タブーに挑戦するサウジアラビア小説の新世代
2010年05月31日付 al-Quds al-Arabi 紙

■タブーを破る手段としてのサウジアラビアの新しい小説

2010 年05 月31 日付『クドゥス・アラビー』(イギリス)HP1面

【リヤド:本紙】

 表現への検閲が義務付けられ演劇や映画が禁じられている国で、タブーを破り、敏感な話題を提示することをためらわない新世代の作家たちの貢献によって、サウジアラビアの小説に新しい風が吹いている。

 サウジアラビア王国で出された新しい小説の多くは発禁にされているが、他のアラブ諸国では流通しており、サウジアラビア人は旅行先からそれらの本を自国へ持ち込むことができるし、インターネットを通じて入手することも可能だ。

 サウジアラビア人小説家アブドゥフ・ハールは去る3月に、毎年授与されるアラブ小説のブッカー賞を受賞した。受賞作の『火花を散らす』[訳注:この題名はクルアーン中の地獄の描写『巨大な城のように火花を散らす』からの引用]は、ある城の支配者が権勢を振るう日々を辛辣に描いた作品。

 サウジアラビア人女性小説家のバドリーヤ・アル=ビシュルはフランスAFP通信社に対し、「恋愛や仕事における女性の権利など、以前は提示されることのなかった話題を投げかけるために、平易で直接的な新しい言葉を使う小説家たちの一世代が存在する」と語る。

サウジアラビアの束縛から外れたヨーロッパで、「自由の経験」を生きようと試みる三人のサウジアラビア人女性を描いた最新作「ぶらんこ(the swing)」を出版したバドリーヤ・アル=ビシュルは、「小説は通気口になった。口では言えない事を表現できるし、タブーを破ることもできる」と述べた。彼女の小説では女主人公たちが男性のようにアルコールや異性との関係を通じて自由の概念を生きようと欲するものの、抑圧が増すにつれて自由の概念も歪んでいく様が描かれている。

 彼女も他のサウジアラビア人小説家と同じく、年に一度の「リヤド・ブックフェア」をのぞいて、作品の販売がサウジアラビアでは禁止されているが、ブックフェアの期間中に全作品を完売したという。

 3年前に若いサウジアラビア女性作家、ラジャー・アッ=サーナアナが発表した小説「リヤドの娘たち」は、大胆かつ平易な小説ブームの本物の現象であり、先駆けとなった。

 サウジアラビア小説はこの新世代の出現以前から存在しており、それを担ったのは、石油出現に伴うアラビア半島住人の生活の根本的な変化を描く「塩の町」5部作を書いたアブドゥッラフマーン・ムニーフ(1933~2004)や、外交官で政治家のガーズィー・アル=ゴサイビーやトゥルキー・アル=ハマドらだった。

 しかし新しい小説家たちは、保守的な宗教的・社会的伝統の重みの下で、サウジアラビアの日常生活に潜んでいる社会問題を扱うことをためらわない。

(後略)

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( 翻訳者:石川貴子 )
( 記事ID:19333 )