米国が宗教の自由に関する報告書、レバノンの現状を評価
2009年10月27日付 Al-Nahar 紙

■ 米国が宗教の自由に関する報告書
■ レバノン内務省の決定を評価
■ レバノン、身分証明書から宗教表記を削除

2009年10月27日付アル=ナハール紙(レバノン)HPアラブ国際面

【ワシントン:ヒシャーム・ムルヒム】

 米国務省が世界各国の宗教の自由に関する年次報告書を出した。その中では、レバノン内務省による2009年2月の「国民が身分証明書から帰属宗教を削除することを許可する」との決定など、昨年レバノン政府のとった措置についていくつか言及されている。

 2008年7月1日から2009年6月3日にわたる期間を扱ったその報告書によれば、レバノン政府の政策は同国における「概ね自由な宗教の実践」に寄与しているという。またレバノンは今なお、宗教的差別から逃れてきたイラクのクルド人、シーア派、カルディア派や、エジプトおよびスーダンからのコプト教徒など中東における宗教的マイノリティーのための避難場所になっている、と指摘されている。

 シリア正教徒連盟のハビーブ・イフラーム事務局長によれば2003年以降、イラク人5万人とコプト教徒約5000人がレバノンに逃れて来ているという。

 一方、報告書は、レバノン政府がレバノンのユダヤ教徒を実際にはイスラエル国民でないにも拘わらず「イスラエル人」と分類してきたと述べた上で、ズィヤード・バールード内相が2009年4月、レバノン人ユダヤ教徒をユダヤ教徒国民として認めるよう提案したことに言及している。

 米国の法律では1998年以降、米国務省がこの年次報告書を議会に提出することが定められている。

 また報告書は、宗教的帰属や慣習に基づくいわゆる「社会的差別」が未だ存在していることや、15年間に及んだレバノン内戦の影響が続く中で政治権力をめぐる争いに起因する宗教間の緊張が存在していることについても言及している。また、2006年のイスラエルとの戦争以降、レバノンにおける宗派間の緊張が高まったことも述べられている。

 また報告書はイスラエルやユダヤ教徒に対するヒズブッラーの強硬姿勢についても触れ、「反セム主義的な刊行物が未だにヒズブッラーとの協力の下で印刷・出版されている」としている。またヒズブッラーの所有・経営するマナールTVとナビーフ・ビッリー国会議長と関係の深いNBNテレビの両局が反セム主義的の内容の番組を放映したにも拘わらず、レバノン政府は何の反応もしなかった、とも述べられている。

 また、レバノンのキリスト教マロン派教会の指導者らは昨年、プロテスタント派の宣教活動を禁止しようとし、ドルーズ派宗教界の有力者らはマロン派の宣教活動を禁止しようとしたという。

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