大河に挟まれた国イラクで続く水不足
2010年06月14日付 al-Hayat 紙

■ 2つの川に挟まれた国が渇いている

2010年06月14日付アル=ハヤート紙(イギリス)HPアラブ世界面

【バグダード:ロイター】

 バグダードの暑い夏の日、カースィム・ダヒール・アル=クルフサーウ氏は自宅の中庭に座ってホースをじっと見つめている。そこから水がほとばしるのを待ち望みながら。

 ダヒール氏が住む貧しい街区では、赤十字国際委員会が毎日140,000リットルの水を配っている。7,500世帯の喉の渇きを潤すためだ。

 ダヒール氏の家族は10人の子供と15人の孫を含め27人から成り、毎日1,000リットルの水を消費する。その水を供給しているのは赤十字社であるが、必要を賄うのがやっとである。

 「私たちにはこの給水車が頼りだ。もし何かの理由でこれが来なかったら、その日はコップ1杯の水が1人分だ…他には物を洗う分も飲む分も残らない」とダヒール氏は言う。

 赤十字国際委員会が示す政府統計によれば、3000万人に達するイラク住民の4人に1人が清潔な飲料水を得られていない。この問題はアメリカの占領によりサッダーム・フサイン元イラク大統領の政権が転覆して以来7年間続いている。

 数十年にわたって戦争と国際的な経済制裁が続いたため、イラクのインフラはボロボロの状態にある。政府は住民が家を建てて最近新しく形成された地区にも水道管を敷設しているが、ダヒール氏が住む地区など多くの地区には未だ届いていない。

 ここ数年間の宗派抗争により150万人以上のイラク人が避難した。首都バグダードを西側から望み住民の多数をスンナ派が占めるアブー・グレイブ地区に住んでいたシーア派のダヒール氏は、2006年に自宅を後にし、バグダード東部のシーア派住民の多いバラディーヤート地区に安全な避難場所を見出した。

 赤十字の給水車は早朝から給水を始め、夕方6時まで作業を続ける。旧来の給水システムの代わりである。旧来の給水システムは適切なメンテナンスも行われず、各家庭で品質の悪いパイプが違法に接続されるためますます劣化している。

 イラク計画省は、水道から出る水の84%が飲用に十分清潔な水であり、残る14%は汚染されていると述べている。

 計画省のマフディー・アル=アッラーク次官は、「2010年から2014年の国家開発計画により住民の飲用水については相当な発展が実現されるであろう。我々はこの割合が90%以上に上昇すると期待している」と述べた。

 赤十字国際委員会はバラディヤート地区での給水を2004年に始めたが、住民の数が増加するなかで状況は悪化している。

 ダヒール氏が住む街区のラーイド・ムフスィン区長は、イラク国民には国家の石油の富のうちの数滴しか届いていないと言う。区長は通りで赤十字の給水車が1万リットルの容量を持つタンクから給水を始めるのを見つめながら、「この水不足は誰か一人のせいではなく、まさに国家のせいであり、高官たちのせいである。今まで我々の状況を視察しに来た者は一人もおらず、まるで我々はイラクの住民として数えられていないかのようだ。残念ながら我々にとってはひとつの抑圧が終わって新たな抑圧が発生した。我々は状況は前より良くなるはずだと期待していたのだが、いざとなってみたら悲劇のどん底に陥ってしまった」と述べた。

 バグダードの責任者らは、水の生産と分配の問題に直面していると述べている。700万人に達するバグダード市の住民は1日に350万立方メートルの水を必要としているが、地元行政当局は270万立方メートルしか供給できないのである。

 バグダード市は先月、水不足が2年以内に終わると発表した。老朽化した水道システムを再建するために結んだ「スエズ・エンヴァイロメント」社の関連会社「デグレモン」との契約が8ヶ月前に履行され始め、20ヶ月以内に終了する予定である。

 ダヒール氏の自宅の台所では生活が麻痺している。ダヒール氏は朝食の皿を洗い、床を掃除する水を待っている。娘のサナーさんは流し台に積み重なった不潔な皿を見て苛立ちながら、「私たちは給水車を待ってから仕事を始めるの。水はぎりぎり1日分しかないから」と言った。

 3ヶ月以上前に行われた議会選挙は決定的な結果が出ず、ダヒール氏は今後新政府が組閣されてからも何らかの改善があるとは期待していない。

 ダヒール氏は、「新政府には何も期待していない。私は4年も前に我が家を追い出され、今や沙漠に住んでいるのに、政府は何もしてくれなかった。私たちの状況に同情してくれている国外の人々に神の祝福がありますように」と言った。

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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:19419 )