クルド問題が歴史的転機を迎えている。国民投票が実施された9月12日直後から連日行われている(クルド問題の)民主的解決策に関する様々な会談が世論の反響を呼んでいる。全ての会談がそれぞれに重要な交渉であった。しかし、諸会談を次々に並べてみると、本質的な姿が現れる。
わずか10日の間に実施された会談だけを見ても、「4局面からの(民主的)解決のための交渉」が姿を現す。2人の人物、国家諜報機構(MİT)事務次官のハーカン・フィダン氏と内務大臣ベシル・アタライ氏の最近の交渉は最も重要な意味を持つ。しかし、これらの重要な会談に、ギュル大統領、及びアフメト・ダウトオール外務大臣が行った交渉も、大きな後押しとなったことは明らかである。
4つの局面からの交渉は以下のとおりである。
■第1局面:平和民主党(BDP)との折衝
政府の最も重要な折衝は、平和民主党(BDP)とのものであった。表立って取り沙汰されることはなかったが、イムラル島でクルド労働者党(PKK)リーダーのオジャランとの直接面会がなされた。こうした交渉が続くなか、PKKも9月20日までとしていた「停戦」期限を延長したと発表した。
・最初の折衝を、国家諜報機構(MİT)事務次官のハーカン・フィダン氏が8月に行った。極秘のうちにイムラル島を訪れたフィダン氏は、PKKリーダーのオジャランと面会した。
・二回目の折衝は、国民の目前で行われた。ジェミル・チチェキ副首相、及びサードゥッラー・エルギン法務相は、BDP党首セラハッティン・デミルタシュ氏を団長とするBDP代表団とトルコ大国民議会(TBMM)で一堂に会した。
・二回目の折衝後には、(解党命令を受けた)民主市民党(DTP)の有力者で、解党命令後に政治活動を禁止されたアイセル・トゥールック氏が、「弁護士」の肩書でイムラル島に行き、PKKリーダーのオジャランと一時間の面会を行った。
■第2局面:北イラクとの折衝
国内でBDPとの会談が行われる一方、クルド問題のもう一つの重要なファクターである北イラクのクルド人自治区も無視されてはいなかった。
・ベシル・アタライ内務大臣は、北イラクにおいて北イラク・クルド自治政府大統領マスード・バルザーニー氏と会談した。会談前に挙げられた議題は、「イムラル島とカンディル(北イラクのPKK拠点)」の分離であった。北イラクのクルド人による情報では、アタライ内務大臣は、バルザーニー大統領と側近が、カンディルのPKKメンバーに対して、「直接戦わないなら、(戦闘の誘因となるような)挑発を差し控えるように説得してくれることを望んでいる」といったことが示されている。北イラクのクルド人自治区は重要である。なぜならば、想定されうる(トルコ政府とPKK間の)和解で、北イラクにたむろするPKKメンバーだけではなく、トルコのPKKメンバーも、少なくとも一定期間、北イラクの地に定着させるということが討議されたことが、世論の反響を呼んだからだ。さらにはPKKメンバーが、しばらくの間、(北イラクの)マフムール・キャンプへ定着させられることが話し合われ、それが新聞紙面をにぎわしていたからだ。
・MİTのフィダン事務次官は、来週に北イラクへ行く予定である。(北イラクの)アルビルでバルザーニー大統領および側近らと一堂に会する。ある意味、アタライ内務大臣が話し合った内容を引き継いで、可能な対策を検討する。検討にあたっての最大の問題は、PKKのリーダーたち、及びPKK活動に志願した民兵らの状況がよくわかっていないことだ。彼らが、刑罰を受けずにトルコへ帰還することは難しい。この枠組みでPKKが解散させられた場合、こうした人々に対し、どのような措置が取られるかという問題が、未解決である。
■第3局面:米国との交渉
PKK問題解決においてイラクがこれほど重要になってくると、イラクにおいて最大勢力を誇る米国も重要となってくる。この枠組みで米国との交渉も極めて重要となる。このためワシントンとも綿密な対話が続いている。
・MİT事務次官フィダン氏は、9月始めにワシントンに行き、米国諜報機関関係者と会談した。北イラクでのPKKの存在感、解散させる諸手段など、この問題でイラクにおける米国政府関係者らは、何が出来るのかという点が強調された。
・ギュル大統領は、オバマ米国大統領とクリントン国務長官と会談した。問題解決において、トルコの決意を説明した。最高レベルでの米国の支援を要請した。
・アタライ内務大臣は、アンカラにて今日(28日)、駐イラクの米軍新司令官オースティン陸軍大将と会談する。こうして、米国政府とハイレベルでの協力関係を構築するということに関する合意が、下部組織へも反映され、具体化され始めた。
■第4局面:シリア・イランとの交渉
PKKの外国との関係は、イラクだけにとどまらない。PKK内で既に「分派隊」のように活動するシリア国籍の民兵やイランで活動するPKKメンバーもいる。このためトルコが踏み出そうとする行動は、シリア及びテヘラン政府とも協調し、両国から支持を得る必要がある。世論の反応がなくとも、この問題における交渉は行われた;
・アブドゥッラー・ギュル大統領はニューヨークにて、イラン大統領マフムード・アフマディネジャード氏と会談した。PKK撲滅の問題ではイランもなすべきことはある。なぜなら、トルコとイラクに接したイラン国境付近地域ではPKKメンバーが現に活動している。トルコだけでなく、イランもクルド問題解決のために真剣に前向きに取り組む必要がある。
・アフメト・ダヴトオール外務大臣はニューヨークでシリア外務大臣と会談した。シリアは以前、トルコの協力呼びかけに対し、最高レベルともいえる、バッシャール・アサド・シリア大統領自ら、前向きな返答をよこしてくれていた。この政治決定は今こそこの問題に対し反映され、実現される必要がある。ダマスカス政府とともにこれらの諸問題を詳細に検討している。
・上記の詳細を把握するため、アタライ内務大臣も来週短期間でテヘランとダマスカスに行く予定である。
(本記事は
Asahi中東マガジンでも紹介されています。)
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( 翻訳者:石川志穂 )
( 記事ID:20267 )