エルドアンに大統領の道が開かれる?―現職首相の大統領立候補可能に
2010年06月17日付 Milliyet 紙
大統領選挙制度とその根幹を改変する「大統領選挙法案」が憲法委員会から下部の委員会に提出された。委員会の法案によると、現職首相は辞任をせずに大統領立候補者になれる。
法案に関し意見を述べたタイフン・イチリ議員は、その条項の内容に関し、「これは現状に適合したものではありません」と批判した。民族主義者行動党(MHP)議員ファルク・バルはというと、「電子メールによる警告に反対の意を示すのであれば、電子メール発信者がイスタンブルで(何事もなく)動き回っており、そのことを批判し、裁けばよい」と述べた。
バル議員は、法案が「大統領制」への再編成の試みであることを主張し、「私たちはキルギス共和国から教訓を得なければいけません」と述べた。
共和人民党(CHP)議員アッティラ・カルトは、法案が「現在の複雑な状態をさらに混乱させ、修復不可能なものにするでしょう」と述べた。また同氏は、民主と自由のための裁判官・検察官組合(民主司法)の共同代表者で憲法裁判所監察官オスマン・ジャンの間で成された議論を非難し、「エルドアン首相の大統領就任への道を開けさせるためにこの法案を推進することは、正しいことではないでしょう」と評した。
公正発展党(AKP)議員ヒュスニュ・トゥナはというと、「(憲法裁判所のメンバーの)フルヤ・カンタルジュオールと(エルゲネコン捜査の被疑者である)セイフィ・オクタイが電話での会話は、法に対する干渉ではないのでしょうか」と意見を述べた。
■ 大統領制が機能しなくなる
平和民主党(BDP)ハッキャーリ選出議員ハミト・ゲイラニは、法案が「大統領制の機能を停止させるものである」と表現した。AKP議員ハサン・カラも、「(憲法裁判所が議会内での議決で)367名の参加を要すとの決定を下した際に行われた電話での会話の内容が明らかになれば、一体どのような混乱が起こるでしょうか」と述べた。カラ議員は、(CHPの)カルト議員の「ご存知のことがあるのでしょう」との発言を批判し、「知っていることはありません、あなたがご存知なのでは」。(CHPの)イサ・ギョク議員は、カラ議員が「中身のない」話をしていると批判し、二人の議員の間で短い口論が起きた。カラ議員は、「問題はアンカラ政府の迷宮にあるのではありません、埃の舞うアンカラの道々で探してください」と述べた。
MHPウスパルタ選出議員ネヴザト・コルクマズは、大統領が議会によって選出され、また大統領の権限を制限することが必要であると主張した。 AKPアダナ選出議員のファトシュ・ギュルカンは、バル議員が行った「キルギス共和国への例え話」が適切なものではないと述べた。これに対してバル議員は、「キルギス共和国の例は当たっているでしょう。一国家で均衡と制御の機能が崩壊すれば、その国が向かう先は専制国家です。キルギス共和国でも制御不可能な権力が発生したのでしょう」と返した。
■ 権力の分立に関する原則
これらの話し合いの後、エルギン法務相がこの法案に関する見解を述べた。
氏は、「AKPが政権を握っている間に、人々の合意なしに憲法改正が実行されている」との批判を行った人々がいることに触れ、2007年選挙の後、当時の議会議長キョクサル・トプタンがトルコ大国民議会で新憲法成立のために委員会設立を意図していたこと、ただ主要野党がこの委員会に参加しなかったことを説明した。
また、最近の選挙で、半数の票を獲得した政党組織に対しこのような(批判的)態度をとる政党が、AKP組織を「非対話者」として批判するのは正しくないとし、「司法の独立、司法に対する批判、司法の決定への尊重といったことを志向するのは、私たちも賛成していることなのです」と述べ、以下のように続けた;
「立法、行政、司法が各々どのような形で執行されるかは、トルコ共和国憲法の7、8、9条に記されています。憲法の冒頭の重要規定をみると、権力分立は国家組織の中で序列をつくることを意味せず、明確な権限と職権に基づいており、このように(三権の間で)制限された協業・職域があるのであり、あくまで憲法と諸法がそれらに対し優位にある、という原則が記されているのです。」
立法、行政、司法の権力のどれも、他に勝るものではなく、他の上位に位置しない。この意味において、私たちは、司法に敬意を示し、司法が憲法が定める所に従って機能することに、いかなる形であれ妨害せず、憲法が定めた境界を超えることなく、この過程を辛抱強く見守っていく。しかし、同じような敬意を、議会も、行政も(司法に)期待する権利(がある)、我が憲法によると。」
■ 無制限の権力は三権にとっても危険
エルギン法務相は、憲法148条が立法のチェックを規定する条文を含んでいるとし、「そこでは、法律が形式という視点からチェックされることは、直近の投票が期待された多数票によってなされかどうかによります、憲法改正では提案と投票多数、拙速な議論をおこなわないという条件に適っているか否かということによります」と語った。
行政、立法、司法の各職域は憲法で規定されているとしたエルギン議員は、「バル議員は(憲法改正が大統領を)制御の利かない力(に転じる)と指摘しました。私もそれに賛成します。制御が不可能な権力は、立法機関にとっても、行政にとっても、司法にとっても脅威となります」と明らかにした。
憲法に関連する組織が憲法に記載されている職権を越えてしまう危険に対し、取られるべき対策は何であろうか?議会がこれを行えば、憲法と関わる司法機関が制御するだろう。また、議会を制御する組織は多数存在する。行政が行えば、またしても議会と司法が制御するだろう。しかし、提示された例において、憲法による制限や権限を越えた司法の行いをどのように妨げたらよいのだろうか。
議会の独裁に反対しよう、行政の独裁に反対しよう。しかし、この国が裁判官が支配する国家になることにも反対しよう。法学者組織による支配にも反対しよう。トルコを法治国家として機能させるため、憲法の制限範囲内で各権力が自らの職務を遂行するための措置をとろう、対策を取ろう。
これを実現のためにすべきことは、私たちが行ってきた憲法改正は限定された数の条項を含んでおり、この憲法を包括的に再評価し、より良いものにすることであろう。権限を越えた事象に対しては、ともに反対することが必要となる。」
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( 翻訳者:西山愛実 )
( 記事ID:19448 )