特に空軍に顕著なその軍事的優位は、武装民兵相手の戦争での勝利を保証しない。イラクとアフガニスタンにおける合衆国、ならびに南レバノンにおけるイスラエルの経験がそのよい例であろう。
ホースィー派は非常に危険な戦略を実施しようとしている。この戦争を引き延ばし、イエメンとサウジの戦争とし、後者が、はるかに優位なその軍事力を用いてイエメン領土を爆撃しているという構図に持ち込もうとしている。
イエメンの人々がホースィー派に同調するかどうかは、短期間では分からない。また、現時点ではそのような兆候は見られない。しかし、イエメンの人々は強大で豊かな北の隣国に対しやや複雑な感情を抱いているだろうし、それが、ホースィー派が望む方向で結晶化するという可能性もある。イエメンの人々は、ホースィー派とは宗派を異にするわけだが、それでも彼らもまたイエメン人である。
国外勢力が介入しようとする道を断つためには、対話がこの悲劇的戦争からの理想的出口となる。武力のみによる解決法では、それらの勢力が待ち望む危険な目的が達せられてしまう。
イエメンが分裂し、経済的政治的疲弊に向き合うのを放置していたのは、隣国の過ちである。イエメンが世界最貧国20カ国に数えられる一方、隣国は少なくとも兆に上る黒字を有し、その年間石油収入が5千億というのは、恥ずべきことである。ホースィー派と我々は信仰的に異なるし、彼らが武力に訴えたことは非難されてしかるべきであるが、それでも彼らはイエメン国民である。イエメン、サウジの双方で罪なき人々がつけを払わされるこの血みどろに落ち込むのをさけるためにも、彼らの理論に耳を傾けないのは過ちであるといえる。イエメンからであれ、近隣諸国からであれ、流血を止めるため速やかな仲介が必要である。イエメンが爆発し、したがってその他の地域も爆発する前に。
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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:17882 )