シリア・アラブ通信社、政府筋の報道から国民に身近な報道へ
2010年08月08日付 al-Hayat 紙
■シリア・アラブ通信社、国内ニュースを重視して国民に身近な存在を目指す
2010年08月08日付『アル=ハヤート』紙(イギリス)HPメディア面
【ダマスカス:ザイナ・イルヒーム(本紙)】
「プロ精神、編集力、多様性およびシリア社会に身近という点で、20年前のシリア・アラブ国営通信社(SANA)と今日のそれでは『天文学的な距離』がある」と1970年代から政府系新聞『ティシュリーン』紙の政治編集部に勤めるイサーム・ダーリー記者は語る。
同記者は、1970年代から1990年代までのシリア・アラブ通信社の状況を比較し、次のように明言する。「かつて編集は正確でなかった。報道内容は、ニュースを含む政治解説のようなものとして我々の手元に届き、そこからの逸脱は禁じられていた。その内容について言えば、経済やスポーツ、取材報道は全くなかった」。同記者は、かつては理論的にも実践的にも報道業界に存在しなかったようなやり方[※訳注:ネット配信等]で、[現在]これらすべての報道を取り扱っている。
事件や社会問題に関する報道もまたシリア・アラブ通信社の関心から外れていた。こうしたテーマは新聞の専門事項であり、同通信社は国内の新聞から一部の重要な報道を転載するほどであった。[同通信社の]国内ニュースについて言えば、政府高官の動静を中心に報じられていたとダーリー氏は言う。2006年に発刊した『アル=ワタン』紙 [40年来初めてシリアで公認された独立系日刊紙] 政治部で編集を務めるジャーナリスト、ラーマー・ナジュマ女史もそのように強調する。
ナジュマ女史は、国内ニュースにおける変化については、「顕著である。というのも、以前は政府のニュースに限られていたからである。現在では、シリアについてより詳しく報じるようになり、よりシリア国民に関心をもたせるように作られている」と指摘する。
シリア・アラブ通信のアハマド・ダワー編集長もナジュマ女史に同意しつつ、次のように語る。同通信社では「シリア国民に身近な報道が不十分であった。現在では、国内ニュースの選択はシリア国民の優先する内容と近くなり、国民が自国のニュースを自国のメディアで知るようにするため、ニュースを多面的に扱うことが増えた。すなわち、同通信社は国民の様々な階層や社会活動へ関心を寄せるという意味でバランスを保つようになった」。
シリア・アラブ通信社は、政治、経済、文化等毎日600本のニュースを配信しており、その内70~80%は国内ニュースである。同通信社幹部が抱く「野望」とは、将来その数を1000本にすることである。また、同通信社はアラビア語に加え、英語・フランス語・スペイン語・トルコ語でもニュースを配信している。
ダマスカスでメディア学を学び、カイロで博士号を取得し記者としての実務経験もある同通信社のアドナーン・マフムード代表取締役は、シリア国民にいっそう身近な存在となるためにも、ニュースの取材において新たな流れに追いつき、価値ある取材内容を提供して競争力をつけるべく取り組んでいる。
同通信社の幹部が抱く「展望」とは、「まずシリア国内の国民の情報ニーズに応えることで、国外にまで影響力が及ぶようにすること」にある。統計によると、同通信社のウェブサイトはシリアの全ウェブサイト中最も閲覧されているという。
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( 翻訳者:平川大地 )
( 記事ID:19921 )