レバノンで慣行化する政治家から記者へのプレゼント
2009年12月30日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ワインボトルやネクタイから現金まで
■祝祭シーズンの政治家から記者たちへのプレゼントの狙いは様々
■中には躊躇を感じない者も
2009年12月30日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面
【ベイルート:サアド・イリヤース(本紙)】
クリスタル、銀製のお盆、現金、ネクタイ、チョコレート、ワイン、ウィスキー、キューバ製の葉巻。これらは祝祭シーズンに報道関係者に贈られるプレゼントの一例である。政治抗争や街頭でのデモ、座り込みが昨年より多かった今年、政治家たちはジャーナリストへのおべっかにより懸命になっているかもしれない 。
クリスマスから年始に掛けて、ほとんどの場合、報道機関では警備員が倍増されるか守衛が雇われる。これは、大臣や議員、または治安機関の指導部や政府高官、実業家たちから、報道機関に贈り物が届くためだ。
大学のジャーナリズム学科では、贈り物を受け取ることは政治家からの賄賂を意味すると教えられているのに対し、記者たちの多くはクリスマスや年始の贈り物を受け取ることをためらわない。一年中政治家たちのニュースを取材 し、彼らを目立たせてやっている記者にとって、これらの贈り物は「ハラール[宗教的に認められる行為]」であり、大抵の場合プレゼントという形がとられる政治家からの感謝の意を、自分は受け取るに値するというわけだ。
祝祭時に記者たちに贈られるプレゼントはこの時期、同僚たちの間でトップに挙がる話題だ。もっともたくさんの高級な贈り物が届けられるのはおそらく、テレビやラジオの政治番組司会者たちであり、それに続くのが新聞の政治アナリストやコラムニストたちだ。
ある同僚が政治家から受け取った高価な贈り物を自慢すると、別の者は大層な金額を受け取ったと公言する。するとまた別の同僚が、彼が働く新聞社では記者たちが贈り物を受け取ることを好ましく思っていないため、同僚とプレゼントを共有することにし、何日もかけて様々な種類やサイズのチョコレートを食べ、オフィスでワインを酌み交わし、メディアを通じてしか知らない議員の名で届けられた高級葉巻を吸った奴もいると語る。そうしてクリスマスの贈り物をめぐる同僚たちのおしゃべりは、あの政治家は「ケチ」であっちは「気前がいい」などといった評に発展するのだ。
(中略)
今年の注目点は、大抵の政治家にとって、こうした贈り物が慣例化された点だ。新聞各紙の編集長と一部の選ばれたジャーナリストたちにプレゼントを送った大統領からはじまって、ナビーフ・ビッリー国会議長やサアド・アル=ハリーリー首相の広報事務所など、他の政治指導者たちも同じことをしている。
ただし、プレゼントを受け取るかどうかは一般化できない問題だ。たとえばヒズブッラーの報道機関で働くメディア関係者の中には現金やワインなど酒類の受け取りを拒否する者もいる。あるジャーナリストは、以前は現金は断り、物は受け取ることにしていたが、最近は経済状況が厳しいため、現金も受け取るようになったと語る。
記者たちのおしゃべりは届いたものだけでなく、届かなかったプレゼントにまで及ぶ。多くの記者が、どんなにささやかなものでも、政治家からの気遣いに感謝の意を表する一方で、自分が書いた記事が注目を得たにも関わらず、祝祭のあいさつに短い電話一本かけてこようとしなかった政治家たちへの失望を口にする。記者たちの間で何を言われているのか耳にした政治家は、がっかりするか恥じらうことだろう。そして次の年には躊躇せず、ふさわしいプレゼントを贈ることだろう。
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( 翻訳者:梶田知子 )
( 記事ID:18291 )