レバノンでお笑い番組のモラルをめぐり熱い議論
2010年01月14日付 al-Quds al-Arabi 紙

■レバノンでコメディ番組が熱い議論を引き起こす

2010年01月14日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【ベイルート:ライラ・バッサーム】

ベイルートでコメディが熱い議論を巻き起こしている。テレビ番組のモラルや規制が語られる一方、「下品さ」からメディアを救えと求める一部の宗教者も議論に加わった。

国内テレビ局は、政治に嫌気がさして娯楽への逃避を志向するようになったレバノンの視聴者の傾向を利用し、コメディ番組によって高い視聴率を得ようとしてきた。それを実現したのが、キリスト教徒の政治指導者の一人であるミッシェル・アウン氏が保有するOTVが放映する「ロール」という番組だ。

「ロール」とはインターネット・サイト上での若者たちのチャットで広まった表現で、英語の「LOL(laughing out loud )」の意味である。

この番組は昨夏から放送が始まった。スタジオで男女2人がジョークや珍事を語り、笑いの要素を持つアーティストや著名人をゲストに迎えるというトーク番組である。

だがこの番組は何人かの宗教者に批判を受け、レバノンのメディア監視機構が動き出した。そのため昨日火曜日、国家メディア評議会が開かれ、レバノンメディアの代表者たちが出席した。

 最初に反対の声が上がったのは、山岳レバノン県のスンナ派ムフティー、ムハンマド・アリー・ジョーズー師の声明でのことだった。同師は「メディアを規制し、下品さから救い出すよう」要請したのだ。続いてレバノン共和国ムフティーであるムハンマド・ラシード・カッバーニー師が声明を出し、「人々の感情や羞恥心に触る下劣なコメディー番組に制限を設けるための早急で実際的な措置」をレバノン当局に求めた。

 また、ファーディー・アントワーン・シャーマーティーという市民も山岳レバノン県の検察に番組を告訴した。正月に放送された回の内容に基づき、「この番組はモラルや礼節に対するあからさまな挑戦であり、我々が育てられた倫理的価値の核心部分に触れ、家族の連帯を直接的に脅かす」と訴えたのだ。

 国家メディア評議会のハーディー・マフフーズ議長は会合後、「悪意から出ているわけではないかもしれないが、この番組のある部分は疑いようもなく、公共の嗜好やエチケットを侮蔑しており、コントで誇張をしすぎている」と述べた。
 
 だが、レバノンの調査会社Stat Epsosの統計で最高視聴率を獲得したこの番組のディレクター、シャーディー・ハンナ氏は記者団に対し、「自身を閉じ込めている牢獄から離れられない人間もいる。だが、それを他人にも押し付ける権利はないはずだ。笑いや楽しみを罪であるかのように思う人間もいる」と語った。

(中略)

 この番組はレバノン日刊紙の作家やジャーナリストたちからも関心が高い。ピエール・アビーサアブ氏は火曜日のアル・アフバール紙にこう書いている。「徳の守護者であらせられる方々へ。あなた方はこの国の将来までも奪い取った…せめて笑いくらい我々に残しておいてくれ」。

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( 翻訳者:中島希 )
( 記事ID:18295 )