長い間、墓廟・博物館局の倉庫に眠っていた、スルタン、官僚、スルタンの娘たち、聖人たちの墓廟から集められた品々の一部の展示が、トプカプ宮殿の特別展示室で、「永遠への扉-墓廟」と題され始まった。墓廟展は9月19日まで開催される。
19世紀に墓廟で客人をもてなすために使われた、黄色の下地に色とりどりの花で飾られたアシュレ(トルコの伝統菓子)用深皿、エユプ・スルタンの埋葬場所の発見を描いた、アラビア語スルシー体で書かれた書道作品…。さらには1500年代に、預言者の墓の覆いから作られた礼拝用の縁なし帽、アブデュルメジドがアル・バカラ章137節を書写した、飾り文字の書まで展示されている。
イスタンブルにある117の墓廟から、保護の目的で集められ、墓廟・博物館局の倉庫にしまわれていた、ヒルイェ・シェリフ(預言者ムハンマドの徳を表現した文章)、カデミ・シェリフ(ムハンマドの足跡)、スルタンのガウンからワクフ簿、勅令に至るまで、全く日の目を見ることがなく、人々の目に留まらなかったこれらの貴重な品々の一部は、ようやくそれらがもっている魂を語ることのできる展覧会に巡り合った。墓廟・博物館局のこの試みは、イスタンブル2010年ヨーロッパ文化都市首都実行委員会の後援で実現された。トプカプ宮殿特別展示場で開かれた「永遠への扉-墓廟」というテーマの連続展示の第1回目として、今日に至るまで私たちが欠かさず参詣を続けている、エユプ・エル・エンサリ、アズィズ・マフムト・ヒュダイ、スィムビュル・エフェンディ、メルケズ・エフェンディ、カラジャ・エフェンディ、ヤフヤ・エフェンディのような聖者と聖廟にまつわる135の品々が公開される。
修復を終え出品された品々は、歴史的価値に加え、精神的な意味も多く含んでいる。神への祈りを仲介してほしいと我々が願う聖者たちに、私たちをより近付けるのであり、あるいは彼らが生きた時代を我々が理解できるようにしてくれるのである。例えば、展示品の一つであるパーディシャのある勅令は、私たちをヤフヤ・エフェンディ・モスクの時代へといざなってくれるのだ。今日、多くの人々が詰めかける場所の過去を思い出させるのである。エユプ・エル・エンサリの埋葬所の発見の物語を書いた書道作品からも、この時代に思いをはせることができるのだ。また、重要な政治家や人々によって寄進された品々が展示されていることは、墓廟に対する私たちの「祈り」の歴史を見せてくれているかのようである。聖者たちの聖廟に寄付された、金箔の歴史的価値のある手書きの聖コーランは、あたかも別の世界へと続く扉を開けてくれているかのようである。
■神の友、聖者たちの品々、初公開へ
神への取次ぎを願い、常に私たちがその名を唱える聖者たちの個人的な品々は、この展示会の「秘密」を示すものだ。このため、初公開される135の品の展示でもって開催されるこの展覧会の主要な部分は、アッラーの友、聖者たちの個人の所有物が占めている。イスタンブルの精神的支柱ともいえる聖人らの品々と聖廟に寄進された物がそれぞれ異なる部門に分けられて展示されている。このように、15世紀に生きたアズィズ・マフムト・ヒュンダイのサンダル、祈りの言葉や呪文が書かれたお守りのシャツ、木製のズィクル用数珠をここで見ることができる。まだ別の部門では、16世紀のヤフヤ・エフェンディの治癒や加護のための聖句を刺繍したシャツを見ることができる。
墓廟に下賜された勅令、特許状、書道作品らも興味深い展示品の一つである。マフムート2世、スルタン・アブデュルアズィズ、そしてスルタン・アブデュルメジトが、様々な墓廟のために書いた書は高い芸術的価値があるという。マフムート2世の墓廟に1842年、ヒベテュッラー・スルタンによって寄進された、銀細工を施された木製書見台、メルケズ・エフェンディ追悼のためにターリク体で書かれた1911年の石碑、金糸銀糸で刺繍が施され書家ムスタファ・ラクム・エフェンディの署名がなされたカデミ・シェリフ(ムハンマドの足跡)の布製の覆いは一見に値する。他にも、バラ油を入れるための瓶、蜀台、書見台、水差しのような貴重な装飾品が展示を華やか、また豊かなものにしている。
■トプカプに次いでトルコで最も聖遺物が見つかるのは墓廟
この墓廟展をさらに価値のあるものにしているのは、聖遺物である。カラジャ・アフメト聖廟でのカデミ・シェリフの板、またサカル・シェリフ(ムハンマドのあごひげ)、カーバ神殿を覆う布でつくられたプレートはこれらの一部にすぎない。トプカプ宮殿特別展示部での展示は9月19日まで。入場は有料。
■今後も墓廟展は続く
セルカン・ニナンジュ(博物館展示部門責任者):この展示を行う私たちの意図はただ一つ、倉庫に眠る1万5千のコレクションが常に展示される状態となることです。トプカプ宮殿特別展示に出品された135の品で開催された「永遠への扉―墓廟」は、コレクションの第一回目の展示会です。ラマザン月の今、歴史を作った聖者たちの聖廟の品々を展示しました。次回以降の展示では、スルタンや政治家たちの墓廟、スルタンの娘たちの墓廟を別々に展示していく予定です。私たちの目標は、こうした品々が常設できる博物館を建てることです。
ハイルッラー・ジェンギズ:墓廟は1928年に閉鎖されて以降、人々の関心はずいぶんと低くなり、長い間参詣されることもありませんでした。このため先人たちは、墓廟にある1万5千もの品々を保護の目的で収集し、墓廟・博物館局の倉庫に保存しました。私たちはこれらの品々が倉庫に眠ったまま傷んでいくのを放置したり、人々がこれらの歴史物を知らずにいるのはよくないと思いました。そのために、全保管物がよりよい環境で所蔵され、人々に見てもらうための博物館を建てることを望んでいます。第一段階として、これはなかなか難しいため、展覧会を開くことで人々を、そして歴史家、芸術家、特に官僚たちの注目を得ようと思いました。そして将来の博物館建設への第一歩として「永遠への扉―墓廟」展を開催したのです。長い準備段階をへて、初めてアッラーの友、聖者たちの聖廟にあった135のコレクションで展示を開催しました。私たちの目標はこれらの展示が常設される博物館を建てることです。
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( 翻訳者:西山愛実 )
( 記事ID:19990 )