米牧師のコーラン焼却発言に対してレバノンのキリスト教指導者らが非難
2010年09月10日付 al-Hayat 紙
■ コーラン焼却呼びかけに対してレバノンで非難
■ マロン派のスファイル総大司教、コーラン焼却は分裂を助長するとの見解
2010年09月10日付『アル=ハヤート』紙(イギリス)HPアラブ世界面
【ベイルート:本紙】
米フロリダ州にあるプロテスタント教会のテリー・ジョーンズ牧師が9.11事件9周年記念日に聖コーランの焼却を呼びかけたことを受け、レバノンでは9日、広く反発の波が湧き起った。キリスト教マロン派のナスルッラー・スファイル総大司教は「この呼びかけは糾弾されるべきであり、分裂と相反の状態を助長する受け入れ難い活動を奨励するものである。世界はもっと歩み寄り、相集い、和解することを必要としているのだ」と強調した。
またスファイル総大司教は、「レバノンにおけるイスラーム教とキリスト教の共存は見習うべき、比類のない模範である」と述べ、「キリスト教徒とイスラーム教徒があらためて共存のメッセージを守り抜き、いかなる勢力によるものであれ宗教とは無縁の偏狭な呼びかけや原理主義に立ち向かうこと」を訴えた。
アルメニア正教会のカトリコス、アラム1世総主教はジョーンズ牧師の呼びかけを非難し、この動きを「イスラーム教の象徴である聖典コーランに対する無責任かつ不道徳的な動きだ」と評し、「相互に敬意を払うことが啓示宗教の道徳的概念の基本である」と強調した。
またギリシア・カトリック(メルキト派)教会も声明で、「聖典コーランの焼却呼びかけ」を激しく非難し、「この行為はキリスト教の精神と教義と価値観を損うものだ」との認識を示し、「どのような形であれ糾弾し拒絶すべき過激な計画や姿勢のために宗教を利用すること阻止するため、先んじてこれを抑えるための運動を展開するよう」呼びかけた。
ギリシア・カトリック教会最高議会は昨日の声明で、「その行為は卑怯で忌避すべきものであり、愛情と寛容、公平と対話を求めるキリスト教の教えとはかけ離れたもの」とし、「キリスト教は、疑わしい者たちが背後に存在するこのような糾弾すべき行為とは無関係である」と発表した。
また南部サイダ市のジャアファル派ムフティーであるムハンマド・ウサイラーン師は声明で、「世界の教会の指導者に対して、コーラン焼却を食い止めるために働きかけるよう求める。この愚かな行為に対する過激派の反発行動によって、イスラーム教徒とキリスト教徒の双方にとって望ましからざる結果がもたらされるかも知れないからだ」と述べた。
また複数の政治家や政党がジョーンズ牧師の呼びかけを非難している。ニダール・タアマ議員は昨日の声明で、「キリスト教は聖典コーランの焼却を計画している悪意ある者たちとは無関係である」との見解を示し「レバノンが示している共存の生き生きとした事例」を称賛した。
また、「レバノン軍団」広報部は昨日の声明で、「いかなる人間集団のものであれ神聖とされているものを侵害する行為は、真のキリスト教の理念に反し、責任ある自由と他者の受容、相違の容認、紛争解決にあたっては法律に依拠するとの原則に基づく人権の理念を否定するものであると認識している」と発表し、「今回の牧師の呼びかけはキリスト教の意見ではなく個人的な意見を表明するものに過ぎず、その意見は控え目に言っても、誤りに満ちている」との見解を示した。
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( 翻訳者:川上誠一 )
( 記事ID:20155 )